2005年10月13日から12月22日までの現場からです。
  12月22日(木)更新

愛媛は雪です。
作業場も暖房が入ったとはいえ、
だいぶ寒くなってきました。

先日は、エポキシ流し込み作業を
レポートしましたので、
アクリル板の接着が終わった後の裏面補強作業について
今日はお伝えします。

アクリル板をエポキシ樹脂で接着した後に、
補強の桟を入れる場所に、
接着剤を流しています。
接着剤を流した場所にアクリルの桟を立てて
接着剤が硬化するまで
しっかりと固定します。
この接着方法は、
水族館の水槽をつくる技術と同じなんです。
大きな水槽は現場で
このように接着してつくるそうですよ。
アクリルの桟を厚い鉄の板で挟んで
ボルトを通し、しっかりと固定します。
さらに作品の上下には鉄のバーがついて、
下側には鉄の車輪がつきます。
これで裏面の補強が完了となります。
  以上で裏からの作業はすべて終わりです。
作品の総重量は12トンぐらいでしょうか、
やはりこれだけの作品なので
重さも半端じゃないですね。

今年のレポートは以上です。
みなさん、よいお年をおむかえくださいね!
来年は『明日の神話』にとって
すばらしい年となりますように。
  12月18日(日)更新

今日は、岡本太郎記念館館長であり
「明日の神話」再生プロジェクトの
ゼネラルプロデュサーの平野さんが、
画面クリーニング作業を
初体験したようすをお伝えします。。

修復チームのリーダーである吉村さんが
平野さんに
画面クリーニングのしかたを指導しているところです。
平野さん、興味津々です。
真剣な表情で
炎の部分をクリーニングする平野さん。
クリーニング後、炎を見て
「いいかんじじゃん!」
でも、作業はこれでおしまい。
平野さんも忙しいのです。
すぐに東京に戻らなくては‥‥。
次はもう少し長い時間、お願いしたいところです!
  ★今日のおまけ
さて、今日は、わたくし山田が
お昼のお弁当を注文するのを忘れてしまい、
昼食をひさびさに
みんなで外で食べることになりました。
向かった先は、近所のうどん屋さん。
以前から気になっていた謎メニュー「コンビカレー」を、
修復メンバーのひとりで
最近愛媛にやってきた
石井さんにお願いして食べていただきました。
(ほかのスタッフは全員注文する勇気がないため)
さて、コンビカレーとは?
石井さんの予想では、
コンビーフのカレーだったようなんですが、
正解は、ジャーン♪
なんと、うどんとごはんのあいだに
カレーがてんこ盛り。
「コンビネーション」カレーだったみたいです。
スプーンとお箸を使って食べます。
それにしても、すごいボリュームです。
完食です。
石井さん、ご苦労さまでした。
これで、スタッフ全員のモヤモヤが
スッキリしました。
  今日は、以上です。
  12月15日(木)更新

先日の、作業台からの転落がひびいて
全身筋肉痛と打撲の痛みでガタガタです‥‥。
翌日は休みの日だったので、
散歩がてら近くの神社で安全祈願をしてまいりました。

私の打撲の原因となった
作業台のガラスのない部分です。
作業台の一部解体がはじまっているために、
ところどころガラスがない部分が
あったのを忘れていました。
ついついガラスのあるつもりで、
「すとーん!」と落ちました。
恥ずかしながら、作業台から落ちるのは
2度目ですが、今回は痛かったです。
3度目はないように、安全祈願です。
近所の水天宮を奉った神社です。
ばっちり安全祈願してまいりました。
これで、作業台からはもう落ちないでしょう。
(落ちたくない)
黄色く染まったイチョウも綺麗でした。
帰り道は、せっかくなので
普段通らない道を歩くことに。
すると目の前に降りたままで
上がらない遮断機が。
よく見ると‥‥。
初体験、なんと自分で上げる遮断機でした。
なんだか、ほのぼのとした気分になってしまいました。
作業場近くの重信川は、
今日も干上がっています。
橋を渡らずに、川の中を向こう岸まで
歩いて帰りました。
  明日からの作業をまたがんばります。
それでは、おやすみなさい。
  12月11日(日)更新

