HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

カッパとウサギの コーヒーさがし

第5回 水のこととか。
山下 前髪が長い。
福田 ‥‥え?
山下 切ったほうがいいです、前髪。
福田 ‥‥なんのことですか?
山下 目に入って、うっとうしいでしょうに。
これ(MacBookのモニタを見せる)。
福田 あっ!!
なんで(笑)、なぜ今これを見るんですか。
山下 福田さんに「ほぼ日のくびまき」
モデルをお願いしたことは聞いていたんです。
福田 えらいことを頼まれて‥‥
こんなんですみません。
山下 「男のくびまき」というスライドショーで。
ちゃんとモデルができているのか、
わがことのように心配していました。
で、見てみたら‥‥。
なかなかなものだったのですが、
ぼくは前髪が長いのが、気になって気になって。
福田 はい、長いです、切ります、今日切ります。
なのでこの画面を閉じてください。
山下 あと、このポーズはなんなのかと。
福田 ぅわおふぇいっ!(妙な音を出す)
山下 モデル的な?
福田 やめてください(笑)。
山下 アンニュイな?
福田 やめてください(笑)。
山下 頭のお皿をおさえて。
福田 やめ‥‥‥‥あ、ほんまや。
山下 なにはともあれ、
「モデル」を、ありがとうございました。
福田 ‥‥お願いです、
お願いですからコーヒーの話を。
山下 はい、冒頭からこれは大きな脱線です。
福田 はい。
山下 前回も余計なおしゃべりで
けっきょく時間が足らなくなって、
コーヒーを淹れられませんでした。
福田 コーヒーのページなのに。
山下 このコンテンツが始まって、
2カ月たつんですよ?
なのに、まだコーヒーを淹れてないって。
福田 どうかと思います。
山下 不定期更新とはいうものの、
いくらなんでもそろそろコーヒーを淹れないと、
なにがなにやらわからなくなるので福田さん!
福田 は、はい。
山下 今回は福田さんが来る前に、
ぼくは水をくんでおきました!
ほらぁ!(MacBookをスマートに指し示す)
福田 ‥‥やかんに水を入れてる写真で、
そないに大層に言われても‥‥。
山下 なにをおっしゃいますか福田さん。
これはもう、極めてたいせつなポイントを
さりげなく語り始めている1枚じゃないですか。
福田 ‥‥え?
というと‥‥水のことですか?
山下 そう、水。
福田 水。
山下 たいせつな、水。
このやかんの写真の大事な点は、
「水道水を入れている」ということです。
福田 あー、そうか、はいはい。
そうかそうか、なるほど、そうかそうか。
山下 「そうか」を言いすぎですけれど、
ね? たいせつでしょ?
福田 たしかに。
山下 いろんな水でコーヒーを淹れてみましたが、
結局「水道水」でオーケー、
ということになったんですよね。
福田 そうでした。
山下 ミネラルウォーターも試してみました。
そういうお水のほうが
当然おいしくなると思って。
福田 ところが。
山下 ところが、ならないんですよー。
おかしいなー?
おいしいお水のはずなのになあ? と思って、
何度かミネラルウォーターで淹れたんですが、
どうにも「?」という感じで。
福田 まろやかにならないんですよね。
山下 そうそう、エキスを十分に抽出しないで
すとんとお湯だけ落ちてしまうような印象で。
福田 はい、はい。
山下 ぼくらが試したミネラルウォーターは
ヨーロッパのものだったんですけれど、
「硬水」の場合が多いんですよね。
福田 硬い水。
山下 ミネラルをたくさん含んでいる硬いお水です。
日本のミネラルウォーターは
そんなに硬度が高くないんですが、
海外のは硬水の場合が多いんですよ。
これが、どうにもコーヒーには合わない。
そのまま飲んだり頭のお皿を湿らせるには
ちょうどいいんですけど。
福田 さりげなくカッパの話をまぜなくていいです。
山下 一方、日本の水道水というのは、
基本的に「軟水」です。
福田 軟らかい水。
山下 何冊かのコーヒーの本を読んでみましたら、
やっぱり書いてありました。
「コーヒーの抽出には軟水が適している」と。
つまり、
本を読んでの受け売りと、
自分たちの体験から、
「コーヒーには水道水で十分」
という考えにたどりついた次第です。
福田 はい。
山下 そんなわけで、ここに堂々と、
浄水器を通しただけの水道水をご用意しました。
福田 カセットコンロで沸かします。
山下 じゃあ、点火。
福田 「弱火がいい」と山下さんが言いました。
山下 はい。そんな気がして‥‥。
いや、以前ですね、
炭火でゆーっくり沸かしたお湯で
コーヒーを淹れたら、
とろーんと、すごくまろやかにできたんですよ。
だからまあ、時間をかけた方がいいのかなーと。
福田 それは全体的に言える気がします。
コーヒーは急がない方がいい。
山下 お、いいことを言いますねえ!
福田 あと、あれです、
やかんのフタをはずして沸かすのもポイント。
山下 おー、またもやいいことを。
そうなんです、フタをしないほうが
水道水のカルキが抜けやすいと聞きました。
福田 それから「念」を送ります。
おいしい水にならんかーい。
山下 それは要らない。
福田 はい。
山下 弱火なので沸騰するまで時間がかかりますが‥‥。
福田さん、きょうはどんなカップで飲みます?
福田 え、あ、はい。
こんなんを持ってきてみました。

