坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第107回 坊さんの風景

ほぼにちは。

ミッセイです。

何ヶ月も、
お葬式に行ってなかったのですが、
最近、続いて葬儀に参加してきました。

季節の変わり目です。

急死の方も多いようですので、
高齢の読者の方は、用心してくださいね。

特に脳溢血と心臓発作が多いみたいですよ。

予防方法は、えーっと、
本田さん(「お医者さんと患者さん」)に
バトンタッチ!

お葬式に、呼ばれると、
たいがい、まず、
応接室のような場所に通されます。

でも、多くの家では、
応接室は、あまり、使うことがないので、
“物置”みたいな存在に、
なっていることが多いんです。

そこには、
子供が小さい頃のおもちゃとか、
古いピアノとかが並んでいて、
家族の時間を、びっしりと感じます。

そんな中でも、
特に、僕の目線がいってしまうのが、
本棚に並べられた、
故人が読んでいた本です。

「改訂 日独辞典」

「ケインズが意味するもの」

「世界のわらい話」

「猫の舌に釘を打て」
(推理小説みたいだった。すごい題名ですね。)

今日、行った葬儀でも、
本のタイトルを眺めていると、
亡くなった方の、
「人となり」が、
浮かび上がってくるような、
気持ちになりました。

葬儀は、僕のような、若い坊さんにとって、
もっとも、緊張する、
役目のひとつですが、

「“冥福を、こころから、祈願する”

 という部分だけは、
 “失敗”のないように、
 ゆずらずに、かならず、持っておこう。」


と思います。

女の人は、男の人より、
長生きすることが多いので、

長生きの女の人が、
少し早めに亡くなる、
男の子を息子に持つと、
息子のお葬式に、立ち会うことになります。

逆(娘のお葬式のお父さん)
は、僕は、見たことがないです。

人間生きていると、

好きな人にふられたり、
仕事で失敗したり、
なんとなく、イヤな感じがしたり、

いろんな事がありますが、
この時の、お母さんは、
僕が知る限り、

「一番、悲しい。」

表情と雰囲気をされています。

しかも、この悲しさには、
“責める人”がいません。

人を責めても仕方がないし、
息子だって、無念に違いない。

誰も悪くない。

その時、人は、
ただただ、ひたすら、頭を下げるようです。

如来を観るように、
床に額を付けて、
坊さんに頭をさげ、
参列者に頭をさげます。

僕は、同じように、お母さんに、
頭をさげ、精一杯、拝むのだけど、

“仕方がない”ことが、
本質的に含まれるのが、
人生なのかな。世界なのかな。

と思います。

“仕方があること”

で、笑うしかない。

泣く時は、泣くしかない。

“それでいい”

じゃなくて、

“それしかない。”

そうなのだと思う。


栄福寺が57番札所の、
四国88ヶ所霊場は、
毎年、
たくさんのお遍路さんがお参りされます。

そんな中には、
お坊さんが、何人もおられて、
知り合いのお坊さんが、
急に来て、

「シラカワ〜、久しぶりぃー。」

ということが、わりにあります。

この前も、
高野山大学時代のテニス部の先輩が、
歩いて、お参りに来られました。
埼玉のお寺の副住職さん。

話している内に
あまり、引き留めておくのも悪いし、
僕も、少し歩きたかったので、

「58番さんまで、一緒に歩きましょうか?」

ということになりました。

「髪型見て、
 “修行ですか?”
 って、聞かれるんだけどさ。

 “修行”って言われると、
 なんか、違うんだよなぁ。

 まぁ、ハイキングしてるわけでも、
 当然、ないんだけど。
 うーん。」


「ああ。わかりますよ。
 その感覚。なんとなく。」


「そう?ところで、シラカワ、なんかスポーツしてる?」

運動不足は多くの坊さんの、共通の悩みです。

「プールに行ってたりしたけど、
 今は、ほとんど、行ってないですね。」


「忙しいもんな。おまえは、仕方がないよ。
 みんな、言ってるよ。
 大変だって。」


「みんなが、言うほどでも、ないと思いますけどね。
 ボチボチ、楽しんでますよ。はは。」


「うん。おれもさ。 
 一人でサッカーしてる。河川敷で。

 いつ呼ばれても、いいようにね。」


「“呼ばれる?”」

「代表ね。“日本代表”」

「ああ。なるほど。」

「ふふふふ。つっこめって。」

30分ぐらい歩いて、
58番霊場、
仙遊寺(せんゆうじ)さんに到着しました。


仙遊寺、本堂にて

綺麗な、本堂ですね。素敵だ。

ここのお寺は、
「阿坊(あぼう)仙人」
という仙人が、修行されていたお寺です。

だから“仙遊寺”。

ふたりで、声を合わせて、読経して、
先輩は、次のお寺へ、
僕は栄福寺に向かいます。

「今日の宿は?」

「ビジネスホテルをとったよ。
 民宿に電話したら、
 “作家と相部屋で、いいですか?”
 って言うんだもん。

 相部屋はいいけど、
 作家はいやだよ。

 夜更かしっぽいもん。」


「作家と相部屋・・・。

 ホントに?

 “サッカー”選手じゃないですか?」


「そうか。しまったー。ふふ・・・。

 じゃ、行くわ。

 元気でな。」


「元気で。」

途中、
子供の頃、夢中で遊んだ犬塚池周辺で、
土管を見つけました。



天気のいい、夏休みは、格好の休憩場所だった。

日陰になって、すこしひんやりして。

「お笑い漫画道場」の鈴木先生や、
「ドラえもん」の、のび太みたいに、

土管の中で、横になって、
得体の知れない感覚に、ワクワクしていた。

ただ単に、
お菓子とジュースが、おいしかっただけかもしれない。

久しぶりに見る、犬塚池は、
多くの水をたたえ、
普段より、大きく見えました。



犬塚池から、
僕の住む集落へぬける、
こうばいが少し、急になった、
土の道を通りながら、



「よく、ここで、足を滑らせていたな。」

と、考える。

と同時に、
本当に、足を滑らせる。

子供頃と違って、
転びはしなかったけれど。


帰りに3びき、ヘビをみました。


ミッセイ

2003-05-02-FRI

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