第2回 俺たちはずっと 攻め続けなければ いけないのか?

糸井 この前、『アメトーーク!』で、
「後輩の山崎に憧れてる芸人!!」
というテーマの回を放送してましたよね。
アンタッチャブルの山崎(弘也)に憧れる
芸人さんたちが集まって、
山崎をおだてまくるという回だったんです。

「後輩の山崎に憧れてる芸人!!」
加地 しかも、先輩たちが憧れてるんですよね。
糸井 そうそう、関根勤さんとか
東野(幸治)さんがね。
山崎がおもしろいことは
お客さんも前々から思ってたことですから、
あれは納得度の高いタイトルだったなぁ。
加地 あの収録は、山崎がいかにすごいかを
みんなでさんざん語り合ったあとに
本人が登場する、という段取りでした。
登場直前にセットの裏を覗いたら、
山崎がひと言「ハードル高いです」って(笑)。
糸井 そりゃそうだ。
加地 まぁ、でも彼だから大丈夫だろうなと
思ってましたけどね。
その前の週には、
「泥の97年デビュー組」というのを
放送しました。

「泥の97年デビュー組」
糸井 観ました、観ました。
あれはあれで危ない企画ですよね?
泥のセットを組んで(笑)。
加地 いまいち売れてない芸人さんたちが
泥を被って来たという設定です。
糸井 1997年デビューの芸人が
まるごと売れてないんだよね?
加地 不思議なことに。
糸井 だけどなんとなく
見たことある顔ぶれなのが
また、弱っちゃうんだ。
加地 そうですね(笑)。

泥の97年デビューのみなさん。
糸井 みんな、周囲から「売れてない」と
言われ続けてきたらしくて、
会話に入っていくときに
ちょっと自信がなかったりするんだよね。
加地 そうですね。
微妙に「かんで」たりもする(笑)。
やっぱりすごく緊張してるんです。
糸井 そのわりには過剰に切り込んでいくし、
心が忙しいようすがよくわかりました。
でも、それはテレビを観ている
みんなの心でもあると思う。
加地 ああ、そうですね。
糸井 お笑いの世界だけじゃなく、自分自身も、
「ああ、こういうときにはああだったよ」
なんて経験が、みんなにあるんです。
だから観ていておもしろいし、
あの番組が成り立つんですね。
「おだてられ山崎」と「泥の97年代」の
2週連続放映は、最高に
『アメトーーク!』らしさが出ていました。
ホントに、攻めてますねぇ。
加地 ええ。
糸井 だけど、番組のキャラクターが
こんなにも出ちゃったら、
今度は、それをどう壊すかを考えることのほうが
スタッフワークとして
たいへんだったりしませんか?
加地 おっしゃるとおりです。
『アメトーーク!』の場合、
ずっと攻め続けなきゃいけないという
気持ちは、常に持っています。
だけど、いまは逆に
ちょっと攻め過ぎてるんじゃないかと
自分たちでは考えています。
このままでは俺たちは
行き詰まっちゃうんじゃないかとも思うし、
攻めることばかりが『アメトーーク!』、
という印象になって
どんどんそのハードルが高くなります。
そうすると、逆に攻めの新鮮さがなくなる。
ですから、今度はちょっとゆるい、
滑らかにいける企画を‥‥例えば読書芸人とか。
糸井 ゆっくりみんなで本を読むだけの(笑)。
加地 そうです(笑)。
あとは、一度やった企画の
シリーズ第2弾なんかも、
やるべきかなと思ってます。
あんまりそういうのはやらないんですけど、
あえてやることが必要かな、と。
糸井 うん、うん。
加地 変化球であるはずが
意外とスピードが速くて、
あまりストレートと
変わらないことになっている。
それはそれで、弱った状態です。
ですから、観てくれる人たちの期待を
ある種裏切るようなことを
していきたいなぁと思ってます。
速いボールのなかでスローボールを投げてみて、
例えば「山崎」の回を好きな人が
その回を観て「おもしろくなかったな」って
思ってくれたらいいなと思っています。
糸井 なるほど。
加地 でも、その逆に思う人もいるはずなので
バランスがよくなると思うんです。

(続きます)

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2009-10-21-WED

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