坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第100回 石をさがし、砂浜を敷く。

ほぼにちは。

ミッセイです。

栄福寺の大師堂の回りを、
囲っている石がガタガタで、
足元が、危なくなっていたので、
整備しよう、ということになりました。

「でも、いかにもキレイな、
 新しい石だと、
 古いお堂に、合わないから、
 なんか、いやだなぁ。」

という、
僕の話を聞いた大工さんが、

「じゃあ、おっさん、
 ウチの
 (大工さんは自分のことをこう呼ぶ。
  例「ウチが二十歳の時・・・。」)

 親戚の知り合いが、
 大島で石を、掘りよるけん。(掘っているから。)
 ちょっと、
 ええ石あるか、観に行く?」

他にも、
いい石があれば、
使いたいし、
石掘りの現場自体にも興味があったので、

「ぜひ、ぜひ。」

というわけで、
「大島石」で有名な
地元愛媛の、
大島に行って来ました。 
栄福寺から、
橋を渡ると(しまなみ海道)
30分かかりません。

大島に着いて、
未舗装の狭い道を
ぐんぐん登っていくと、
石掘りの現場がありました。


石置き場

何十メートルもの、
深い、深い穴の下で
とても、小さく見える
職人さんが、働いています。


石掘り場

「ここから、落ちたら、
 “ゲームオーバー”ですね。」

と、震える足で、言ってみましたが、
なにしろ、一緒にいるのは、
石屋さんと、大工さんです。

「なに言よんで、(なに言ってるんだ)
 おっさん。

 落ちるはずないやろ。

 落ちたら死ぬけどね。」

と平然とした顔で言っていました。

「お寺に使うんだったら、
 どの石でも、使って。

 こっちで、言われた通り切るから。」

ということでしたが、
それは、あまりにも、
申し訳ないので、
作業場の廃材の石を見に、
連れていってもらいました。

“廃材”とは言っても、
石屋さんにとっての、
廃材で、それを庭師の人とかが、
買いにくるものです。

作業場では、
巨大な石をカットしていました。


石のカットシーン

石って、こんな風に切るんだね。
水しぶきが、すごかったです。

僕は「岩肌」が出た、
カットしていない石が好きなので、
その面を持った石を何枚か、頂きました。

「栄福寺チーム」の石がクレーンで、
運び出されます。


運び出される石

でも、残念ながら、
大師堂の回りに使うのに、
適当な石はありませんでした。

見せてもらった長い石は、
どの面も、
キレイにカットして磨いていて、
古い大師堂の雰囲気には、
すこし合わない気がしました。

栄福寺の大師堂は、
栄福寺が山頂にあった頃の
(今は中腹にあります。)
建物を移築した、唯一の建物で、


大師堂

大師堂の彫刻

できれば、
今のイメージのまま、
安全性を高めたい。

結局、その後で、
大工さんが、古い庭の解体現場から
見つけてきてくれた石が、
イメージにぴったりだったので、
それを、運び込んでもらいました。


石工事の栄福寺

コンセプトは、

「創建当時から、
 そこにあったかのような、石」

です。どうでしょう?


石を置いてみた大師堂

次に問題になったのが、

「雨が降った時に、
 地面がぐちゃぐちゃになって、
 拝みにくい。」

という問題です。
こんなになってしまいます。



よく、

「石畳(いしだたみ)にしたら?」

と、言われるんですが、
僕は、アスファルトの上を、
歩いてきたお遍路さんが、
ホッとするし、
栄福寺のやさしい感じに合うのは
“土”だと思う。

という考えから、
そのままに、していました。

栄福寺の面の面積からしても、
(変な言い方ですが。)

“地面”が占める割合は、
思ったより広く、
その、「素材」や「色」が、
与える“栄福寺”への影響は、
かなり大きいというのが、
僕の考えです。

だから、チャンスでも、
あるんだよね。

より、よくなる為の。

将来的に、石畳にするにしても、
ちゃんと資金をためて、
お願いしたい人のイメージ、
コンセプトが、僕の頭にあります。

「でも、このままじゃあ、無理でしょ?」

と言われ、ある考えが思い浮かびました。

「境内を“砂浜”にしたら、どうだろう?」

栄福寺は、元々、弘法大師が
瀬戸内海の安穏を祈願したことに、
歴史がスタートする、お寺です。

その、“山”にある
“海”の寺の境内には、
海岸の砂浜が、
敷きつめられていて、

そこには、
栄福寺の積み重ねてきた、
時間と人への尊敬がある。

といった、物語が浮かびました。

水はけも良いし、
白っぽい色も綺麗かもしれない。

業者の人も、

「それは、いいかもしれない。」

ということなので、

さっそく、敷きつめてもらいました。

ただ、ね。

「グレイ」だったんだよ。
ねずみ色。

海岸の砂を簡単には採れないので、
海の中の砂をとると、
こういう色みたいです。

学校とかの、
「砂場」も、こういう色だよね。

これは、もちろん、
砂を持ってきてもらった時点で、
わかっていたのですが、

「石とかと同じ色だし、
 合わなかったら、
 上からもう一度、
 違う砂をかけることにして、
 とにかく、一回、やってみよう。

 思わぬ、成功があるかもしれない。」

と考えて、敷いてもらいました。


栄福寺、砂

やっぱり、白い方が、いい気もします。

うーん。どう思う?

どなたか「白っぽい海岸の砂」の、
入手方法および、特別にいい砂、
ご存知で、ないですか?

少しずつ、みんなと意見が違って、
笑われたり、
あきれられたりしますが、

栄福寺が、少しでも、
「いい空間」に、なればいいなぁ。

と心底、思っています。

そして、
こういうこと考えるのって、
相当に楽しいです。

相当に楽しいことのひとつが、
仕事である。

というのは、すごく、うれしいよ。

ミッセイ

2003-03-30-SUN

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