どうせだったら、
広告の勉強もしてやれ!

まず、アートディレクターって、どういう人?

第1回 副田さんというひとに会いたいと思った

ある日、わたくしほぼ日スタッフ木村が
別コーナー「千体のお気楽な骸骨たち」で、
田中靖夫さんに、広告の話をきいていると、


これは新聞広告


こっちは電車の広告

今ちょうど田中さんが関わっている
この広告に、アートディレクターとして
関わったかたの話が出てきました。
名前は副田高行さんというそうだ。

1950年生まれで、アートディレクターをやっている。
「トヨタ・エコプロジェクト」のロゴをつくったり、
代表的な作品を他にたくさん持っているひとです。

ぼくは、この副田さんというひとに、
とても強い関心を持ちはじめました。

広告の世界、つまり、アートと商売のあいだにいて、
言葉と映像的なものとの中間っぽいところにもいる。
そういう分野で「アートディレクション」をしている
このかたは、いま、なにをどう思ってるんだろうか?
・・・そういう、広告にまつわることについて、
ぼくはちょうど、かなり、気になっているのです。

例えば、高校に通っていた頃のぼくなら、
広告の世界に生きているひとに対して
ことさらに興味を持つということはなかったでしょう。
その世界でおこなわれていることに、
ちかづくことはないだろうと思っていたし、
どこかで根本的に「いいものは、いい」で済ますことで
広告とかから離れた偉い領域にいる気がしていたから。
好きな作家は、勝手につきつめているから、好きだった。

でも、「内容さえよければ、伝わる」と
仮にそうひとくちに言ってしまったとしたら、
その「内容」って、本当はいったい、なんなんだろう?
そんな風に思いあたることが、個人的には、
ここ数年、すっごく多くなってきました。
「内容」「形式」と、ふたつには
わけられないんじゃないか?と感じています。

例えば、「ハムレット」の見せかたを変えてしまい、
盛り上げる場所や細かいセリフのニュアンスがなくなれば、
そんなのは、まったく「シェークスピア作」ではなくなる。
そういうようなあたりから、広告を気になりはじめています。

広告というとビジネスビジネスしているけども、
見せてつかませることだけを考えているというのは、
おそらく、商売だけにとどまらなさそう。

いろんなひとの手や足を動かして、
自分の推奨したものを実際に買わせるんだから、
たぶん、かなり強く、すごい、と思わせなければいけない。
ある意味でものすごくシビアで、しかも
質の高低がわかれる表現に、なるのではないでしょうか?
つくっているひとが「俺って最高!」と真剣に
思えるくらいのレベルの表現が、必要なのではないか?

・・・しかも、その上に、前からぼくが
「内容さえよければいいんだ」
と思って好きだった作家たちの本を読みかえしてみると、
それこそ誰もが「見せかた」にこだわってるようなのです。
「見せかた」も含めて、というか、
文章なら、やっぱり文体もふくめてのこころよさが、
えも言われぬそのひとの世界を生み出すようで・・・
ぼくはどうやらそういう作家を好きなようです。

だから、そんな、自分が今まで知らなかったような
広告の世界を見てみようかなあ、と思いはじめています。
ちょうどいま東京糸井重里事務所に出入りしているので、
そっちのひと(怪しい表現だね)に会う機会もありますし。

ぼくが、このひとはすごい、と思っている
田中靖夫さんと同じ土俵でやっているかたなら、
おそらく、素敵なレベルのものを生みだしていそうだ。
そんなところで、ぼくは、さきほどの
副田高行さんに、ぜひ会いにいきたいなあ、と思いました。


(つづく)

2000-03-16-THU

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