みんなで行った、 阿寒きのこの森。
エピローグ(後編) いつかまた行きましょう、 あの原始の森へ。
山下 あとで録音していたテープを聞いたんですが、
糸井さんは、あの橋のところで
「これは誰も、なんにもしてないんだよなあ」
ということを言ってました。
イトイ ああ‥‥。

山下 誰も手を入れてない、と。
イトイ 倒木が、ありましたよね。
山下 ‥‥はい、いたるところに。
橋からの景色の中にもありました。
イトイ 「この倒木が、手を入れてない森の特徴ですね」
っていうことを、
あの日ぼくは何度も新井さんに言ってました。
モギ 倒木‥‥。
根こそぎ倒れて‥‥。
イトイ バキーンって。
山下 倒れてしまうと
そこにすかさず菌が入り込んでくる。
田口 倒木の上からも生えてるし。
ゆーないと 倒木更新。
イトイ もう、お忙しいことで。
山下 お忙しいことで(笑)。
イトイ しかも長ーい時間、
大昔から、ひっきりなしにそうだったわけです。
山下 そういえば糸井さん、
森を歩きながら言ってました。
「ナウマンゾウがいねえかな、
 ナウマンゾウがいれば最高なのに」って(笑)。
イトイ おれ? 言ってた?
山下 「のっしのっしと出てきそう」って。
イトイ そうかぁ‥‥いや、
でも、現場ではそんなことばっかり
考えてたかもしれない。
山下 そんなこと、と言いますと?
イトイ いや、だから大昔の森ですよ。

つまり、日本人の祖先という人たちが、
マンモスを追って、こう、わーっと、
大陸からやって来たわけですよね。
そのときに祖先たちが見た景色っていうのは、
当然、どこへ行っても見られないわけです。
モギ はい。
イトイ それがさ、
「見られた!」と思ったんですよ。

山下 はぁー。
イトイ 4、5千年前の景色として
ピラミッドを見るのと同じような感覚です。
それのすごいやつ。
「何万年も昔の人が見ていた森だ」
そう思ったら、
もう、わあーってなっちゃったんだよ(笑)。
一同 (笑)
山下 あんな、国道からひょいひょいと
降りていっただけの場所で。
ゆーないと そうですよねー。
イトイ ひょいっとだよね。
モギ ひょいっとでした。
ゆーないと 急に、まったく別世界へ。
山下 なんだか、物語みたいでしたね。
イトイ いやー、よがっだ。
まんずまんず、よがっだ。

モギ 出た(笑)、東北弁。
ゆーないと 2日間ほんとにずーっと、東北弁だった(笑)。
山下 でも、あれでしたよね、
東北弁だったから
素直に感動を出せたような気もします。
イトイ うん。
東北弁でよかったんだよ。
だって標準語でさ、
「この森は実にすばらしいですねぇ」
なんて言うくらいなら、
それは黙ってたほうがましですよね。
山下 はい。
イトイ そこを‥‥
「あんれまあ! ちれいだねえ!」
一同 (笑)
ゆーないと いっぱつで気持ちが(笑)。
イトイ 出せたな。
モギ よかったわぁ、東北弁。

イトイ あと、あれですよ、
あれもよかった。
「きのこ狩りは日没前に終了」。
釣りだとそうはいかないからね。
暗くなるまで、がめつくやっちゃう。
山下 釣りはねえ(笑)。
イトイ 素直に日没前に終了して、
明るいうちに温泉でも入る。
もう、ああいうのがいいよね、
欲かかない旅が。
田口 すごくゆとりがありました。
イトイ だけど、思いはいっぱいだからね。
ゆーないと そうですねー。
イトイ ‥‥じつはおれさ、
ほんとに、つい先日のことだよ。
「週末に阿寒に行きたい」って思って、
どうすればいいんだろうって本気で考えたの。
でも、どう考えても無理なんだよ(笑)。
一同 (笑)
山下 やー、でも、わかります‥‥。
こうやって写真をみてるだけで、
また行きたくなりますよね、無性に。
イトイ うん‥‥。
行こう、いつかまた行きましょう。


「みんなで行った、阿寒きのこの森」は、
今回で終了いたします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

最後に、新井さんの写真をメインに、
スライドショーをつくりました。
ぜひ、ご覧ください。
京都発の兄弟バンド「キセル」の音楽が、心にしみます。

写真/新井文彦
   (基本的に人物が写っている記念ショットは
    ほぼ日の面々が撮影したものです)

音楽/キセル『ビューティフル デイ』
※この楽曲はキセルのアルバム
 『Magic Hour』に収録されています。

 キセルのおふたりの、公式HPはこちらからどうぞ。


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2010-12-10-FRI
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN