第5回 『どうぶつの森』のデザイン。

糸井 まぁ、ただ増えればいいというものでは
ないんですけど、おそらく、
服やアクセサリーも増えてますよね。
岩田 はい、それはもう。
糸井 それはねぇ、うれしいんだなぁ。
一同 (笑)
毛呂 わかりやすいところでいうと、
今回は、ボトムスを変えることができます。
つまり、いろんなズボンをはくことができる。
京極 靴と、靴下も変えることができます。
糸井 へぇーー。

毛呂 あとは、ワンピースもあります。
もちろん、デザインもできます。
京極 シャツも袖にバリエーションが加わって、
半袖、長袖、ノースリーブとあります。
糸井 はーーー。
もう、聞いてるみんながにこにこしてるね。
一同 (笑)
京極 あとは、プレイヤーのキャラクターの
顔の形や髪型、ヘアカラーにも
新しい種類が増えました。
それから、カラーコンタクトで、
目の色も変えることができます。
糸井 とにかく、もう、だいたいのことは、
よくなってるんだね。
岩田 (笑)
糸井 あの、ギターを持った犬も出ますよね?
京極 はい。
「とたけけ」は土曜の夜にライブをやってくれます。
さらに今回は、平日や日曜にはDJをしています。
糸井 ライブをやる場所が‥‥「クラブ444」。
これ、なんて読むんですか?
京極 「クラブししょー」です。
お笑い芸人のししょーというキャラクターが、
芸人を引退して、クラブのオーナーになっています。
ししょー、昼間はクラブの掃除をしてるんですけど、
差し入れをすると芸を見せてくれるんです。
糸井 その芸を見るとなにか起こる‥‥っていうことかな。
いやぁ、なんというか、満載だねぇ。
岩田 満載なんです。
いま言ったようなことが、ものすごい量、
端から端まで詰まってる感じなんですよ。
つくってて、たいへんなのか、たのしいのか、
もう、よくわからないんじゃないかと思うんだけど、
まぁ、両方だよね。たいへんだし、たのしいし。
毛呂 両方ですね(笑)。
最初から、みんなで言い合ってたのは、
「最後までたのしくつくりましょう」
ということでした。
こんなこともできたらおもしろいよね、
っていう感じで、どんどん出し合って。
ただ、おっしゃったように数が多いので、
つくりあげるのはたいへんでした。
岩田 『どうぶつの森』を開発してる人たちって、
なんか、仲がよさそうな感じがしません?
糸井 ああ、します、します。
岩田 仲のいい感じが、にじみ出てると思うんです。
糸井 そう思う。なんでだろうね?
実際に知ってるわけでもないのに。
毛呂 実際、仲はいいと思います(笑)。
仲がいいからこういうものができるのか、
こういうものをつくってるから仲がいいのか、
どっちかはわからないんですけど。
毎日のミーティングでも、仕事の相談以外に、
「こないだこんなおもしろいことがありました」
みたいな話をしたり。
七夕になると誰かが当たり前のように
笹を買ってきて、
みんなで短冊に願い事を書いてたり、
ある日、『どうぶつの森』のお菓子を
つくってくる人がいたり‥‥。
そういう雰囲気のなかでつくっていました。
岩田 だから、開発チームの部屋が、
どんどん「リアル『どうぶつの森』」に
なっていくという(笑)。
糸井 となると、岩田さんはたぬきちかな。
一同 (笑)
糸井 これ、アイテムにしてもキャラクターにしても
たいへんな量ですから、
当然、手分けしてつくってると思うんですけど、
それにしては、バラバラになっていないというか、
世界観の完成度が高いじゃないですか。
アートディレクションは、どうしてるんですか?
毛呂 それは、やっぱり、デザインリーダーが。
岩田 今日はここに来てないんですけど、
任天堂HPの「社長が訊く」や
どうぶつの森ダイレクト」にも出ていた
高橋(幸嗣)さんが、がんばってるんですよ(笑)。
糸井 いや、これをきちんと統一させるのは
たいしたもんだと思います。
岩田 誰かが決めないとそろわないですからね。
京極 新しい家具でも、新キャラクターでも、
これは『どうぶつの森』っぽいかどうか、とか、
あの世界になじむかどうかということが、
しっかり基準になってました。
糸井 デザインの視点から見た
『どうぶつの森』の世界観っていうのが、
ぼくにとってはとても魅力的なんですよ。
極端な言い方をすると、
ぼくにとっての『どうぶつの森』の主役は
「デザイン」なのかもしれないです。
岩田 おお、そうなんですか。
糸井 システムやバランスがすばらしいことは
もちろんわかってるんですが、
どんなに脚本や音楽がいい映画でも、
主役の俳優が好みじゃなかったら、
自分にとって魅力的に
思えなかったりするじゃないですか。
もっと言えば、俳優さんが好みっていうだけで、
ストーリーつまんなくても、たのしめたりする。
その俳優ともいえる「デザイン」が、
ものすごくぼくには合ってるんです。
たとえば‥‥なんだろうな、
自分が想像している以上に
ウェディングドレスが自分に似合ったり。
京極 (笑)
糸井 いや、真面目な話(笑)。
あと、あのおしゃぶりね!
京極 はい、今回もあります(笑)。
糸井 よかった。
実際のおしゃぶりってね、
いまはもっと、流線型というか、
機能重視のものになっちゃって、
シュッとしてるんですよ。
でも、『どうぶつの森』のおしゃぶりは
そっちに行ってなくて、
かわいさが残ってるんですよ。
そういうデザインがいいんです。
やっぱり、空飛ぶ円盤が
いつまでもアダムスキー型であるように
おしゃぶりはおしゃぶりらしくあってほしい。
京極 はい(笑)。
糸井 あと、「木」の表現は、好きだなぁ。
岩田 ああ、「木」はいいですね。
糸井 「『どうぶつの森』の木」は
ほんとにいいんです。
実がなったところも、またいい。
毛呂 ありがとうございます。
糸井 村のどうぶつたちのデザインも
どんどん新しい顔ぶれが加わるのに
そろってるから不思議ですよね。
そうとう難しいことをやってると思う。
そこに「自分」っていう人間が入って、
それでも違和感がなかったりするし。
岩田 キャラクターのデザインは、
人工物とはまた違った難しさがあるでしょうね。
家具や服のように、
時代や地域でそろえることもできませんし。
京極 デザインディレクターの高橋が言うには、
プレイヤーの顔は、
「誰でも落書きで簡単に描ける」
ということを意識しているということでした。
だから、複雑な線をつかわないように。

