── 永江さんは以前、
「同じテーマの本を大量に読むと、
 球が止まって見える」と
おっしゃっていたと思うんですが‥‥。
永江 ええまあ、たくさん読むと、
その本がどんな本なのか、
なんとなくわかってくるということですね。
── この『三位一体モデル』は、書店ですと
「ビジネス書」のランキングやフェアに
取り上げていただくことが多いんです。
永江 そうでしょうね。
── 『チーズはどこへ消えた?』が
流行ったときには
似たようなタイトルやつくりの本が
たくさん出てきましたし、
最近だと「右脳」をキーワードとした
ビジネス書がけっこうありました。
永江 『鏡の法則』なんてのも、売れてましたよね。
── そこで「ビジネス書」の流行みたいなものって、
あるんでしょうか?
永江 まあ、ひとくちに「ビジネス書」といっても
高度な経済分析にもとづくものから、
企業の経営手法についての本まで
いろいろとありますけれど、
このところのトレンドとして挙げるなら、
社会的存在としての企業を
どう位置づけたらいいのか、という趣旨の本が
多かったような気がします。
── 最近は、大手企業の不祥事も
また続けて明らかになっていますね。
永江 ようするに、
お金さえ儲かればいいっていう時代から、
社会のなかで、
自分の会社はどういう存在なのか、
そこで働くことには
いったいどんな意味があるのか、
というような内容の本ですね。
── なるほど。
永江 ですから「重たい」ものとしては
もうガッチガチな法律の話になるでしょうし、
ISOなんかが関わってくるような場合には
もっと理工書っぽいつくりになってきます。
── ふん、ふん。
永江 でも、どういった内容であれ、
みんなやはり、
「会社の社会的意義」というあたりのことが
気になってきてるんでしょうね。

だって不安になりますよ、
あなたのとこの会社、
社会的にあんまり意味ないね、
なんて言われたら。
── ちょっと前までは
「時価総額経営」なんて言葉が
脚光を浴びてたりしましたが‥‥。
永江 お金だけいっぱいあっても
むなしいじゃん、ていうことに
みんな、気づき始めてるんじゃないかな?

── 同じようなことを、このあいだ、
赤瀬川原平さんもおっしゃってました。
お金だけじゃ、おもしろくないよって。
永江 以前、糸井さんと話したことがあるんですけれど
結局、IT長者と呼ばれた人たちって、
いちばんはじめは輝いて見えたんだけれど、
でもそれは、
なにか価値あるものを生み出したんじゃなくて、
お金の運用が上手なだけだったんだってことが
わかっちゃった瞬間に、
みんなガッカリしちゃったよね、って。
── まさしく、お金がお金を
過剰に「増殖」させただけじゃないか、と‥‥。
永江 もちろん、稼いだ金額はすごい。

でもみんな、実際には
金額そのものについては、
たいして魅力的だと思ってないですよね。

他方で、たとえば「矢沢永吉」だったら、
彼が歌を歌って、
その歌にみんながグッときて‥‥
その積み重ねが「お金」になるわけです。
── ええ、ええ。
永江 ですから、
あっちこっち儲かりそうなところに投資したら、
それがいつの間にか大きくなっちゃった場合と、
矢沢さんの「積み重ね」とでは、
たとえば同じ「1億円」でも
なんか違うよねって話をしたんですよ。
── ああ、なるほど。
永江 永ちゃんには、あれだけの実績があるし、
たくさんのファンもいる。

みんなが欲しいのは、
そっちの「中身のある1億円」だし、
会社の意義についての
ビジネス書が多くなっているなんてことも、
そうしたあたりに理由がありそうです。
── 「中身がある」ってことですね。
永江 そう考えると、
「父」「子」「聖霊」が
バランスよくリンクした状態っていうのは、
「中身のあるかたち」なんだと思うんです。

だって、「聖霊」だけが
無限に増殖してはじけちゃったのが、
実体のないバブル経済だったわけですから。

<つづきます>

2007-02-19-MON