BOXING
私をリングサイドに連れてって。

ダブル世界タイトルマッチ!
セレス僅差勝ち、西岡無念ドロー!


8月25日の新井田選手の奪取から
9月24日の徳山選手防衛戦まで
日本でもタイトルマッチが目白押しです。

その中でも最も興行内容の濃い
ダブル世界タイトルマッチ+ダブル日本タイトル戦
が横浜アリーナで行われました。
凄く迫力ある試合の連続で、
手に汗握り、試合後は疲労困憊してしまいました。
そして改めて「世界の頂点」に立つ難しさを
見た思いがしました。

「仕事人」セレス小林苦戦の初防衛制す!

この日のメインはWBC世界S.フライ級タイトルマッチ
「セレス小林対へスス・ロハス(ベネズエラ)」。
セレス選手が際どい試合を効果的なポイントで切り抜け
難しい初防衛を成功しました。
メディアの試合前評価は37歳のロハスを
当然のごとく警戒せずという感じでありました。
しかし試合が始まるとさすがは世界ランク4位、
「老獪、狡猾」のすれすれの超ベテランらしい
試合運びで小林選手のペースを狂わし続けました。

小林選手は何といっても「雑草」という
表現が当てはまる叩き上げの選手です。
プロデビューで判定負け、新人王戦も2回戦敗退。
通常では完全にエリート路線から外れるところです。
しかし努力とよき指導者と出会いめきめき成長、
日本タイトルを獲得し、
ついに名チャンピオン、ガメスを倒し
世界の頂点に立った苦労人です。

小林選手の特徴は
「Situation Boxing」と「我慢」といえるでしょう。
それは「素質」と対極にある特徴といえます。
見た目に派手さはありませんが、
非常に玄人受けする「仕事人」です。
試合進行中に起こる状況における
戦い方のチェンジを常に行い、相手の長所を消して、
じわじわペースを握っていく試合ができるのです。
ボディブロー、フェイントを駆使し、
相手を消耗させていくのです。
日本タイトルの石原戦、浅井戦、
世界を獲得したガメス戦などは強打を受けながら我慢して、
その中からまさにうなるような理詰めのボクシングで
突破口を開き強敵をKOしてきたのです。

「根性比べ」をして「我慢」し、その間に「弱点」を見つけ
じわじわ「追い詰める」。
見ている人は「ハラハラ」してしまう試合なのです。


大声援を受け入場するセレス選手

しかし今回はクリンチ、ローブロー、足を踏む等
細かな非常にいやらしい技術を使うロハスに苦戦しました。
序盤は互角で進み、中盤で小林選手が制しましたが
終盤ガス欠気味で非常に接近した試合でした。

判定は2-1でセレス選手でした。
私の採点も2ポイントセレス選手でしたが、
終盤は疲労から危険な場面も見られました。
しかし困難である初防衛を成し遂げたのは立派なものです。
しかし最後は本当にはらはらしました。
これなので小林選手は応援したくなってしまうのです。
今後は1位であるベネズエラのムニョス選手との指名試合が
内定しているそうです。
恐らく最強の相手となるでしょう。
しかし、ふたたび「仕事人」の仕事を
期待したいと思います。

頂点まであと半歩足らず。西岡利晃無念のドロー!

セミのWBA世界バンタム級タイトルマッチは
「ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)対
 西岡利晃」

日本の誇る俊敏サウスポー、西岡選手が
1年前のリベンジを誓い再び最強王者に挑みました。

1年前3-0で敗れた西岡選手とは別人の
成長した新しい西岡がいました。

西岡選手はセレス選手とは対象的な「素質」的な選手です。
天性のスピードとパンチの切れを持って
世界王者以外は問題ないくらいの実力を持つ選手です。
反面素晴らしいセンスが格闘性に勝ってしまうため
打ち合いという闘志のぶつかり合いが少なく、
一発の切れで相手を倒してしまう試合が多く、
手数が少ない、独特の静けさが特徴でもありました。

しかし世界戦敗戦後、帝拳ジムに移籍。
海外キャンプで世界チャンピオンとのスパーを重ね、
サウスポーの浜田剛史氏に特別コーチを受けるなど、
さらに「世界」「リベンジ」のために
必要な環境を作った1年間でした。

その西岡選手が初めて「世界頂点」のために
「闘志」を前面に出して
全てを出し打ち合いに挑んだ試合でした。

この日西岡選手のセコンドには、エキサイトマッチ解説の
浜田剛史氏、世界挑戦3度の葛西裕一氏、
トップランクのカットマンでもありモチベーターでもある
ミゲル・ディアス氏が脇を固め必勝体制で臨みました。

その甲斐あり1年前とは全く違った試合展開となりました。
まさに王座奪取プランに非常に近い
試合運びだったと思います。



内容は西岡の左とウィラポンの右がぶつかり合いでした。
しかし、序盤は西岡選手のワンツーの切れが上回り、
3回と7回には西岡選手にビックチャンスが訪れます。
カウンターであのデスマスク、
ウィラポンをぐらつかせます。
ウィラポンは過去、
ナナ・コナドゥにKO負けを喫していますが
それ以降、無敵となりピンチは一度もありません。
そのミスターパーフェクトを2度もぐらつかせたのです。
特に7回はあと30秒あればダウンに持っていけたのでは?
というほど効いていました。

