坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第189回 頼る、たてる、形あるもの。

ほぼにちは。

ミッセイです。

少し前の話になりますが、
京都、東寺での伝授の前に、
東寺の金堂にお参りしました。

ぼんやりと何体もの、
仏さんを眺めながら、
その時、僕は、
今までに、
感じることのなかったような気がする、
感覚を持ちました。

「あー、
 自分は頼らしてもらっても、
 いいのかもな。」

という気分です。

僕にとって、
仏教というのは、

「頼る。」

ものでは、なかったんです。

もうすこしフェアな、
関係を探ってみたいと思っていました。

これは、
今だってそうなんですが、

自分が
自分なりの力を発揮しながら、

「頼る。」

という感覚は、
これからの僕にとって、
なんとなく大切な気がして、

その感覚を感じた記念に、
ちょうど、
ソニープラザで買ったの象のキーホルダーを、
なくした所だったので、
お堂の中で売っていた、
金色の亀のキーホルダーを買いました。



頼るのは時に、
自分の中のなにか
なのかもしれないけれど、

「頼まれてくれない?」

と誰かに手を合わせる事ができた時って、
わりと人が、
気持ちの部分で、
自生できている時なのかもしれないな。

頼めるって、
断られても怖くないって事ですもんね。

僕は、今、こわい時が多いなぁ。


愛媛に帰って、
しばらくして、
書道の先生のお姑さんが亡くなり、
僕もお通夜に参列したのですが、

その後のお稽古で先生が、

「それにしても、
 母とは楽な関係でしたよ。 
 大好きでしたよ。」

という事を、
話されていたので、

「すごいですねー。
 なにかコツがあるんですか?」

と聞いてみると、

「頼ることですね。」

と、話されていました。
ふーん、また、

“頼ること”

が出てきたなぁ、
と考えていたら、

「あと、
 “たてること”かなー。
 言いたいことを言いながらも、
 どっかで、たてるんですよ。」

ということを、
言われていました。

僕はこの、

「たてること。」

というのも、
これから自分の生活とか、
仏教を考える上で、
大事にしたいなと思ったんです。

僕の場合、

「たてる。」

という言葉を、

「建てる」

という漢字に変換して感じました。
(だから先生の言われた意味とは、
 少し変わるのかもしれないけれど。)
それは、僕の中で、

「存在にしてみる。」

というとです。

仏教のアイデアに触れていると、

「そういう言葉にしてもらえると、
 感覚的によくわかるなぁ。」

ということが、
よくあるんですが、

それって、
なんというか、

「納得」

という感覚が多くて、
もっと高ぶるような高揚を、
欲しい時があります。

それをもたらすものって、
説明の言葉から離れた、

「もの」

だと思ったんです。

感じるまでのスピードを、
アップするものとしての、

「もの」

が欲しいと思ったんです。

僕が一度、

「音楽って何者だろう?」

って考えていた時、

「繰り返し楽しむもの」

「すごく短いもの」

という言葉で自分に説明しました。

音楽は繰り返し楽しむことを、
前提にされているという点で、
ちょっと変わっています。

そして、
すごい短い時間で、
受け取ることができます。

これは、
なにかのヒントになると思ったんです。

仏教を、
有無を言わせぬような、
気持ちのいい感覚で、
説明するには、

「存在するもの」

というのが、
おもしろそうだなぁ、
って思いました。
もちろん、
「言葉」に加えての話だと思うのですが。

お釈迦さんが制作を禁じた仏像を、
後の時代の人がつくったのも、

スピード感のある、
長い説明のいらない気持ちよさ、
を提示したかったのかもしれないね。

自分なりの
“他の方法”が、あるような気がするんです。

「一見、存在しないもの」

たとえば、

「心の中の思い」

というものが、
体温をもって、
きちんと形がある存在だと思う、
ということも、
僕はこの「坊さん」の中で書いてきたと、
思うのですが、

「だれが、どう見ても形があるもの。」

の便利さってたぶんあるよね。

それは僕達の生活の中では、

「思いを言葉にしてみる。」

「言葉を不細工でも形にしてみる。」

ということなのかもしれないな。

“僕の中の形”

って、どんな形かなぁ。

「形のないものの中にこそ、
 大事なものがある。」

って、
言う人がよくいて、
僕も反対じゃないけれど、

僕はあまのじゃくなところがあるので、

「形のある“もの”だけが、
 伝えることができる、何かがある。」

って、なんか、思ったな。

僕という存在も形だね。


ミッセイ

お知らせ。
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。

栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)

全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。

詳しくは、こちらまで。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


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postman@1101.comに送ってください。

2005-02-06-SUN
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