岩田 はぁーー、そうですか。
糸井 岩田さんでも、いまさら
「はぁー」っていうようなことがあるんだね。
岩田 いや、このゲームに限らず、
訊いてみると、あるんですよね。
糸井 なるほどねー。
しかし、これだけのいろんなものの数を増やすと、
つくる手間だけじゃなくて、
その、新しく加えたものどうしの
組み合わせで想定外の出来事が起こるとか、
そういうことが‥‥。
毛呂 はい、起こります。
糸井 ですよね(笑)。
毛呂 そこは苦労しましたね。
なにしろ、おっしゃったように
組み合わせの数がすごいので。
糸井 「そういう組み合わせ、やるなよ!」
って言いたくなるだろうね。
毛呂 (笑)
京極 もちろん、ある程度は最初に想定してから
とりかかるんですけど‥‥。
岩田 想定して、設計して、つくる。
徹底的にテストして、
おかしいところが見つかったら直す。
毛呂 はい、そのくり返しです。
糸井 それを、山ほどやるわけですよね。
解決した問題だけで、
何問くらいあっただろうね。
毛呂 ‥‥数千は。
糸井 はぁ、数千!
毛呂 すぐ解ける問題からすごく難しい問題まで、
いろいろあるんですけど、
すごく難しい問題だけでも、
数百はあったと思います。
糸井 はぁーー。
岩田 「はぁーー」ですね。
(つづきます)
2012-11-28-WED