BOXING
私をリングサイドに連れてって。

星野大健闘もマットに沈む、徳山は完勝!
ダブル世界タイトルマッチ



昨年8月福島、長島以来のダブル世界タイトルマッチが
6月23日場所を両国から横浜アリーナに変えて行われた。

33歳、星野大勝負にでる。

WBA世界ミニマム級タイトルマッチは
中年の星・星野が、ミニマム級最強打をもつ
メキシコのホセ・アントニオ・アギーレに挑んだ。
会場では「星野はこいつに勝ったら本物だよ」と
冗談ともつかない会話が飛んでいた。
手前味噌となるがWOWOWエキサイトマッチは
91年にスタート。
この11年間、世界のボクシングをお届けすることにより、
日本のボクシングファンの目は肥え
世界トップというものを以前に比べ正確に理解している。
前出の会話はその証拠ともいうべきものである。

つまりそれほどアギーレは、
強敵でかつ危険といっていい相手である。
ミニマム級は47.6kg以下。
体重が軽い分、当然スピード、スタミナ、手数が
重要視される。
しかしアギーレはその流れを無視し、
ヘビー級のように体重全てをかけて振り切る
強打が売り物のメキシカンである。
世界戦戦績も7勝4KO。
25歳と若く全ての比較で星野を上回る。
星野は33歳(8月で34歳)で世界戦成績は2勝3敗、
内容は全て判定までいっており、
タフさと防御には自信がある。

星野正面に立ち、堂々の打ち合い

試合は1Rからこの試合を象徴するような
展開含みで動いていった。
体の大きさは一回り小さい星野であるが
アギーレを正面に見て果敢にも打ち合っていった。
強打のメキシカン相手に堂々と正面から向き合ったのだ。
目の前でブンブンとうなるように振ってくる
アギーレの隙をつき、カウンターをヒットさせる。
アギーレの動きこそ今ひとつだが、
パワーの差は歴然としている。
しかしラウンドが過ぎるにつれ
アギーレのパンチも的確に星野を捉える。
それは相当な威力だ。
私が観戦していたのは
リングから約20メートル離れた場所、
そこまでにアギーレが星野を捉えた時に重く、
鈍いパンチ音が聞こえてきたからである。
星野のパンチ音は微かなもので
終盤に向けてのダメージが心配になっていた。

運命の11ラウンド

それでも決死の覚悟で打ち合う星野。
恐らくこれまでで一番の勇気を持って
臨んでいたのではないだろうか。
9R、10Rにはクリンチ行為と見せかけて
接近してアッパーを当て、さらに上手く使い連打を決めて
アギーレを下がらせるなど
ベテランの三味線ともいえる老獪さは見所満点だった。
しかしこの試合を決定してしまった場面は11Rに訪れた。
とあるタイミングでレフリーが両選手の間で
ブレイクをかけるような曖昧な仕草をしたように見えたが、
ブレイクはしなかった。
この間1秒にも満たないだろう。
ブレークではなく一瞬様子を見たのかもしれない。
その瞬間気を抜いたように立った星野に
アギーレの左フックが炸裂してしまった。
そして12R回復もままならないまま、
強打に晒されて2度のダウンを喫し、
世界戦では初めて終了のゴングを聞くことができなかった。

星野燃え尽きるも最高試合!

試合終了後も星野はしばらくの間、
キャンバスに大の字になり立ち上がれなかった。
アギーレの試合は多数WOWOWでも放送しているし
さまざま対策はもちろん想定していただろう。
しかしそのパワーは想像以上だったのではないだろうか?
早いラウンドから打ち合い、我慢比べのような展開に、
ダメージは蓄積され、
意地や気力も奪い去られてしまったのだろう。
ほぼ同世代の星野の頑張りを見ていただけに、
キャンバスから立ち上がれない姿は本当に痛々しく、
悲しくもあった。
しかしこれまでの星野戦にはなかった紛れもない
「ファイティングスピリット」を見ることができた。
これまでは経験と防御に頼りすぎ技術に溺れ
惜しいポイントで星を落とした戦いという印象だった。
しかしクラス世界一を誇る強打のアギーレに
ごまかしは通じないと正攻法で向かっていった事で、
敗れはしたが本人の充実感は最高のものではないだろうか?
試合場で見る限り、これまでに繰り返していた
引退、復帰というお騒がせはもうないだろうと思う。
最後の試合で燃え尽きたという
アスリート最高の達成感を手に入れたはずだからである。
敗れたものの世界一の相手に最高の試合をした星野選手
本当に心を揺さぶられた試合だった。

徳山戦は次回に続く・・・・。


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2003-06-26-THU

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