みなさん、こんにちは。
今日は、『明日の神話』の骸骨の部分について、
お伝えします。
  骸骨の部分は、
『明日の神話』のなかで
もっとも象徴的な部分です。
そして、
太郎さんが描いた、
下絵を含めて5点ある『明日の神話』のなかで、
この壁画にしかない特徴が
「骸骨の部分がレリーフになっている」
ということです。
画面から2cmほど飛び出しています。
  個人的には、
この炎のなかから現れる骸骨からは、
「太郎さん自身」を感じます。
今日は高さ150cmの作業台から2度の転落しました。
体のあちこちが痛いです。
(気を付けなくっちゃ)
  12月8日(木)更新

今日は、『明日の神話』ニュースで
全面が立ち上がったことを報告しましたが、
ここでは、絵が立ち上がる前の、
最後の裏面作業について
お伝えしたいと思います。

接着剤を流し込むために組んだタワーの上から
壁画の裏面を見た写真です。
今回は、最後の接着剤が流れるようすを
ムービーで撮影しました。
ゆっくりゆっくりエポキシ接着剤が
『明日の神話』の裏面に流れ込みます。

どうぞこちらをクリックして、ごらんください。
(↑こちらをクリックしていただくと、動画をごらんいただけます。)
壁画がどんどん立ち上がり、
接合作業に使っていた作業台のスペースが
空いてきました。
壁画が作業台からなくなると、
ああ、ガラスの上で作業をしていたんだ、と
思い出すようなかんじです。
(慣れてしまってすっかり忘れていました)
タワーに登って
画面の修復作業をする石井さんです。
  12月4日(日)更新

今日は、メキシコで解体梱包作業を一緒にした、
石井匠さんが
愛媛の現場に戻って来たので、
みなさんにご紹介します。
石井さんは、これから壁画の完成まで
一緒に修復スタッフの一員として
がんばってくれる予定です。
考古学が専門の石井さんは、
細かい作業が得意です。
(心強いです)
メキシコでの作品解体時に回収した
小さなパーツを整理している石井さんです。
石井さんが愛媛の現場に到着して、休む間もなく、
作業用のテーブルづくりを吉村さんと一緒にしています。
そして、すぐに作業開始。
メキシコで回収した小さな絵の具片を
接合しているところです。
(土器の接合と同じで楽しいそうです)

石井さんが加わった事で、ちょっと遅れ気味の
作業も進むでしょう。
(期待しています)
  ★今日のおまけ
修復作業もだんだん細かくなってきて、
作業をするテーブルが足りなくなってきたので、
近所のホームセンターで
作業台になりそうなキッチンテーブルを買ってきました。
組み立て式のキッチンカウンターです。
箱に2−1と書いてあるのが嫌な予感です。
早速、開けて部品を確かめてみると
やっぱり足りないです。
2梱包で1セットだったみたいです‥‥。
(車で30分かけて残りの部品取ってきました)
「じゃじゃーん!」いきなり完成写真。
夢中で組み立ててしまい、
途中の写真を撮るのを忘れました。
組み立てに30分かかりました。
ほんとうは、こんなものを
作っている場合ではないのですが、
よい気分転換にはなりました。
  修復とは関係のないレポートでした!
今日は以上です。
  12月1日(木)更新

今日は、顕微鏡を使っての作業をお伝えします。
細かい作業は、こんなふうに顕微鏡を覗きます。
この顕微鏡は、
本来は脳外科で手術などに使うものだそうです。
顕微鏡を使って何をするのか、不思議ですよね?
茶色い付着物
(写真中央あたりに写っています)を
取り除くのです。
実際に顕微鏡を通して
さきほどの画面を見ると、
このようになります。
メスを使って付着物だけを
慎重に落としていきます。
落とし終わった後の画面です。
茶色の付着物が、除去できました。
  以上で今日の作業報告を終わります!

それでは、また。
11月27日(日)更新

画面の上のほうを洗浄している、
修復スタッフの村木さんです。
高所での作業は危険をともなうため、
安全ベルトのロープを
タワーに固定して作業するのです。

太郎さんも違う理由で縛られていたとか‥‥
ちなみにわたくし山田も子どものころは、
柱に縛られていたそうです‥‥なぜ‥‥?

