自転車思想。
チャリンコは、未来そのものの顔をしている。

景ちゃんの自転車 その1

こんにちは。

まず、前回のコラムで一点訂正があります。

> 今だったら梅の花やキンモクセイが咲いていて、
> 走り去る瞬間、花の香りがかすかに鼻をかすめる。


キンモクセイは、秋の花でしたね。
特にチェックもしないで書いてしまい、
読者の方からご指摘いただきました。
今いい香りなのは、ジンチョウゲですね。
うひゃー、恥ずかしいっ!

自転車カフェ/トウキョウカクメイカの話は、
さらに増えている仲間も含めて、
まだまだ続いてしまうのですが、
今回はちょっと一休み。

前にご紹介した、
自転車を作る女の子、藤田景子さんのお話です。
藤田さんは去年秋からあることを始めました。
それは、中古の自転車を再生させて販売することです。
ただ壊れているものを直すわけではありません。
フレームを再塗装して、パーツを付け替え、
彼女のセンスでさまざまな工夫を凝らした自転車に
生まれ変わらせてしまうんです。
これまで彼女がやろうとしていたことが、
1からすべて洋服を作ろうとするものだとすれば、
ある意味スタイリスト的なもの、かもしれません。

もちろん、その自転車のことを書くだけで、
僕の原稿もでき上がってしまうでしょう。
でも、それだけではちょっと足りない。
だから、藤田さんが自転車を再生させはじめた時から、
僕は1つのことを決めていました。
自転車ができて、それが売れてから文章にしよう、と。
1人の女性が、自分の才覚でモノを作る。
それを売る人がいる。
そして、それを買う人もいる。
結局、モノを売るという行為も、
それを通じて人と出会うためのコミュニケーションなんだ、
そんなことが書けそうな予感がしていたんです。

それを裏付けるかのように、
藤田さんはこんなことを言っていました。

「最初の1台は知り合いには売らない。」

彼女の交友関係の広さや、
その深さからすれば、
最初の1台を買う人を見つけるのは
たやすいことだったと思います。
でも、彼女はそれを拒否しました。

「景ちゃんの自転車ができたら、絶対買う。」

実際にそういう人も何人もいたそうです。
しかし、それを良しとしなかった。
あくまでも、自分の信じる自転車を、
自分のことをまったく知らない人が見つけて購入していく。
その可能性に賭けていたんです。

彼女が自転車屋さんで働いていた時のことです。
昼休みにお店の周りを散歩していたら、
ちょっと気になる服屋さんがありました。
中には、女性の店員さんがいました。
何気なく入った藤田さんは、
1枚のシャツがとっても気に入り
そこにいた店員さん、ナナさんに話かけたんです。
そのショップは、オリジナルの服を製造販売しており、
実はナナさん、そのブランドの企画担当だったのです。
お店に立つのは週に2〜3回程度で、
たまたまその日、ショップに入っていたそうです。

ナナさんは、作り手としての自分としても、
そのシャツがスゴク気に入っている、
そういうことを藤田さんに語り掛けました。
もちろん、藤田さんはその場で購入しました。
そして、シャツももちろんですが、
それ以上にナナさんのことが大好きになったんです。
(変な意味じゃなくってね)

それから藤田さんは、
昼休みになるとそのお店に行くようになりました。
でも、他の店員さんがいる日は、外からのぞくだけ。
ナナさんがいる日は中に入って、
服を見たり、いろんな話をする日々だったそうです。
(ちなみに、ナナさんの方は最近までそのことを知らず、
 偶然自分がお店担当に日に来てたと思ってたんだって)
自分が自転車屋で働いていること、
そして、自分だけの自転車を作って売りたいという、
彼女の夢(野望?)も話しました。
ナナさんも、藤田さんのことがすっかり大好きになって、
何度も一緒に飲みに行ってたそうなんです。

続きます。

Ride Safe!

2002-03-14-THU

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