天久聖一の味写道
味写道・その三

師匠 お茶くん、そろそろ桜が満開じゃな。
お茶 花見シーズン到来ですね。
師匠 なにが花見じゃ。
ただ酒を飲みながら
漠然と視界に入れとるだけじゃないか。
お茶 別にいいじゃないですか。
師匠 いや、花見というかぎりは
もっと意識的に花を見んとな。
お茶 どう意識的に見ればいいんですか。
師匠 ズバリ、チラ見じゃ。
お茶 桜をチラ見するんですか?
師匠 ふむ。
なまじ満開の桜を見ようとしても
どこに集中していいか分からん。
そういうときは逆に見ないようにするのじゃ。
お茶 逆転の発想ですね。
師匠 左様。
頭上に咲いた桜をなるべく無視し、
どうしても気になったときだけチラリと見る。
電車で美人をチラ見するように、
少し後ろめたい気持ちがあった方が
「見る」という行為を純化できるのじゃ。
お茶 なんですか、そのスケベな見方は。
師匠 これがワシの推奨する「むっつり花見」じゃ。
みなさんも是非お試しあれ。
お茶 試しませんよ!
それでは今週の味写道、
まずはH・N コップくん、という方からの作品です。


味写NO.555
「折衷案」
H・N コップくんさま

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お茶 撮影風景って他人から見るとかなり無防備ですね。
師匠 現実を切り取る作業が現実においては不自然に見える。
実は深い本質が隠されておる。
お茶 心持ち膝を曲げたポーズが気になります。
師匠 後ろにどうしても入れたい被写体があったのかの。
フレームを考えてる間に
「アンタもうちょっと下!」となったんじゃろ。
お茶 すごく素直に従ってますね。
師匠 普段の上下関係が如実に出てしまったな。
お茶 でもどうやらベストな位置が決まったようです。
師匠 分からんぞ。
これだけやって最終的に「アンタ邪魔!」
というパターンもあるからな。
お茶 おじさんが無事撮られることを願ってやみません。
では次、H・N 菊練りさまの作品です。



味写NO.556
「アンニュイ蕎麦」
H・N 菊練りさま

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お茶 社員旅行で
そば打ちを体験されたときの写真だそうです。
そば粉を練っているのは投稿者さまの先輩とのこと。
師匠 なんというアンニュイな表情じゃ。
お茶 ビジュアル系バンドのメンバーのようですね。
師匠 このそば打ちも彼女にとっては、
終わりなき混沌から刹那の幻を紡ぎ出す
儚い戯れなのかもしれんな。
お茶 なんだか退廃的なそばが出来そうですね。
師匠 蒼い血のナイフで切り刻まれ
茹で上げられた幾筋もの麺を今宵誰に捧げようか‥‥
お茶 どんなそばですか。
師匠 周りの視線も全員バラバラなところが
さらにジャケット感を出しとるな。
お茶 リリースするのはそばですけどね。
それではラスト、H・N 今は真面目さまの作品です。


味写NO.557
「母の拳」
H・N 今は真面目さま

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お茶 お母さまからゲンコツをもらう瞬間であります。
師匠 表情、肩のすくめ方、全身の硬直度。
まさにパーフェクトなゲンコツのもらい方じゃな。
お茶 玄人はだしのリアクションでございます。
師匠 お母さんが半笑いなところも微笑ましいな。
お茶 はい。
でも写真にはスピード感がありますね。
師匠 微笑ましさとは裏腹に
案外本気のゲンコツだったりして。
お茶 いったいなにをやらかしたんでしょうね。
師匠 実際には落札できない商品を
ブログで宣伝したんじゃないか?
お茶 なに言ってんですか。
師匠 事務所の指示だったとはいえ、
ファンを裏切る行為であることは間違いないからな。
お茶 「すぐにブログを閉鎖しなさい!
 そしてしばらく謹・慎!」
師匠 「はいっ!」
お茶 って、そんな理由で叱られてたんですか。
師匠 みなさんもペニオクにはご用心!
お茶 今週は以上です。
師匠 ふむ。今週もバラエティに富む作品が集まったの。
味写道では随時諸君からのお宝を募集しとるぞい!
採用者には
ついに完成したお茶くんの分身をプレゼントじゃ!
お茶 それではみなさまの日曜に幸アレ!(茶柱)


2013-03-24-SUN
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