試合中ウィラポンが通常見せない興奮状態を見せたり、
慌てて前に出たりと、相当追い込まれていたのでしょう。

しかし攻めきれなかった後のウィラポンは
憎いほど反撃してきます。
恐らくお互い極限状態に近いところでの
パンチの交換が続きます。
その対価としてお互いカットし、流血戦となりました。
西岡選手の流血を超一流カットマン、
ミゲル・ディアスが止めます。

しかし終盤スタミナ切れ気味だったのは西岡選手でした。
右ストレートをもろに食らう場面が多々訪れます。
しかし決して打たれ強くないはずの西岡選手が執念で
猛攻に耐える姿は感動さえ覚えました。
常に「クール」な男が血まみれになりながら
「執念」「勝利」のオーラを全身から出し
「耐えて、倒す」姿があったのです。

12ラウンド終了し判定は無情のドロー。
3ポイント ウィラポン、2ポイント西岡、そして引き分け
三者三様のドローでした。
頂点には半歩足りない結果となりました。
恐らく一番悔しいのは本人でしょう。
引き分けではチャンピオンベルトは手に入らないため、
実質は「負け」となります。
王者は「負けない」限りベルトを渡す必要がないのです。

一般的には価値ある引き分けと称されるでしょうが、
西岡選手の実力と進化を見ると非常に勿体ない試合です。
しかし、ドローは次回には非常に有利になります。
王者と同等の試合をしたことにより、
評価はあがり、チャンスも増えます。

西岡選手には再々挑戦に期待してさらに努力して
結果を出して欲しいと思います。
今日の試合でその能力が現実であることを確信しました。
あとは最後の要素をクリアして、
「頂点」に立つ日を現実にするだけです。

「挫折」と「半歩」を真に乗り越える日、
それは奇しくも環境や歩んできた道が全く違いますが、
セレス選手が歩いてきた道のり、経験と
重なるところがあると感じ、
ぜひ見てみたいという思いが高まりました。

洲鎌快挙!KOキングゴメス陥落!

日本フェザー級タイトルマッチ
「雄二・ゴメス対洲鎌栄一」

1R7連続KO勝ちの日本記録を持つ
KOキング、雄二・ゴメスが初防衛に失敗しました。
関西の勇、ハードパンチを持つ
1位洲鎌選手が激しい打ち合いを制し、
TKO勝ちを収めました。

試合はさながら、ゴメスのバズーガと
洲鎌の機関銃という展開になりました。

今回の注目は前回ノンタイトルで
韓国の李東国に37秒で敗れ、大波乱を喫したゴメスが
どう立ち直っているかが注目されましたが
「ゴメス恐るるに足りず」と果敢に立ち向かった
洲鎌選手が見事4度ダウンを奪い
ド迫力の打ち合いで快勝しました。

誰もがKO決着と想像したこの試合は想像通り
近年にない凄い試合となりました。
1、3、5、6回にダウンを喫したゴメスですが、
それでも愚直に攻めて何度となく洲鎌選手も吹っ飛ばし、
どちらが倒れてもおかしくない戦いで
会場が試合終了までどよめきに包まれました。

勝敗を決めたのはゴメスに立ち向かった洲鎌選手の
「勇気」と「パンチの見切り」「正確さ」でしょう。
紙一重でゴメスのパンチの嵐のスキを突き
コンパクトな左右連打でダメージを与えて行きました。

最後はディレィドリアクション(一瞬遅れてのダウン)で
ゴメスが倒れセコンドからタオルが投入され終了。
果てしない打ち合いに決着をつけました。

試合後洲鎌選手のインタビューでは
勝者とは思えないコメントが聞かれました。
「何度も倒れようと思った」
「無理にでも気合を入れていかないと」
「自分は気が弱いので」
「4Rに倒れるほどのパンチをもらい、怖かった」

以前浜田剛史氏が言っていたゴメスの攻略法は
「怖がらず、下がらないで打っていくこと」
といっていました。
今回の洲鎌選手はその通りの試合を行い、
精神的にも打ち合いに耐えを試合を制しました。
激しい打ち合いの中でメンタル面が大きく試合を左右した
見本を見ました。

敗れたとはいえゴメス選手は
素晴らしいパワーを持っています。
しかしボクシングが正直過ぎかつ大振りで
スキが多すぎました。
2連続KO負けのダメージを払拭して
早くフェザー級戦線に戻ってきて欲しいと思います。

また日本ミドル級タイトルマッチでは
チャンピオン鈴木悟選手が初回の劣勢を挽回しての
逆転KOで重量級の迫力を見せつけました。

そのミドル級で世界に目を向けると
9月16日(日、日本時間)にビックマッチが控えています。

WBA・WBC・IBF世界ミドル級王座統一戦
「バーナード・ホプキンス対フェリックス.トリニダード」

ミドル級トーナメント決勝戦です。
世界最強はどちらか?
9月16日(日)午後10時からWOWOWで独占放送します。
こちらもお楽しみに。

WOWOW 小田真幹


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2001-09-03-MON

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