アジオ、アジコ、アジノモト博士
天久聖一の味写入門

第3回
味写を味わおう!(その2)




アジオ&アジコ
博士、あけましておめでとうございます。

博士
はい、おめでとう。お正月はどうだったかね?

アジオ
親戚のひとたちがいっぱい集まって
うんざりでした。

博士
いいじゃないか。
お年玉がたくさん集まるんだから。

アジコ
でも大人たちはお酒を飲むとうるさいから。
オヤジギャグもいっぱい聞かされるし。

博士
ギクッ!

アジオ
すぐ調子にのる叔父さんがいるんです。
いとこ同士に相撲を取らせて、
しかもお金まで賭けようとするんです。

博士
ギクッ!

アジコ
いるわね、そういう困った叔父さん。
いい年して独身でさ。
今年もお膳につまずいて
ウチのお母さんに叱られてたわ。

博士
う〜ん、子供は意外と冷静に観察してるんだね。
じゃあ兄貴の息子たちも私のことを‥‥
おっといかんいかん、
我が身を案ずるよりまずは本題だ。
年末に君たちのお家でも
味写を探してごらんといったけど、
どうだい? 首尾よく見つかったかな。

アジオ
はい!
年末の大掃除で掘り出し物を見つけました!

アジコ
私は親戚の人たちにも声を掛けたの。
みんな喜んで協力してくれたわ。

博士
ほう、それは心強い!
じゃあ早速アジオ君の作品から
見せてもらおうかな?

アジオ
ほ〜い!

味写No.005「ダンス」
写真をクリックすると、さらに大きな写真をご覧いただけます。


アジコ
まあ!
妖精たちのダンスパーティーかしら?

アジオ
でもよく見ると全員お年寄り。

博士
過疎の実態というリアルな現実と、
ダンスの興奮が見事に融合した
味わい深い作品だね。

アジコ
中央のおばあさんが
スリ足で移動している感じがいいわ。

アジオ
お年寄りのあまり関節を曲げない動きって
クールだよね!

博士
ロボットダンスに通じるものがあるのかもね。
まあロボットというよりも
からくり人形に近いけど。

アジオ
じゃあ、からくりダンスか!
ニューステップの誕生だ。

アジコ
さすが戦中派!
アメリカ生まれのロボットダンスを
上手く自分流にアレンジしたのね。

博士
いやはや脱帽だ。
それとここは
村の集会場みたいなところだと思うけど、
飾り付けも面白いじゃないか。

アジコ
奥をよく見て。
両陛下のお写真がさりげなく‥‥

アジオ
表彰状の貼り方が斬新!
縦に並べて貼るなんて。

博士
壁一面のデタラメぶりが
場のエネルギーを増幅しているね。

アジコ
なにかが起こりそう‥‥
このパーティーが
クライマックスを迎えた瞬間に!

アジオ
いや! もう起こってるよ。
見て! 左のおじいさんを!

アジコ
こ‥‥これはテレポーテーション!?

アジオ
瞬間移動か! こいつは特ダネだ!

博士
現場はさぞや驚いただろうね。
手前右のおじいさん以外は。

アジオ
ああ‥‥見逃してる。

博士
しかしお手柄だよ、アジオ君。
はじめてでこれだけ鑑賞ポイントの豊富な
味写作品を披露してくれたんだからね。
味写は狙って撮れるものじゃないから、
何をチョイスするかが大切なんだ。
これからもこの調子で
どんどん面白い味写作品を発掘して欲しいな。

アジオ
はい! 博士!

博士
うん。期待してるよ。
じゃあ次はアジコさんの作品だ。

アジコ
なんだか緊張しちゃうけど‥‥
はい、どうぞ。

味写No.006「宴」
写真をクリックすると、さらに大きな写真をご覧いただけます。


博士
‥‥いやあ、申し訳ない。
しばし呆然としてしまって。

アジオ
博士の気持ち分かります。
ホラ、ボクも手に汗がびっしょり‥‥

アジコ
私だっていまやっと
胸のつかえが取れた気分よ。
正直苦しかったもの‥‥
この写真がポケットの中にあること自体が。

博士
よく辛抱したね、アジコさん。
しかしどうだろう‥‥
この画面全体から漂う緊迫感は!

アジオ
周りのみんなが席をはずした理由も、
なんとなく察しがつきますね。

アジコ
それにしてもこのおばあさん‥‥
気の毒よね。

アジオ
もうなんか殺気立ってるよね。
憎しみのあまり‥‥

博士
‥‥いや、ひょっとして今、
君たちがこのおばあさんに
同情や憐れみの念を抱いているとしたら
それは大きな間違いかもしれないね。

アジコ
どうして? 博士には見えないの?
左に見切れてる仲居さんの背中に回った
男の人の腕が。

アジオ
これはきっとこのおばあさんの
旦那さんなんだよ。
だからこんなに哀しそうに‥‥

博士
もちろん私もそう感じたよ、最初はね‥‥
でもふたりとも、
もう一度よくこのおばあさんの顔を見てごらん。
ネットの前のみなさんは
どうぞ作品をクリックして、
彼女の表情を再確認してくださいな。

アジオ
やっぱり怒ってる!

アジコ
いや! 笑ってる!

博士
強いて言えば‥‥超えている。
私はそう感じたね。
嫉妬、羨望、自嘲‥‥
あらゆる感情を超えて解脱した者だけに許さる、
まさに仏の表情だよ。

アジオ
そう言われてみれば、
この全てを見透かしたような
真っすぐな目線‥‥

アジコ
まるで力みを感じない自然体の佇まい‥‥
私たちとはステージが違うのね、

博士
まったくいらぬ気遣いで
このおばあさんに同情した自分たちを
恥じ入るばかりだよ。

アジコ
勘弁してね! おばあさん。
私たち勝手に誤解して‥‥え〜ん!

アジオ
気が済むまでぶってください!
手加減なしで! え〜ん!

博士
さあ、ふたりとも涙をお拭き。
味写とは誤解の積み重ねなんだからね。
それに仲居さんに手を回している男性が
おばあさんの旦那さんだってこと自体が
そもそも私たちの誤解かもしれないんだから。

アジコ
誤解かあ、そうね。
これは親戚のおばさんにもらった写真だけど、
映ってる人が全然知らない人だと
ついついこちらが勝手に
解釈してしまうものなのね。

博士
そこが味写の醍醐味でもあるんだけどね。
どうせ誤解するなら
楽しく誤解したいじゃないか。

アジオ
それってなんだか恋に似てますね。博士!

博士
ずいぶんおませだね、アジオ君は。
よし、じゃあ今年も
大いに恋をしようじゃないか。
素晴らしい味写作品たちにね!


アジオ&アジコ
はい! 博士!

2005-01-09-SUN

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