坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第81回 3本の木


ほぼにちは。

密成です。

部屋の大掃除をしていたら、
大学時代の学生手帳が出てきました。

さすが高野山にある大学だけあって、
1ページごとに、
“弘法大師の言葉”が載っています。

ちょうど、「ほぼ日」手帳の、
<セフティ・マッチの金の言葉>
みたいな感じです。

たとえば、
手帳を、ぱっと開けると、

「道を聞いて動かずんば、千里何くんか見ん。」
(「答求理趣釈経書」より)

とかいう言葉が飛び込んでくるわけです。

いい言葉だなぁ。

なんとなく、
昔の自分を観察していると、
1999年のちょうど今頃、
僕は密教学科なのに、
書店から内定を貰ったのを、
珍しがられて、

「就職ガイダンス」の講師として、
後輩を相手に、講義していたみたいです。

「高野山でも、密教学科でも、
 全然、大丈夫ですよ。
 面接トークのツカミとしては最高です。」

みたいな話をしたと、記憶しています。

聴衆は3人ぐらいだったなぁ。

「白川君、板東英二と、
 しゃべり方、似てるねぇ。」

という就職課の、
おじさんの評価も微妙だったな。

今日は3本の木にまつわる話です。

年齢も経験も違う、
相手と仕事をする機会が
ほとんどの僕にとって、
考えさせられる事が多かったです。

栄福寺は植木屋さんに、
境内にある木々の剪定(せんてい)
を頼んでいます。

「大師堂の前の“かいづか”(という木があります。)
 2本、切ってもいいですか?」

貝塚

「どうしてですか?」

「きれいじゃないし、
 正面からじゃないと、本堂が見えないから。」

植木屋さんは、
経験が何十年もあるし、
その人から見れば、
僕なんて孫の年齢だし
“木”のことなんて、
徹底的に素人です。

だから、親身になってくれて、
アドバイスして下さります。

そして、もちろん、
そのアドバイスのほとんどは、
的確な言葉ですし、ありがたいです。

でも、僕が、
住職として判断することは、
時にプロの意見と、
正反対になることがあります。

それを、伝えるのは、
相手のプライドと親切心が
解るだけに、けっこう勇気がいります。
“業者”ではなくて、
“職人”の場合は特にそうです。

でも、
「全ての角度から本堂が見えるからといって、
 空間に拡がりは発生しないと思う。
 むしろ限定してしまう。」

「かいづかは、冬でも紅葉せずに、
 緑色なのでホッとする、
 特に理由がない限り
 あったほうがいいと思う。」

ということは、
譲れないラインでしたので?やんわり、やんわり、伝えました。

ちょっと不満そうでしたが、
納得してくださりました。

そして、夕方、

「亀甲竹(きっこうだけ)、
 1本、切った方がいいよ。」

という話になりました。

亀甲竹は竹の表面が、
亀の甲羅みたいになっている、
すこし珍しい竹です。
茶道具なんかの工芸品にも
使うこともあり、
「千利休作亀甲竹花入れ」
なんかが有名みたいです。

亀甲竹

兄が学生時代、
課題で設計してくれた、
(空想の)栄福寺のトイレの
コンセプトには、

「亀甲竹と呼ばれる、珍しい竹をはじめとした
 敷地内の木を切らないこと。」

と記されています。

「“山を体感する”ということを、
 施設内に持ち込む。」

とも。

職人の一部から見れば、
それはトレンドやファッションに、
聞こえるかもしれない。

でも、僕は、そう思わない。

「曲がって、生えてるし、
 松の先に当たっているから、
 松にもよくない。」

これも、現実的で、
プロフェッショナルな意見だと思う。

でも、違う方法もあると思う。

やはり、僕は亀甲竹も、

「切らないでください。」

と伝えました。
やんわり、ではなかったかもしれない。

しまった、と思った。
少し反省しています。

でもね、
ニヤニヤしながら、

「わかんないんで、
 ええアンバイで、お願いしまーす。」

って言ってしまうよりは、
何倍もよかったと思うんだ。
僕はボーッとしてると、
すぐに、こうなるタイプだから。

自分の好きな、作家とか、表現者とかが
書いた物を読んでいたりすると、
愕然とすることがあります。

例えば、宮大工の本を何冊か読んでも、

「言ってること、この二人、正反対じゃん。」

ってことが、あったりします。

でも、どっちとも好きだし、憧れてる。

正解は、たくさん、あるみたい。

どうすればいい?

“自分”になるしか、ないみたい。

恥ずかしい話、
僕の机の横には、
自分へのメッセージがいくつか貼ってある。

歩く「自己啓発野郎」である。

そして、

「常に“ハッピー”を探せ!」

や、

「脳は疲れない!!!」

の近くには、こう書いてある。

「なにげなく“はい、いいです。”と言わない。」

これを、実践すると、
時々、本気で敵意をくらいます。

それを、受け止める勇気は、
みんなには、ありますか。

僕にはあるよ。

とは、まだ胸を張れないけど、
がんばっております。
僕なりに。

そっちのほうが、
楽しそうだよね。

ミッセイ

2002-11-25-MON

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