12
ヒトも自然の中での生き物。

こちらは雨季のど真ん中ですが、
今年は今のところ雨が少ないように思います。
例年は村を渡る手作りの橋が増水で流されている頃ですが、
今年はまだ橋があります。

火曜日に今年の石灰焚きが終わりました。
石灰は藍染に必要な材料です。
今年は石灰岩を焼くための
穴窯作りからしなければならず、
そんなこといまどきするのかな? 
と内心とても心配でしたが、
村総出で2基作りあげました。

山の斜面を利用して
上からと下からスコップで
穴を掘っていくだけなのですが、
ただ穴を掘って作り上げる窯というのは、
別に意識しているわけではないのでしょうが、
文句なく美しいのだなと改めて思いました。
鳥が作る鳥の巣とかそういうものにとても近い。

道具をほとんど使わないモノ作りこれが
ほんとうの手仕事なのかもしれませんが
ヒトそのものに素晴らしい機能があり、
その力で作り上げていくものというのは
私にとって大変、魅力的です。

焚きあがるまでにいろんな問題もありましたが、
終わりよければすべて良しで、
2トン近い真っ白な石灰が出来上がりました。

焼き畑で育てている藍草も
刈り取り時期になりましたので、
藍草と出来たての石灰で、
今年の泥藍を作ります。

「民族衣装」というものに、
私は特別強い関心を持っているわけではないのですが
先日、はっとさせられたので、
そのことを少しお伝えします。

いつもの村、いつもの場所、いつもの村の人達で、
なにも珍しいことはないのですが、
たそがれどきに、木陰から農作業から戻る
3人の女性が出てきたときに、ドキッとしました。
自然に溶け込んでいる美しさで、
森で鹿に出会ったときの
「ドキッ」とする感じに近かったのです。
ヒトも自然の中での生き物だったんだなあ
と改めて思わされました。
民族衣装のすごさのようなものを感じました。

2016年7月 谷由起子