それでは、また。
  11月24日(木)更新
緑色の絵具の上に、白っぽくゴツゴツとしたものが
ついているのが見えますでしょうか?
実はこれ、セメントなのです。
通常は、絵画の画面にセメントがつくことは
まずあり得ないのですが、
『明日の神話』は、
メキシコで保管されていた場所が
建設会社の資材置き場だったので
ついてしまったのでしょう。
セメントは、ほかの汚れのように
溶剤を使った洗浄では落ちないので、
こうやってメスを使って
ちまちまと削り落としていきます。
そして、一方、接合作業のほうはというと‥‥
ついに、最後の接合が完了しました!
あとは井上さんの裏面補強作業を待つのみです。
  修復スタッフのこれからは、すべて
壁画が立ち上がった状態での作業となります。
  11月20日(日)更新

作業場にも、念願の暖房器具が
やっと入りました!
ローリングタワーの2台目が現場に入り、
壁画の高い部分の作業も、
できるようになりました。
下に置いてある青い椅子や、
タワーに上っている人と比べると、絵の大きさが
ちょっとおわかりいただけるかもしれません。
これは、絵の具欠損部分を充填作業している
吉村さんです。
しばらくほかの仕事で
現場を離れていた、
裏面補強担当チームのリーダー、井上さんが
戻ってきて、作業場はにぎやかです。
井上さんは、今回の滞在で
壁画の補強作業をすべて終えて、
すべての壁画の立ち上げを完了させる予定です。
  壁画がすべて立ち上がるのを
はやくみなさんにお伝えしたいです。
それでは、また。
  11月17日(木)更新

みなさん、こんにちは。
夏は37度あった作業場も、
このところだいぶ寒くなってきました。

いよいよ今日から、オモテ面の修復について
お伝えします。
まずは、画面をきれいに
クリーニング(洗浄)する作業からはじめます。
クリーニング前の画面です。
汚れで、図柄がよく見えにくいです。
画面の全体の汚れは、
写真のような綿棒で、
ていねいに落としていきます。
綿棒に溶剤をつけて、慎重に、
拭いていくのです。
クリーニングが進むにつれて、
汚れの下の図柄が
しだいにはっきりと見えるようになってきます。
上半分がクリーニング終了前、
下半分がクリーニング終了後です。
ちがいがわかりますでしょうか?
★おまけ
吉村さんが、オモテ画面の修復をしはじめる前に
4×5のカメラで撮影をしているところです。
修復前の画面を撮ったこの写真は、きっと
後の世に残っていく1枚になるのでしょう。
作品が大きいので、撮影もたいへんです。
  11月13日(日)更新

ご心配をおかけした風邪は、
咳だけがしつこく残ってしまいました。

これから、壁画の画面(オモテ側)の作業を
中心にお伝えしていくことになります。
今日は、画面に取りかかる前の大事な過程である
光学検査の一部をお伝えします。
修復チームのリーダー、吉村絵美留さんが
赤外線カメラで、絵を調査をしているところです。
これは、絵の一部を通常撮影したものです。
赤外線カメラを通すと、どんなふうに見えるでしょうか。
カメラを通した画像は白黒で、このように見えます。
この調査で、書き直しをはじめ
岡本太郎さんの苦心の跡などがわかるんですよ。
さきほどの画像に高低差をつけて、視覚的に
どの絵の具が先に塗られて
どれが最後に塗られたかを、
わかりやすく強調した画像です。
  11月9日(水)更新

「ゴホッ、ゴフォッ」
どうやら風邪をひいてしまったみたいです。
明日は休みなので、なんとか体調を戻そうと思っています。
どんどん寒くなっていく季節ですから、
みなさんも気をつけてくださいね〜。

今日は、壁画の現在の状態をお伝えします。
メキシコでの作業の概略をお伝えしたので、
これからは少しずつ
立ち上がった壁画の画面からの作業を
お伝えしていく予定です。
いま、立ち上がっているのは、
壁画全体の左側にあたる部分です。
現在立ち上げられている壁画のパーツは、
ぜんぶで5枚です。
残りは、裏の補強がすべて終わった時点で
いっせいに立ち上げられる予定です。
  それでは、またです。
  11月6日(日)更新

