坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第187回 ベンガル虎の遺言

ほぼにちは。

ミッセイです。

皆さんは、
遺言を託されたことが、
ありますか?

僕はあります。

ちなみに、
僕に遺言を託した人は、
坊さんで、まだ生きています。

しかも、
同い年の同級生です。
今も元気です。

彼が、
僕に遺言を託したのは、
僕達が高野山大学生の時でした。

学校を終えて、
彼の部屋にフリーペーパーの印刷に、
行っていた僕に、
突然彼は、遺言したのです。

「アユム・・・、
 (坊さんになる前の僕の名前です。)
 アユムだけに言っておくけれど、
 もし、俺が死んで、
 アユムが生きてたら、
 俺の遺体はインドにいるベンガル虎に、
 食わせくれ。

 家族は、猛烈に反対するだろうな。

 でも、
 アユムは家族から俺の遺体を
 奪い取ってでも、

 俺の遺体をインドまで運んでくれ。
 そして、
 なんとしても、
 ベンガル虎に食わせてくれ。」

「うわっ。やな役割だなぁ。
 絶対、イヤだわ。」

「もし、アユムがそうしなかったら・・・。」

「なに。」

「確実に呪ってやる。」

という遺言でした。
もし、これを読んでいたら、
僕はインドに行きませんので、
別の人に遺言し直しといてください。

時間ができたら、遊びに行きます。
(ところでベンガル虎って、
 何者なんだろう?)

***

今日は、
毎年の行事、
『大般若』(だいはんにゃ)の日でした。

準備をする前に、
なんとなくインターネットをしていて、
心待ちにしていた、
バンドの新作
(ちなみに100Sの「OZ」という作品)
の発売日が昨日だったことに気付き、

「あああ、
 今日はお酒の席だから、
 終わってから歩いて買いに行こうかな。
 
 往復1時間はかかるなぁ。」

と考えながら
お供えをする樒の葉っぱを、
境内で摘んでいました。

そして、
いつもより、
ワクワクして、
儀式の準備をしながら、
歩いてでも、
買いに行かせる、
そのパワーってすごいなぁ。

と考えて、
すごくうれしいのだけれど、
なんだか少し悔しいような、
そんな気分にすこし、なりました。

昨日まで、
受話器に頭を下げながら、

「よかったら、参加おねがいしますねー。」

なんて儀式の出欠をとっていた、
自分がすこし、頭をよぎったのかもしれません。
(その仕事は必要なものだし、
 大切なことだから、
 イヤな気分になんかはなってないよ。
 ただ、よぎっただけ。)

そして、
なんとなく、
思いついた言葉を、
「ほぼ日手帳」に書きました。

「頼まれもしないものをつくろう。
 聞かれもしない夢を語ろう。」

***

大般若の儀式は、
例年通り無事終わり、

僕は、
前に『坊さん』で書いた、

遺影が死ぬ怖さを
すこし和らげてくれるんですよ。

という話を少しアレンジして話して、

「僕は思うのですけれど、

 “死んだ人が作ったもの”

 をじっくり眺めるのは、
 なかなか、
 いいことなんじゃないかと思うんです。

 例えば今日の大般若経は、
 『西遊記』の三蔵法師
      (玄奘三蔵、げんじょうさんぞう)
 が、千何百年も前にインドから持ち帰った、
 死んだ人が運んだものです、

 そして、このお寺は、
 亡くなった羽藤さんのお父さんが、
 建てた、

 “死んだ人がつくったもの”
 
 です。

 お寺にはそういうものが、
 探したら、いっぱいあります。

 また、お寺に来てくださいね。」

という話をしました。

その後、
地域の人、信者さん、
地元のお坊さんと食事をして、
話をして、
今年も大般若が終わりました。

明日は、
25回忌の法事を午前中にして、
午後から近くのお寺の大般若の手伝いです。
次の日は、お葬式。

***

今日の儀式の後で、
お寺に法事の日を決めに来られた、
おばあさんが、

「ウチは掃除してませんので、
 一番、ボロの着物で来てくださいね。」

と言っていたのは、
なんだか、おかしかったな。

このおばあさんは、
僕が散歩をしていると、
よく野菜をくれます。


ミッセイ

お知らせ。
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。

栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)

全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。

詳しくは、こちらまで。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2005-01-25-TUE
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