坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第213回 もしも願いがかなうなら


ほぼにちは。

ミッセイです。

栄福寺の境内を歩いていたら、
アメリカ人のお遍路さんがいました。

この人は、
お遍路さんというよりは、
自由な旅行を楽しむバックパッカーという雰囲気です。

こういう人達も、
昔よりは随分多くなってきました。

たぶん、
バックパッカー向けのガイドブックに、

「ここ四国には、
 歩いて八十八の寺を巡る風習があり、
 今でも古い日本を感じることができる。

 また参拝の途中で出会う森や海の姿は、
 我々を魅了してやまないだろう。」

とか書いていて、

「これだ!」

と思うのでしょうね。

たしかに日本を訪れたバックパッカーにとっては、
魅力的な場所だと僕も思います。
(宿泊場所の少なさに困っているようですが。)

僕の出会った、
そのアメリカ人の人は、
まったく日本語が話せないのですが、
僕にモソモソとなにかを伝えてきました。

よくわからないのですが、
ようするに、

1、あなたが着ている作務衣が欲しい。
2、どこで売っているのだろうか?

ということを、
言っているようです。
中国の少林寺の近くでカンフースーツを
買った僕としては、
その気持ちはよくわかります。

「大きめのストアで、
 このメモを渡してみるといいよ。」

と、

「私は作務衣を買いたいのですが、
 ここで売っていますか?」
(I want to buy SAMUE.)

という紙を書いて渡してあげましたが、
うまく買えただろうか、
最近は、いろんな所で売ってますけれどね。

気分は小林克也ということで、
(NHKの日本語教室の先生役でも御出演。)

青山「ほぼ日刊イトイ新聞」をキーステーションに、
快晴の四国栄福寺からお伝えする、
「坊さん」今日もスタートです!
(思わずディスクジョッキー風に。)

***

しまなみ海道という、
僕の住んでいる四国今治と本州の尾道を、
つなぐ道があるのですが、
そこの橋が最近、
全面開通になって、
時間がかなり短縮されました。

僕も一度、
開通後の橋を渡ってみたいと思っていたのですが、
休みの日に、

「大阪って車で行くと、
 どのぐらいかかるのかな?」

と急に思い立ち、
行ってみることにしました。

そして、
去年行きたかったけれど、
行けなかった、
竹尾という紙の専門商社の

「TAKEO PAPER SHOW」
(タケオ ペーパーショウ)

という、
色々な紙と印刷とクリエイターの可能性に迫った、
展覧会に行ってみたり、
(お寺で使えそうな物も結構あったよ。)

東大阪の「司馬遼太郎記念館」で、
司馬さんの使っていた自宅の書斎を、
ぼーっと見たり、
記念館の中の書庫で、
長い時間を過ごしたりしました。

いい所でしたよ。

僕は司馬さんの著作を、
そんなに読んだことがないので、
(『空海の風景』は学生時代に読んだけれど。)
いくつ買ってみました。

帰りは、
兵庫県の明石、淡路島ルートから
帰ってみたのですが、
今治に戻ってきたのは夜の7時でした。
(朝の7時に今治を出発しました。)

「大阪でも日帰りできるわ!」

と胸を張りたい所ですが、
結構バテましたね。

長距離トラックの運転手さんや、
パリダカールラリーのドライバーは
相当な尊敬に値すると思います。

***

書道の練習をしている時に、
なんとなく、
思いついて「写経」をしてみました。
般若心経の写経です。

実は高野山で、
修行をしていた時は、
悪いことをすると、
(例えば立ったまま袈裟を付けた、
 廊下を走った、
 流行歌を歌ったなど。)

般若心経を写経をさせられるという、
ルールがあって、
教室の黒板には、

「写経レースの順位表」

というのが、
貼っていました。
(修行者達が自ら遊びで作成していた。)

とても悪いことをした場合には、
「理趣経」という、
読んでも30分ぐらいかかる、
お経を写経させられます。

「とても悪いことって、
 どんなこと?」

そう思いますよね。
どんなことだったかなー?
タバコ関係とかだったかな。

まぁ、
もっと悪いことをすると、
辞めさせられるわけであります。(合掌)

今回写経していたのは、
四国遍路をする時に、
各お寺で写経を奉納したいと思ったからです。

写経をしていて気付いたのですが、
僕の使った写経用紙の最後には、

「なんのために写経したのか。」

を書く場所があるんです。

例えばここには、

「病気平癒祈願」だとか、
「先祖代々供養の為に」とか、
「商売繁盛」

とか書くわけです。

そこで僕は、
はたと筆を止めてしまったのです。

「僕は何を願うのかな。」

するすると、
書き進めることは出来ませんでした。

そして、
結局僕が書いた言葉は、

「法界 愉快のために」

と書きました。
法界(ほうかい)とは、
仏教の言葉で、
僕のイメージでは、
この世界とか宇宙とか、
“世界全部”みたいな意味です。

そこが、
できる限り愉快であればいいのにな。

そう僕は思いました。

もちろん、
小さな願い事はいくつかありますが、

写経した後に、
墨で写経に添える言葉として、

「エスプレッソマシンが欲しい。」

とか、

「もてたい。」

とかって書くのって、
ちょっとはばかられますよね。

僕なりに、
写経に添うことが出来る言葉としては、
世界が愉快であったらいいなと思いました。

みなさんは、
どんな言葉を添えますか?

意外とやってみて、
初めて自分の思いに気付くことも、
あるのかもしれないね。
写経に限らず、だと思うのですが。

「愉快」って、

「居心地のいい空間」
っていう感じの、

「こころバージョン」
みたいなイメージです。

口癖が、

「ほほほ、愉快、愉快。」

とかだったら、
なんだか「殿」みたいですけれどね。


ミッセイ


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2006-06-04-SUN
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