坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第133回 とうぜん両方

ほぼにちは。

ミッセイです。

あるお寺で執り行われた、
法会に参加してきたのですが、
そのお寺が新しい曼荼羅をおろしていて、
いつか曼荼羅が栄福寺に、
欲しいと思っている僕としては、
興味津々でした。



実際に、法会に用いる時は、
導師の前にかけて、使ったりします。



「どういった曼荼羅なんですか?
 おっきいですね。かなり。」

「うん。日本の曼荼羅を
 チベットだったか、
 ブータンだったかに、
 持っていってね。
 あっちの仏画師に描いてもらったみたい。

 何枚かつくってるんだけど、
 最初は、顔がね・・・。

 やっぱり、むこうの顔なのよ。
 仏さんの顔がね。

 でも、最近は、
 仏画師も慣れてきて、
 ホラ、いい顔やろ?

 やっぱり慣れてきたみたい。」

とのことでした。
曼荼羅は、
必ず僕の代には、
栄福寺に、置きたいと思います。


最近、地元の学生情報誌の表紙を、
僕の写真でやりたいと、
言ってくれている人がいて、

デザイナーを交えて、
何度か打ち合わせをする機会がありました。

そこで、
自分の言ったことなんかを、
思い出してみて、
これは、まずいなぁ。

と思えることがあるんです。

恥ずかしいのですが、
言わないと、
話が前に向いて進まないので、言います。

つまり、

「イノセントに“いい表現”を追求している、
 “我々、クリエイティブ班”」

という実体のかなりあやしい存在と、

「クライアント(広告を出してくれる企業)
 への営業がしやすい、
 “わかりやすい絵”を求めている、部隊」

という構造に、
僕達の頭の中で完全に、
なってしまっていたなぁ。

ということなんです。

これって、

「当然、両方いるなぁ。」

と、思ったんです。

「あたりまえだ!」

と、普段、
営業の最前線に立っている、
あなたは、笑うかもしれないし、

「そんなもんは、ないっ。」

と、考える人も、
いるかもしれません。

ただ、旗印として、
大事な前提として、
この、「とうぜん両方」という、
価値観が、坊さんという仕事でも、
いろんなところで、
大切なものに、なってくるように、
僕には思えるんです。

それは、

「僧侶として、
 自分の求めるもの」

と、

「寺院の経営者として、
 お寺を運営すること」

だったり、

「古い声を、届ける役割」

と、

「新しいふるえに、
 共鳴していこうとする態度」

だったりするんだと思います。

それから、

「論理的なわかりやすい説明」

と、

「感情的で、さだまらない、
 ブレのある叫びみたいなもの」

とか、
なのかもしれません。


そして、ほとんどの場合、
それらは、最高で、
1つしか、獲得できないように、思われます。

このたとえ話だけでなくて、
あらゆる選択の場面で。

でも、僕は、

「“両方”求めることが、とても必要。」

だと、強く感じます。

もし、
両方が実現しなかったとしても、

「両方、求めた。」

というひとつの物理的事実は、
なにかしら、力強いものが、
含まれているような気がするんです。

僕やあなたが、

迷っていること、って、たぶん、

「両方」

なんだと思ってしまいます。
(そう、思いませんか?)

結果的に、
ひとつを選択する必要があったとしても、
(そういう場面って、多いですよね。すごく。)

なんとか“両方”を、
にじませ、すべりこませようとする、
具体的な努力や、

抽象的な意味や、
物語的な意味で、
“両方”を求めることは、
無駄ではなく、
大切なような気がします。

これって、

「Aランチと、Bランチ、両方食べたい。」

という内容と同じ部分が、
ありながらも、
違う部分の含む話だと思うんです。

自分の中でも、
うまくまとまっていませんが、
僕が「坊さん」と向かい合う上で、
「生きること」と向かい合う上で、
なにかしらの
響きのあるものだと感じます。

とにかく最近、

「とうぜん、両方だな。」

と、よく思ったり、
言ったりします。

“つづき”が、必要なんだろうけど。


蛇足かもしれませんが、
「曼荼羅」が、日本のように、
「金剛界曼荼羅」と「胎蔵曼荼羅」という、
シンメトリーな性格を持ったのは、
インドではなくて、中国からである。

という話を、どこかで読んだことがあります。
よく、
「二者択一的」な西洋の考え方に対して、
「あらゆるものに」価値、神秘を見出すのが、
東アジアや日本の仏教的文化だ。

みたいな表現をよく聞きますが、
物事をあいまいに二極化して、
うやむやなまま、
両方を、
わりに強く立ち上がらせるような、
「二者両方」
とも言える、
感覚も僕達には、あるのかしら。

0と1ほどじゃないにしても、
2と3って、
けっこう距離ありそうだよね。
3と4よりも。

「二者両方」は、
弱点にもおおいになりそうですが、
得意技なのかも、しれないな。


ぜーんぜん、わっかんないけどさぁ。

ミッセイ


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2003-10-05-SUN

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