糸井 子供と話しても
おもしろくないと言いましたが、
ただ、それが自分の子供となら、
おもしろく話をできるんですね。
たぶんそれはどこの親もそうでしょうが、
自分の子供は、背景をわかったりするので。
池谷 ひとことの厚みがちがうんでしょうね。
糸井 うん。
こちらを刺激してくれる分量がちがう。
ただその「刺激」の源を辿ってみると、
やはり問題になるのは、愛情ですよね。
その人に、強い興味を持てるかどうか。

そこでやはり、「好きになる力」というのが、
受け手の能力として問われるのかもしれない。
悪人まで含めて好きになる力がある人は、
つまり、悪人が活躍する小説を書けますよね。
池谷 確かにそうですね。
小説家が悪人を書くためには、単なる
嫌悪感では魅力的にはならないですもんね。
糸井 そこまで踏みこんでいるから、
ドストエフスキーの小説に出る悪人たちは
「近所にいる頭のいい人よりも好きだなぁ」
っと感情移入ができるわけですよね。

……つまり、池谷さんとぼくとの話題は、
やはり「好き」ということになるのかも。

「好きじゃないから」と、逃げてきたことで、
道を狭くしていったようなことを話したけど、
それは、脳の頑固化ですよね。
「俺は頭がやわらかいから暗記や計算は苦手」
という言い方をする頑固な人になっちゃった、
ということが、自分にもあったわけですから。
「馬鹿になれ」の話で、
「好き」を開いてゆくことでしょうし──。
池谷 はい。
脳はそもそも、
頑固化しちゃいがちなんですよね。

(つづく)
2005-07-17-SUN
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