HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

カッパとウサギの コーヒーさがし

第2回 ミルのこと。
山下 じゃあ、道具の話をしましょう。
福田 はい、道具。
山下 いろんなコーヒーの淹れ方をしてきましたが、
ぼくらが今、落ち着いているのは‥‥
福田 ペーパードリップ。
山下 ペーパードリップ。
こういうドリッパーで、ね。
福田 コーノ式です。
山下 そう、コーノ式。
たいがいは、これで淹れてます。
でもコーノ式の話は長くなりそうなので、
あとまわしにしまして‥‥どうしましょう?
福田 やっぱり、ミルでしょうか。
山下 ミル。
焙煎したコーヒー豆を、粉にする道具のことです。
ぼくのは、こういうので。
福田 カリタのコーヒーミル。
山下 ごく普通のミルだと思います。
福田 普通なんでしょうけど、
みんなが持っている物ではないですよね。
山下 そうか‥‥。
「おおげさ」な感じなんでしょうか、やっぱり。
福田 おおげさ。
山下 いや、必要以上に
「本格的!」と思っている人も多い気がして。
福田 ああ‥‥。
ミルを使う習慣がある人には当たり前でも、
そうじゃない人にとっては、
ちょっと敷居が高い印象があるかもしれませんね、
わざわざミルで豆を挽くのって。
山下 ぼくが「ミルで豆を挽いてます」と話すと
よく言われるのが、
「優雅ですね」という感想なんです。
福田 優雅‥‥。
ウサギと暮らしているし。
山下 それは別に優雅じゃないです(笑)。
ウサギとの暮らしは、もっと滑稽なものです。
福田 そうですか。
山下 ウサギの話はともかく。
優雅とはほど遠いということです。
福田 あれですね、「優雅ですね」と思われるのは、
いちいちミルを回すのが面倒くさそうっていう
イメージがあるからじゃないでしょうか。
山下 そう、そうなのだと思います。
だから、
‥‥あの、核心にせまる話をしてもいいですか?
福田 は、はい。
なんでしょう。
山下 このコンテンツで
いちばん言いたかったことを言っていいですか?
福田 こんなに早く、そんなに大きな発言を‥‥。
山下さん、大丈夫ですか?
山下 大丈夫だと思います。
この想いに、ブレはないので。
福田 では、どうぞ、語ってください。
山下 「自分で豆を挽いてコーヒーを淹れるのは、
 思っているほど面倒じゃないですよ?」
福田 ‥‥‥‥‥‥。
あ、え? 終わり?
山下 終わりです。
福田 そうですか、シンプルですね。
‥‥でも、はい。
それほど面倒ではないです。
「未体験の方は一度やってみてください」
っていう気持ちはありますよね。
山下 ものぐさなぼくでさえ、
毎日、回し続けていますので。
福田 このミルは、いつごろ買ったんですか?
山下 あれはせがれが4才のころだから‥‥11年。
‥‥あ、もう、10年以上回してるんだ。
福田 へえー。
山下 自分で挽いてみたら、
楽しくて簡単で、その上おいしくて。
しかも、豆のままで保存すると香りが長持ちする!
福田 それ、ポイントです。
山下 豆の保存については、また語りましょう。
とにかく、その11年前からずっとですね。
‥‥福田さんの、ミルは?
福田 今は、こういうのを使ってます。
山下 細長いタイプの。
携帯用なんでしょうかね?
福田 ええ、たぶん。
きっと山下さんのミルの方が
豆にとってはいいんでしょうけど、
ぼくはこれが使いやすくて。
山下 使いやすい。
福田 幸せに豆が挽けます。
山下 ああー、はい、そうですよね、
豆を挽くのは、その時間そのものが、
もう、幸せですよね。
福田 ゴリゴリやってると、香りがしてきて。
このときの香りがいちばん好きです。
山下 そう! 淹れた後よりもね、
挽いているときのほうがいい香りかも。
福田 ほっとします。
山下 じゃあ、福田さんは、
なにしろ使いやすいミルを探したと。
福田 いや‥‥
このミルを選んだ最初の理由は他にあって。
山下 ん? それは?
福田 ぼく、実はアウトドアっていうか、
外で飲むのにあこがれてたんですよ。
山下 外でコーヒーを。
福田 はい、自然の中で。
山下 ‥‥沼のほとり、とか?
福田 やめてください(笑)。
山下 じゃあ、池?
福田 いやいや(笑)。
山下 川?
福田 カッパの話がしたいだけじゃないですか。
山です。
山下 山。
福田 山に登ってちいさなコンロでお湯をわかして飲む
っていうのをやりたかったんです。
そんな勇ましい自分の姿をイメージして、
携帯に便利なこれを買いました。
山下 ああー、ここでもまた、かたちから(笑)。
福田 そうです、胸を張って言えます。
いつだってぼくは、かたちからです。
山下 いいと思います。

(道具のお話、つづきまーす)

2009-08-13-THU

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