今日は、メキシコ解体梱包作業を
最後までお伝えします。
ちょっと長めですよ。
作品の裏につけられていた鉄製フレームを
取り除く作業です。
フレームと壁画を固定している、
錆びたネジをひとつひとつ工具で取り除いていきます。
『明日の神話』は7枚に分割して描かれましたが、
1枚につきだいたい100ヶ所ほどネジで固定されて、
壁画は眠っていたんですよ。
フレームが取り除かれて、
作品を亀裂に沿ってわけた状態です。
作品の亀裂などをあらかじめ座標化したマップに、
解体時に出た小さなパーツが
どの位置から回収したものかを記していきます。
考古学の発掘作業のような手順です。
作業現場の全景です。ほんとうに、だだっ広い場所でした。
写真右奥に見える白い建物が、
一昨年、岡本敏子さんが現地で確認したときに
壁画が置かれていた場所です。
このとき解体梱包作業をした場所にも、
おそらくいまは同じような倉庫が建っているはずなのです。
そうしたら、また壁画は
次の場所に移動していたかもしれません。
ほんとうにギリギリのタイミングで
『明日の神話』は日本に持ち帰られたわけです。
亀裂に沿ってわけたパーツを、
日本へと運ぶ木箱の上に乗せて包んでいきます。
回収した小さなパーツにもナンバーを入れていきます。
木箱のふたを閉める前に、
日本まで輸送中の温湿度を記録する装置を
設置します。
これが、その装置です。
5cmくらいの大きさで、
約2ヶ月の温湿度を記録します。
パソコンに繋げば、記録した温湿度を
グラフ表示してくれます。
壁画が日本に来るまでに、
どのような状況を経たかがわかります。
作品の収められた木箱です。
最後にTAROのロゴを入れて完成です。
壁画は木箱10ケースにわけられて
日本に持ち帰られました。
屋根の下にあった作品はすべて木箱に収められて、
壁画を支えていた鉄の枠だけが残りました。
  以上の作業を、約10日で終えました。
日中35℃湿度10パーセント、
標高2500メートルという現場の環境を考えると
驚異的なスピードで解体梱包作業は行なわれたと思います。
作業に携わったメキシコのスタッフにも、
ほんとうに感謝です!
梱包し終えて、チームが日本へ帰ったのは
4月20日でした。
そこで、私たちは
岡本敏子さんの訃報を聞くことになりました。
  11月3日(木)更新

東京もだいぶ寒いようですが、
愛媛も同じく寒くなってまいりました。
私もちょっと体調を崩してしまいました。
作業場は、15℃を下回ることもしばしばです。
そろそろ壁画のためにも暖房が欲しいところです。
夏との温度差で壁画が反ってしまい、画面が‥‥

今日は、ラックに立て掛けられていた壁画を
安全にうつ伏せに倒すまでの、
メキシコでの作業をお伝えします。
メキシコで、『明日の神話』は、
ごらんのようにあちらこちらに亀裂が走り
壁画を支えている鉄骨も歪んでいて
ひじょうに不安定でした。

作品の状態がこのようになっていることと、
分割された壁画1枚のサイズが
5.5メートル×4.4メートルという大きさであるため
メキシコからの輸送方法は、
亀裂に沿って作品を分割して
輸送コンテナに入れる方法がとられました。
作品保護のためのパネルをつくります。
鉄製フレームに板を張って、
その上にウレタンスポンジを張ります。
スポンジを張ったパネルを画面にあてて固定します。
ねじれ防止の為に太い角材を縦に3本入れて
作品を運ぶため、吊り上げる準備をします。
クレーンで吊り上げられた作品は、
慎重にゆっくりと倒されていきます。
無事に1枚目の作品を倒すことができました。
中央に写っているのは、
ほっとした笑顔の岡本太郎記念館館長の平野さんと
修復チームリーダーの吉村さんです。
「どんな作業も計算上は上手くいくと言われても、
 やはり最初の1枚目は緊張と不安でいっぱいです」
  今日は、以上です。
次回は、作品を木箱に入れるまでの作業をお伝えします。

それでは。
  10月13日(木)更新

『明日の神話』の修復作業は、これまで
裏面の修復と補強に力が注がれてきました。
そして、いよいよ、壁画を立ち上げる日がやってきました。
今日は、立ち上げ作業のようすをお伝えします。
大人が4人も頭を寄せ合って何をしているかって?
壁画を吊すベルトにフックが通らなくて
苦労しているところです。
気が急きますが、ていねいに作業をします。
やっと吊り上げベルトがつきました。
いよいよ壁画の立ち上げがはじまります。
壁画が、ガラスのステージから離れた瞬間です。
いろいろな意味で緊張しました。
修復チームのリーダー、吉村さんも
注意深く見守っています。
「画面が見えた!」
2ヶ月間、ほぼ毎日壁画の裏ばかり見てきた自分には、
画面が見えたこのときは、
緊張と感動の一瞬でした。
次に、壁画を立ち上げるために、
作品を移動させます。
さあ、これから、
作品を徐々に垂直まで起こす作業がはじまります。
『明日の神話』修復チームへのメッセージは、
メールの表題を「明日の神話」として、
postman@1101.comまでお送りくださいね。
お待ちしています!
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