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ある日の日記(1)

日曜日に朝から車でヴィンテージの蚤の市へ。
夫がちょうど仕事で日本に帰っていて、
いつもなら買い付けをするあいだ面倒を見ていてもらう
5歳の息子も連れていくことにした。

もっと幼い頃は、一緒に行っても「早く帰ろうよ〜。」と
ものの数分でぐずって全く仕事にならなかったけれど、
今回は「ぼく、とかげのブローチがあったから見てたの。」
というように、
彼なりにヴィンテージ・ジュエリーを楽しんでくれていたので助かった。
とはいえ、子連れではやはり長居に限界があり、そこそこで退散。
仕入れたのは1920年代のワンピースと、ネックレス、
イヤリングがそれぞれ1点ずつ、
1940年代のハンカチが数枚で、
ブローチは残念ながらこれと思うものがなかった。

帰る前に、いつもお世話になっているディーラーに挨拶をして
ストール(出店しているブース)の写真を撮らせてもらった。

ちょうど赤い髪のご婦人が
ヴィンテージ・ジュエリーを選んでいるところだった。
真剣なまなざしだ。
私の勘では、ヴィンテージの蚤の市に朝一番で来ている
こういう雰囲気のひとはたいてい同業者か、
スタイリスト、デザイナー、コレクターのどれか。
ディーラーとの会話を横で聞いていると分かる。
そして良い品は的確に早く見つけたもの勝ちだ。
それぞれ楽しくショッピングをしている風だが、
実は静かな戦いだったりする。

会場をあとに、フォトグラファーの長野陽一さん家族との
待ち合わせ場所へ向かう。
ちょうど日本から旅行でいらしていて、お互い同い年の息子がいるので、
ケンジントン宮殿のそばの公園へ遊びに行きましょう
ということになったのだ。

青空の下、身長もほとんど同じ小さなふたりは
裸足になって砂場を一緒に駆けまわっていた。
まさに公園日和の日曜日。
自分の心がゆったり落ち着いていくのが分かる。

ところで、長野さん夫妻とおしゃべりしている間、
長野さんが首からさげているユニークなカメラが気になった。
トップの蓋がパコンと開いてファインダーを覗けるようになっている。
Rolleiflex 3.5Fという名前の二眼レフのカメラだそうだ。
長野さんは側面についている小さなハンドルでフィルムを巻いては、
これで子どもたちや景色をカシャカシャ。


長野陽一さん。一緒に昼ご飯を食べた、ロンドンのカフェにて。

 


このファインダーを覗いてシャッターをきる。

 


内蔵されているレンズはCarl Zeiss Planar 75mm

Rolleiflex 3.5Fは1959年頃から製造されている機種だそうだが、
長野さんのは製造番号からおそらく1970年代後半のヴィンテージ、
とのことだった。
ヴィンテージという言葉にぴくりと反応する私。
長野さんいわく、
「ファインダーから見えた景色と写真の仕上がりに誤差がでるカメラ。」 
だから、普段は誤差もひっくるめて楽しめる
家族との旅行の際などに持って行くとのこと。

きりっとした気配の中に暖かみのある
長野さんの写真の数々を思い出しながら、
この黒くて四角い不思議な箱でいったいどんな写真が撮れたのか、
はやく見てみたくてうずうずした。

カメラは便利な小道具が色々あるし、
撮り方のちょっとした工夫で
仕上がりに大きな差が出て来ることも知っている。
けれども私は怠け者でいつも自己流で撮ってしまう。

長野さんの鞄にはちゃんとデジタルカメラも入っていた。
状況に応じて飄々と
カメラを使い分けるプロのフォトグラファーに刺激を受け、
私ももっと心を入れ替えて勉強しなくてはと思った次第。

長野陽一さん撮影の、宮浮おいさん主演の映画、
『ペタル ダンス』(石川寛監督)、
現在日本で公開中です。

(六月の更新へ、つづきます)

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2013-05-31-FRI


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