Hobo Nikkan Itoi Shinbun

はじまりを、はじめよう。

Begin the beginning! 08 そら植物園と なにができるかな?

プラントハンターの清順さんと
いっしょに、なにができるかな?
さっそく、はじめてみます。

2012.05.15

第1回 花は、はじまり。

清順さんのプロフィールはこちら


清順 俺は、こいつ(砂漠のバラ)を
めちゃくちゃいいと思ってるんです。
とりあえず、プロポーションが
ものすごくかわいくて、たまらない。
しかも、花がとてもきれいだし。
糸井 ‥‥たとえば、これを
土と鉢と清順さんの言葉の入った
ブックレットをセットにして
販売するのはどうでしょう?
つまり、「そら植物園」さんと
ぼくら「ほぼ日」で、キットを考えていく。
清順 いいと思います。
栽培も難しくないし、
植物の「BEGINNING」としては
めちゃくちゃええと思います。
糸井 清順さんが、「砂漠のバラ」について
扱い方や物語を伝えてくれる
ブックレットをつけて、
植物でBEGINNINGできるような
キットを作るんです。
たくさんの人が同じ植物を
同じ時期に招き入れるって、
ちょっと、ないもんなぁ。
いろんな場所に住む人たちに
このひとつひとつが渡って、
「おんなじことを見てるんだなぁ」
というようなことがもしもできたら、
おもしろいと思います。
清順 やってみたいです。
この「砂漠のバラ」は
そういうことに向いていると思います。
糸井 やるとしたら、やっぱり、
苗より種がいいのかな?
清順 そうですね、どっちもいいんでしょうけど、
種から育てたほうが、
個性が出やすいです。
これでもいちおう
キョウチクトウの仲間なんですけどね。
糸井 おおむねアフリカのもの?
清順 そうです。このアデニウムの種類は
おおむねアフリカ大陸、アラビア半島です。
たまに日本に輸入されて、出荷されて、
「アデニウム」といって売られてるだけ。
でも、それやと、かわいそうなんです。
もっといっぱい伝えることある。
糸井 そうですよね、まずは植物を
「アデニウム」という名前だけですませないのが
いいと思うんですよ。
キョウチクトウです、おしまい。
松です、バラです、といっておしまい。
名前を呼んでおしまいになっちゃったら
植物のほうからすると、つまんないよ。
清順 そうです。
「日本人ね、はいはい」で終わりなのと同じ。
糸井 清順さんがここの植物の看板に
「つぶやき」を書いてるのも
まったく同じ意味でしょう。
清順 はい。
だから、あのプレートには
植物の名前を
大きくは書いてないんです。
糸井 砂漠のバラの、種を蒔く時期は?
清順 春先か、夏が向いてます。
糸井 土はどうすればいいんだろう?
清順 土はねぇ‥‥土のことは、
話すと長くなるんですけど。
糸井 短めにお願いします。
清順 短めに(笑)。
糸井 あるいは、顔真似でもいいよ。
一同 (笑)
清順 土というのは、工業製品じゃないから
人間が作り出せないものなんですよ。
ですから、どんな園芸屋さんでも
どこかで掘り出した土を使っています。
地球上の土をみんなが回し合ってるだけなんです。
糸井 うん、うん。
清順 でも、土がわりになるものがひとつあります。
それは「ヤシガラ」です。
ココナッツの実をとったあとの残骸を
熱処理して加工し、
ヤシガラのロープやマットを作りますね。
あれは、園芸用土としても使えます。
軽いし、土のように手が汚れない。
だから、机の上の鉢に入れても汚れにくい。
植物にも、とてもいいものです。
樹木も野菜もサボテンも育てることができます。
ぼくらは、このヤシガラを自社で直接
インドから取り寄せています。
育てる植物によっては、これに
土や砂を足したりしますが、
ヤシガラだけでもぜんぜんいけます。
糸井 じゃあ、このヤシガラのなかに、
種をぽんと入れて、水をやれば‥‥
清順 芽が出ます。
糸井 鉢はセットにして
届けたほうがいいのかなぁ。
素材は、素焼きがいいとか、
何かありますか?
清順 いや、ないです。
糸井 ない!
清順 鉢は、たいてい見てくれだけの問題です。
底に穴があいてればなんでもいい。
だから、もしも種といっしょに
鉢をつけるとしたら、かんたんなものにして、
あとは受け取ったみなさんがどうとでも
工夫してやっていくのがいいと思います。
糸井 ある程度、おおらかな気持ちで
いけそうですね。
清順 はい。
砂漠のバラは丈夫ですが、
枯れることだってないとはいえません。
けれど、それはしょうがないことで、
ちゃんと経験していただくことが
重要だとぼくは思っています。
枯れることを恐れすぎないでほしいです。
冬は落葉しますから、
つんつるてんになっても心配しなくていい。
糸井 それもBEGINNINGの形ですからね。
清順 そうです。
種から育てると、育つ環境によって
個性が出ておもしろいですよ。
これのでかいのは、このくらいになる。
めっちゃでかくなります。
糸井 これ、生きてるんだ。
すごい形だ。
清順 生きてます、生きてます。
糸井 まるで巨大なたけのこだ。
こうなっても、花が咲くんだね。
清順 もちろんです。
ぼくらはこの、生きてる日本の世界が
あたりまえだと思っています。
しかし、あたりまえの世界って、それぞれです。
この「アデニウム・アラビカム」が
やってきたのはイエメンですが、
イエメンにはイエメンで、
雪国では雪国で、山の中は山の中で、
どの世界もみんなそこがあたりまえです。
ぼくらはいつもの日本のルーティンの人生の中で、
常識とか、きれいな景色とか、いろんなことを
自分で考えちゃってます。
けれども、イエメンくらい遠くに行ったら
これが生えてるんやなぁと思ってくれるだけで
何かがすこし変わっていくと思うんです。
糸井 うん、そうだね。
清順 「へぇー」と思ってもらえるかなぁ、
ぼくがやってるのは、
それだけのことです。
(つづきます)