坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第201回 
ラダックへ!
(松長有慶先生のこと、旅の準備)


ミッセイです。

突然ですが、
インドに行ってきました。

インドと言っても、
もちろん
かなり広いわけなのですが、

僕が行ってきたメインの場所は、

「ラダック」地方と呼ばれる、
ヒマラヤ山脈のすぐ南のインド西北端です。
夏場でも結構寒くて、
夜は5度ぐらいまで温度が下がります。
(日中は30度近くまで上がる。)

文化的には、
チベット仏教の範疇に入りますので、

「インド!」

という雰囲気はほとんどなく、
よく言われる言い方として、

「インドの小チベット」

などと呼ばれます。
住んでいる人々も、
チベット系の人達がずいぶん多いです。

もちろん、
住職になってからは、
初めての海外ですので、

「もし、お葬式ができたら・・・。」

という不安は当然あったのですが、
それでも、

「行ってみたい!」

と僕に思わせた一番の理由は、
ラダックという場所に対する興味では
実はなくて、

送付されたきた、
旅行の資料に記載された、

「松長有慶先生とご一緒するラダックのマンダラ探検」

という旅行会社のつけた旅行の名前の中の、

松長有慶(まつながゆうけい)先生
でした。

松長先生は高野山のお寺の住職であり、
著名な密教研究者です。

僕が高野山大学に入学した時、
僕が入学した「密教学科」内での、
歓迎パーティーが開かれて、
新入生ひとりひとりが、
自己紹介をしたのですが、

その中の少なくない人達が、

「松長先生の著作を読んで、
 この大学を選びました。」

「実は、僕も松長先生の・・・。」

ということを、
言っていたんです。

僕はその時、
失礼ながら、
先生のお名前を全く、
知らなかったのですが、

「なんだか、
 すごい先生がいるのだなぁ。」

ぐらいに、
思っていました。

そして、
自分が密教を勉強するようになって、
決して熱心な学生ではなかったと思いますが、

松長先生の著作に触れて、
また講義で生の声を聴いて、
なんというか、
びっくりしたし、うれしかったんです。

自分が、
いままで考えていた、
仏教という言葉のイメージとは、
ちがう仏教もあるみたいだぞ。
と、ワクワクするような、
雰囲気をすごく感じたのを憶えています。

今、それをすごく、
簡単な言葉で思い出すと、

「仏教(密教)は、
 とんでもなくコズミックな(宇宙的な)
 ものだし、
 エネルギーに溢れたものなんだ!」

というメッセージでした。
その感覚は、
今までの自分を、
いろんな所で、
助けてくれたような気がしています。

そして、
それは、

「すごくおもしろくなり得ることを、
 自分は職業にしている。」

というとても大切な、
感覚にも強く結びついています。

松長先生は、
僕の卒業論文の採点教授のひとりでもあったんですが、
(ちなみに直接の指導教官は奥山直司先生でした。
 彼の本もおもしろいですよ!)

僕も驚くような、
高い評価点数をくださり、

「学術的かどうかはともかくとして、
 あんたの文章は、
 とにかく、おもしろいわ!」

というありがたい(?)言葉をいただきました。

そして毎年、
学科からひとつの論文が、
学術雑誌に掲載されるのですが、
その論文に僕の論文は選ばれる
ことが出来ました。

卒業してからも、
僕は先生にお手紙を書いたり、
お手紙をくださったり、

また、
講習会や結婚式で、
直接お話しさせて頂く機会も、
少なくなかったのですが、

じっくりと、
もう一度、
先生という人や声に触れてみたいと思い、
旅行に参加させて頂くことにしたんです。

で、
旅行の準備を始めたのですが、
ラダックでは、
3000メートルを超す場所に滞在するので、
まず心配なのが「高山病」です。

高山病は2500メートルを超えたぐらいから、
心配しないといけない病気なのですが、

ひどい時には、
死んでしまうこともある、
結構、怖い病気なんです。
(脳か肺に来ます。)

事前に送付してもらった、
外務省が出している資料によると、
「ダイヤモックス」という
緑内障(目の病気ですよね)の治療薬が、
高山病の予防にも効果的という事なので、
行きつけの内科の病院に処方してもらいに行きました。

なんとなく僕は、
直感的に高山病に弱いような気がしたんです。

そして、

「海外旅行で便利そうな薬、
 おまかせでお願いしまーす。」

という注文をして、

下痢用の漢方薬(半夏瀉心湯、はんげしゃしんとう)
風邪の漢方薬2種類(気管支系の薬と葛根湯)
上半身用の抗生物質、下半身用の抗生物質(違うんだね。)
皮膚用の抗生物質の塗り薬を処方してもらいました。

病院の先生は、

「おもしろい薬があったら、
 買ってきてね。」

という、
謎のコメントを送ってくれました。

その後、
ドラッグストアでも、
日焼け止めとリップクリームとか
(日差しが強く乾燥している。)
他の薬を買ったのですが、
飴も結構大量に買いました。

これは、
飴が高山病に有効ということだけじゃなくて、

ラダックの子供達や、
お世話になった人への
ちょっとした
プレゼントになるかもしれないな、
と思ったからです。

後は、
名前が変わっているので(アユム→ミッセイ)
パスポートを作り変えたりしている内に、
出発の日がやって来ました。

参加を決めた時は、

「こういう種類のワクワクは、
 ホント、久しぶりだなぁ。」

と結構、ハイになっていたのですが、

直前になってくると、
急に死ぬような気がしてきて(なぜだっ!!)

「まだ、死にたくないなぁ。」

とひとりで憂鬱になったり、

先輩のお坊さんに、

「もしもの時は、
後のことは、お願いします。」

と言って、ひかれたりしていました。

まぁ、
どんな旅になりますことやら!


ミッセイ

お知らせ。
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。

栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)

全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。

詳しくは、こちらまで。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2005-07-08-FRI
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