糸井 池谷さんが自由に研究をできる仕組みも、
興味深いなぁ。
池谷 こういうシステムを取っているのは、
うちの研究室だけなんです。
ぼくが発見をすると
ぼくの名前で出させてもらえる。
他の研究室だと、誰かが発見しても、
教授が発見したということになりがちです。
糸井 それは意識的でしょうねぁ。
教授も、えらい人ですね。
池谷 ぼくの中では、
少なくともそのほうが
やる気は当然出ますし。
糸井 人間を生かすチーム、
会社を生かすチームというのは、
今、みんなが興味のあることだと思います。
池谷 ぼくが今、
部下でいるかぎり思うことというのは……
部下にとっていちばんうれしいことは、
信頼してもらえること、なんですよね。

信頼したからには、口出しはしないで、
俺が責任を取るよ、という姿勢を
見せていただいている今の環境は、
ぼくにはすごくうれしいんですよ。

アメリカの研究室もそうでした。
ぼくぐらいの年齢なら、
もう助手とかでなく独立できるんですね。
国としてサポートする仕組みがあって……。
糸井 組織の話はおもしろいですよね。
ぼくもちいさな組織を率いているので、
もうずばり毎日そのことを考えています。

どうやったら、ひとりずつが活性するか。
どうやったら、チーム力が発揮できるか。
この二重構造の中で、
ルールを決めたりする必要もありますし。
池谷 ルールがどうできるかどうかも
すごく興味があります。
神経細胞を飼っているだけでも、
自然にその中でルールができていって、
ルールに基づいて活動するようになります。

人間社会も似たようなところがありますよね。
何となくこの人に従っていくほうがいいとか、
別のことなら別の人をリーダーにしてだとか、
そういうのが自然と生成してゆく……
野球のように、特定のルールがあるからこそ、
そのスポーツをたのしめるというものだって、
なぜ当時そのルールにしたのかがおもしろい。

(つづく)
2005-07-20-WED
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