山下 なんか変わったカップです。
福田 水筒というか、
魔法瓶みたいになってるんです、ほら。
山下 はああー、おもしろーい。
一杯分だけコーヒーを淹れて出かけるんですね。
また、もう、この、オシャレ!
アウトドア派! 沼のほとりで!
福田 まぜない、カッパをまぜない。
‥‥で? 山下さんのカップは?
山下 これです。
福田 それは、大橋歩さんの。
山下 はい。「イオギャラリー」で買いました。
くーすけのマグカップ
最近もっとも使用頻度の高いカップです。
福田 うーん‥‥絶妙なデザイン‥‥。
さすが大橋さんです。
山下 さあ、お湯が沸くまでに
やるべきことがありますよお。
福田 そうです、豆を挽くのです。
山下 きょうはほら、こーんなコーヒー豆を。
福田 あー、ふっくらとして、
きれいな豆ですねえ。
山下 これをふたり分、はかりましょう。
福田 メジャーで?
山下 そうですね、メジャーならばこのくらい。
山盛り1杯がひとり分です。
福田 粉になっている豆なら、すり切り1杯がひとり分。
山下 はい。
ぼくの場合は、このミルにたっぷり入れると
ふたり分の26グラムになることを知ってるので
毎回メジャーは使いません。
福田 それ、ぼくが挽いてもいいですか?
山下 どうぞどうぞ。
福田 では(ゴリガリゴリゴリガリ‥‥)。
山下 回しているときの手ごたえでわかるんですよね、
それがどういう感じの豆なのか。
福田 ちょっとわかります(ゴリガリゴリ‥‥)。
山下 なんていうんでしょう‥‥。
固くて引っかかるような手ごたえだと、
あんまりよろしくないような?
福田 そうですね(ゴリガリゴリ‥‥)、
ある程度なめらかに挽ける方が
ぼくら好みの豆なのかもしれません。
山下 はい、そんな気がします。
福田 ‥‥これはいい豆かもしれません。
(ゴリガリゴリゴリガリ‥‥)
すてきな手ごたえでなめらかに回ります。
山下 ああー、いい香りがしてきましたー。
あああー‥‥。
福田 じゃあ、もっと香りがするように、
早く回します(ガリガリガリガリガリ!)。
山下 あ、あ、あ、あ、それはダメなことよ!
福田 え、え? そうなんですか?
山下 そうらしいですよ。
挽くときはゆっくりやらないと、
豆によろしくないそうです。
福田さん、自分で言ったじゃないですか、
「コーヒーは急がない方がいい」って。
福田 そうでした、すみません。
(カラカラカラカラ‥‥)
‥‥あ、ぜんぶ挽けたみたいです。
山下 どれどれ、どんな感じです?
山下 おおー、いいのではー。
福田 いいですねー。
山下 ペーパードリップの場合、
このくらいの細かさに挽いています。
写真でわかるといいんですけど‥‥。
福田 グラニュー糖よりすこし粗いくらいですね。
山下 はい、そうしています。
これをば、セットしておいたドリッパーに
ザザッと入れまして‥‥。
山下 トントントンと叩き、
表面を平らにしましたら準備は完了。
福田 そうこうしている間に、お湯がグラグラ。
山下 沸いてきましたね。
福田 沸いてきました。
山下 ぼくらのこころも。
福田 ぼくらのこころも沸いてきました!
山下 いよいよ!
福田 いよいよです!
山下 うわ、なんか緊張してきた!
福田 いっつもやってることなのに!
どないしよう?!
山下 お、落ち着きましょう!
福田 落ち着きましょう!!
山下 この写真のときのように。
福田 やめてください。
  (つづけましょう!)

2009-09-25-FRI

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