KOBAYASHI
新しい本屋さんの考え。
bk-1の安藤店長と話しました。

第3回 本の「本籍」と「現住所」。


安藤 ぼくは、本についてよく
「本籍と現住所がある」って言うんです。

既存のカテゴリーでいくと、
「人文書」「実用書」「出版社別」
といったものがありますけれども、
でも、切り口だとかテーマで見ましたら、
「いま、どんな人に読んで欲しいのか?
 ・・・だったら、あの雑誌の横がいい」
というように考えられますよね。

昔、永六輔さんの『大往生』がありましたが、
でも、あの本を買いたいおばちゃんたちは、
たぶん、岩波新書の棚には、行かないだろうと。
糸井 本籍は、「岩波新書」というわけね。
安藤 そうなんです。
ところが、現住所はどこかを考えた時に、
ぼくは「壮快」とか「安心」という
健康雑誌の隣に、平積みするわけです。
糸井 なるほどー。
この話を聞いたら、
本屋さん、ためになるねぇ(笑)。
安藤 その『大往生』を買いそうな人たちは、
「壮快」や「安心」の発売日に、
店を開ける前の朝から、並んでるんです。
待っていてくれているんですね。
「今日の特集はタマネギワインね」
なんて、ガヤガヤ言いながら、
グループで買いに入ってくる(笑)。

すると、目に入るんですね。
「・・・あ、これ、この間、
 永さんがラジオで言ってたわよ」
なんて言いながら、一緒に買っていく。
そしたら「毎度あり」って感じで。
すべての本について、ぼくは、
そういう風に考えちゃうんですね。
糸井 それは、ぼくがほかのところで
よく例に使う「事実婚」ってやつですね(笑)。

つまり、籍で話をするとわからなくなっちゃうし、
基本的に、世の中は事実婚で動いていくという。
でも、しかも籍の存在は重いじゃないですか。
その関係に、安藤さんが
おっしゃったことは、非常に近い気がします。
安藤 そうですね。
糸井 やっぱり、ほら、
「岩波」って籍は・・・。
安藤 重いですよね(笑)。
あれがすごい売れても、
ほかの出版社のように
大喜びはしなかったそうです。
糸井 なるほど、社風ですね。
「次男がハワイで出世した」
みたいなもんなんだろうなぁ(笑)。
安藤 現住所のラインで、
コンテンツ自体のおもしろさを、
どうアレンジできるかが、
本屋としてのぼくの仕事だったと思います。
『ほぼ日の本』でも、
「実力以下に評価されているけど
 実力のあるものに、どう光を当てるか」
と書いてありましたけど、ぼくはあれを読んで
以前に、歴史年表をたくさん売ったことを、
思い出しました。
糸井 おもしろいなあ。
安藤 山川出版社の『日本史総合図録』という、
横開きのもので、いわゆる、
「高校の歴史の副読本」なんですけども、
あれを1店で1000部くらい売ったんですよ。
糸井 すげぇ。
安藤 その頃、大河ドラマの「吉宗」をやってました。
何人かのお客さんから、言われたんですよね。
「将軍の系譜が、ゴチャゴチャしてて、
 よくわかんねえから、そういうのはないか?」
って。

最初は岩波の箱入りの歴史の本も考えましたが、
「たぶん、いま将軍の系譜を知りたいこの人は、
 4000円も5000円もするのは、買わないな」と。

そういうことが頭にありながら問屋に行ったら、
それが目に入りました。
値段を見たら、657円だとかで、
しかもオールカラーで装丁は菊地信義。
こりゃいいや、と思いました。
ごっそり本屋に持ってきて、
大河ドラマ原作本のまんなかに置いて、
「テレビのおともに便利です。
 1家に1冊、ぜひ常備」
というようなPOPを書いたら、
もう、飛ぶように売れるわけですよ。

さきほどの話で言えば、
この本の本籍は学習参考書なんです。
でも、大河ドラマを観ているおじさんたちは、
学参コーナーに行きませんから、
そのままだと、出会えないんです。

現住所に置くことで、はじめて出会える。
「そういう便利なものがあるんだ」
と、大河ドラマの原作を見に来た人も、
思い出すんですよね。
糸井 それ、いいよ! パクッて、
バージョンアップさせたいぐらいだ(笑)。
bk1では、そういうことって、できないの?
安藤 けっこう、ぼくが個人的には・・・。
糸井 ああ、チョコチョコっとたまにへんなのが
サイトに出てくる時が、ありますね(笑)。
あれは、安藤さんなんだ。

ただ「平面的に見えちゃう」っていうのが、
インターネットの本屋の
つまんないとこですよね。
「今日の特集」を作りにくいっていうか。

本屋という横目がきくメディアだと、
特集した時にワッと盛り上がるんだけど、
インターネットだと、
なかなか横目がきかせにくい。
安藤 アナログ的な広がりがないんですよね。
糸井 インターネットに関しては、
そこらへんを、ずっと考えてるんですよ。
安藤 僕もそうなんです。とりあえずは、
ぼくはリンクでやろうとしています。
あとはPOPというか、
キャッチで惹かせるという。

アナログ的な広がりのないところでは、
予定調和的な作り手と読み手の関係しか、
生まれないじゃないですか。

作り手と読み手がもっとクロスするような
化学反応みたいなものを、どういう風に作るか、
なんだろうなあと思っています。

ぼくは書店の棚配置で「文脈」を作るけど、
読者も、自分の棚に「文脈」を作ってほしい、
と感じているんですよね。
糸井 わかるわぁ、安藤さん。
ぼくは近々「中学生になろう」っていう
コンテンツを作ろうかと思ってるんです。
中学生までさかのぼると、だいたいが
「いち」からの吸収に、なりますよね。
英語も数学も「いち」からやってみると、
「何が足りなかったんだろう?」
というのが、ぜんぶわかるじゃないですか。

それを教科書にして、箱入りにして、
「みんな、欲しければ、うちにあるよ。
 限定何部で、まくよ〜」というような。
安藤 なるほど(笑)。
糸井 望遠鏡とかもつけて、
「中学生キット」っていうのを作ったら
面白いかなぁ、と考えているんです。
しかも、教科書作った本人たちへの
取材まで含んであったら、俺なら読むから。
安藤 教科書の仕入れって、結構大変なんです。
糸井 へー。そうなんだ。
安藤 「子どもが教科書なくしちゃった」
というお客さんが昔いたので調べましたが、
学校からのオーダーじゃないと動かないみたいで。
書店のオーダーではむつかしいんです。

このあいだ、「教科書問題」が
話題になっていた時、bk1では、
「bk1が選ぶ教科書」なんていう特集を、
やっていたんですよ。
歴史、国語、体育・・・。
ぜんぶふつうの本なんですけど、
「これを読むと、いいよ」なんて、
やってたんですけど。
糸井 俺、その特集、読みましたよ。
あれさあ、もしできれば、
現物の教科書でやりたかったでしょ?
安藤 できればね。
糸井 ぼくは、オリジナルの
教科書をつくりたいくらいだよ。
作るの、おもしろそうじゃない?
・・・でも、お金、かかるんだよね。
お金ほしいなあ(笑)。


(つづきます)

2001-06-04-MON

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