坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第176回 やさしく誠実であることは、
       ラディカルでかっこいい事なのかな?

ほぼにちは!

ミッセイです。

涼しい秋になって、
四国をお参りするお遍路さんも、
いくぶん、数が増えてきました。

お遍路さんで、
納経をされる人は、

掛けることができる、

「軸」

か、

「納経帳」

そして、

「白衣」

を持ってこられます。
(袖のない昔からの形の白衣は
 笈摺 おいずる
 と言います。)

そして、
この白衣を持たれている、
ほとんどの方が、

「自分の死装束」

にするために、
白衣をつくっています。

あるいは、
愛して大事に思っている誰かのための、
死装束です。
(例えば家族の誰か。)

こんなにも
多くの人が、
自分が死ぬ時の、
衣装を作るために、
四国を廻っているということは、

それが実質的に、
どんな効用なり、
御利益があるという、
話を超えて、

なにか、いいことなんじゃないかと、
個人的に想像します。



今日、
たまった雑誌を片づけていたら、
前に一度読んだ外国人の写真家のインタビューを、
読み始めてしまい、
片づけになりませんでした。
(雑誌好きが、おちいりやすい状況ですね。)

そのインタビューの中で、
その写真家の人が、

「何か新しい方法を探さなきゃいけない。
 全体的には誠実さというものが
 最もラディカルで
 素晴らしいことなんじゃないかなあ。」

と語っていました。

そこで僕は、
あるミュージシャンが、
発表したアルバムが、
とても柔らかい、
やさしい雰囲気を持っていて、

今までの彼のコアなファンからは、
いい評判が聞こえてこなかった時、

「やさしさという、
 もっともラディカルな選択肢」

という文章を、
音楽雑誌に投稿しようと思って、
書き始めたことを思い出しました。

僕は結局、
その文章を書き上げることが
できなかったのだけれど、

また、ここで、
どうして、
誠実さや、やさしさを持つということが、
ラディカル(過激で、根本的で、急進的)なのか?

ということを、
考えてみようと思うんです。

それは、まさに、
釈尊(しゃくそん、お釈迦さんのこと)
が挑戦しようとした、
テーマであるとも、僕が深く思うからです。

前にも書いたように、
仏教では、

「自分の持っている、
 残酷さとか、冷酷さとか、
 ずる賢さとか、戦闘的な部分」

を極力、取り除こうとする、
思考スタイルであり、
生活のためのアイデアであると思います。

なぜ、そうしようしたのでしょうか?

「世界を正確に見て、正確に知る」

ということの他にも、

「そういう感情を持つことが、
 気持ちいいことではないから。」

という、大きな理由があると考えるんです。

人間以外の動物が、
どのような事を考えているかは、
僕達にはほとんど知ることができないけれど、

僕達が、

自分の持っている、
ネガティブな感情を発揮した時の、

「イヤな感じ」

は、感覚としてよく知っています。

そして、

もちろん、

その感情の受け手となって、

自分が攻撃されたり、
親しい人が攻撃されると、

身体も、精神も、
直接的に害を受けます。

これを、
なんとか食い止めることができないのか?

人間は「イヤな感じ」を、
感覚的に知っているのだから、
意識的にその感情に挑戦できるんじゃないか?

ということが、
仏教の大きなテーマであると思うんです。

それが、
いかにラディカルであることは、

僕達の怒りや妬みや恨みの感情が、
どれだけ巨大で根が深ものか知っている、
僕達自身が、
一番知っていることだと思います。

なにも、僕は、

「やさしさと、誠実さで、
 全てが変わる!」

なんてことを、
言いたいのではありません。

ただ、
やさしさや誠実さを持つことが、

「もしかして、便利で、かっこいいことかも。」

と感じ始めている人が、
特に同世代の若い人達の中で、
少なくないような雰囲気を感じていて、

「うん、そうかもしれないねぇ。
 そう考えてた人も、むかしっから、
 いるみたいよー。」

と、若い坊さんのひとりとして、
小さな声をかけてあがられたらな、
と思います。  

そして、自分の抱えている、
暴力性があまりも現実的な形で、
“あらわれる”ことのないように、
注意しているのと同じように、

たしかに抱えている、
誠実さや、やさしさが、
すこしでも、あらわれるように、
できたらなと思います。

そうすることによって、
ひとり、ひとりの、

「今までより、ましななにか。」

が、増えるんじゃないかと、
予感しますし、

僕自身、僕に期待しています。


ミッセイ

 
お知らせ。
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。

栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)

全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。

詳しくは、こちらまで。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-10-31-SUN

BACK
戻る