佐伯チズさんにはできるけど、 わたしにはできないという理由?
第7回 3つのお尻を見てほしい。
糸井 手入れを続けるコツってあるんでしょうか?
佐伯 とにかく、まずはやってみることです。
1回でいいからやってみる。
そして、即効性があると、
つづけることができます。
ちゃんと鏡を見てる人は、
ビフォーアフターの違いがわかります。
糸井 いい加減にしか、顔を見てない人は
「違い」に気づかないということか‥‥。
佐伯 「やったんだけど」の
「けど」がつくんですよ。
糸井 「けど」ね。
サボっちゃったから、とあきらめる前に、
言われたとおりにやって、
ちゃんと自分を見たらいいんでしょうね。
佐伯 その「見る」も、
シミ、シワ、たるみ、といった
自分の欠点を見るんじゃなくて、
もっとちがうところ、
自分の肌の本質を見てほしいんです。
糸井 欠点が目についちゃうんですね。
佐伯 欠点しか見ない人は、
つい高い化粧品に
手を出してしまいがちなんですよね。
それは、欠点をカバーすることしか
考えられないからなんです。
逆の立場で考えると、
そのような方には
化粧品を売りやすいってことなんです。
「シミを消すにはこの化粧品」
「たるみを消すにはこの化粧品」‥‥と
言われてしまうと、
誰でもあわてて買ってしまいますよね?
糸井 「脅迫」で売れちゃいますから。
見る場所は、そこじゃないのに。
佐伯 どこ見てほしいかというと、
3つのお尻です。
目尻、眉尻、口尻。

このお話の最初のほうに、
きれいのもとは食べることだと申し上げました。
食べることのもとは、噛むことです。
噛むことをしっかりやってる人は、きれいですよ。
噛み癖が、シミ、くすみ、シワ、たるみに
なっていきますので。
一同 (驚)
佐伯 3つのお尻を見ていると、
こっちのほうでは噛んでないな、
トラブルはきっとこれだろうな、
とわかります。
それをみなさんは、
化粧品のせいだと思ってるんです。
だから思わず、高い化粧品のほうが
効果があるのではないだろうか?
という考えが生まれてしまうんですね。
糸井 じゃ、欠点じゃない自分を見るということが
スタートですね。
佐伯 自分をよく見つめて
知ってほしい。
みんな、絶対に
きれいなところやキュートなところ、
いっぱい長所があるんです。
糸井 なぜ人は悪いことのほうが
見えちゃうんでしょう。
佐伯 それは、自分しか見てないからだと思います。
自分がいちばんかわいいので、
自分のいいところだけ見ていたい、
という気持ちが強くなりすぎちゃってるんです。
だから、欠点を隠したいんですよ。
糸井 全部をよくしたいから、隠したい、
隠したいと思うと見えちゃうという悪循環。
佐伯 そうなんです。
隠す必要があるから、
目をつけないといけなくなるんです。
日本人のメイクアップというのはみんな
隠そうとします。
だけどね、わたしはもうすぐ66歳ですよ。
このわたしに
「シワがない、シミがない、たるみがない」
って言ったらウソだと思うんです。
糸井 うん。
佐伯 隠したりメスを入れることもできるでしょう。
そうやって隠した顔を
いくらお客さまにお見せしても
ウソをお教えすることになってしまうし、
お客さまだってそれを
おわかりになると思うんです。
そんなことだったら、もう、
こんなにしんどい仕事、
やらないほうがいいですもん。
糸井 チズさんがここまでやってこられた支えはずっと
「お客さんがいた」ということなんですね。
佐伯 ええ、お客さまのほうを向いててよかったです。
会社のほうを向いてたら、
いま現在のわたしはいないと思います。
糸井 会社の中にばかりいたんじゃ、
この答え、出ないですよね。
佐伯 出ないです。
もう、肩書だとか、個室だとか、
ひじ掛けだとかにこだわってたら‥‥
糸井 またひじ掛け(笑)。
チズさんの誕生日に
ひじ掛けをプレゼントしたほうが
いいんじゃないだろうか。
一同 (笑)
糸井 お客さんを見てたら、ぶれない。
これはだれでもできることです。
ということは、その機会を
みんなが逃してるんですね。
佐伯 やっぱり人間ですからね。
お金も欲しいし、肩書も欲しいし、
地位や名誉も欲しい。
それはすごく必要なことだと思うんですが、
分不相応なものを持つと、
どんどんそっちに気を取られて
しまうんじゃないでしょうか。
糸井 ずっとお客さんといっしょに
やってこられたからでしょうか、
チズさんには、
つっぱった雰囲気がないんですよ。
佐伯 つっぱる対象がありませんものね。
  (つづきます)

チズさんに訊いてみました。その7
── 29歳の女性からのメールです。

手足のキメの粗さに悩んでいます。
手や足は、顔より
水分の蒸発が激しいような気がしてなりません。
ハンドクリームなどを塗っても、
カサカサはおさまるのですが、
みずみずしさがないのです。
手足のケアについて、
アドバイスをいただけないでしょうか。
佐伯 手のひら、足の裏は、
他のところと違って、
角質層に透明層というものがあります。
手と足は力仕事をするところですから、
水分を含む層がひとつ多いんですよ。
このおかげで、わたしたちは、
踏んだり歩いたり、
ものを持ったりすることができます。
そのかわり、垢となって溜まりやすいので、
それをよく落とさなければなりません。

角質層は28日サイクルで成長していき、
その後は垢となります。
軽石などできれいにファイリングして、
クリームか、オロナインの軟膏などを
つけておけば、つるつるになります。
オロナインを、水で溶いても
使いやすいですよ。
── カサカサのもとが「垢」だったなんて。
佐伯 それは、手や足だけじゃなくて、
ほかの肌も同じです。
垢がついてるから、カサカサになります。
手がカサカサになる人は、
手を洗わない傾向があります。
とにかくしょっちゅう手を石けんで
洗うといいです。
わたしは水仕事で手袋なんかしたことないですよ。
自分の手で洗うことで、
垢が取れていっちゃうからね。
あとは、「揉み手」もおすすめです。
── 揉み手ですか。
佐伯 そう。自分の手から分泌された皮脂分が、
いちばんいいクリームになりますから
それを手全体に行き渡らせるんです。
とくに、紙を持つ仕事は水分を取られますから、
自分の手をしょっちゅう揉み合わせるように
なさってみてください。


(このコーナーも、つづきます)

2009-06-08-MON



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