ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第16回 いやあ、ものすごくおもしろいよ。




ピーコ なんか、認められるのが、
すごく面倒臭いの。
だから今、歩いていてもすっごく面倒臭い。

だって、私の好きなのは、
地下鉄とか山手線なんだし。
今は、外を歩いてるだけで、
まわりの反応に疲れる。
糸井 あ、そうか!
ピーコと俺が道端でよく会う理由は、
両方とも、よく道を歩いているからなんだ。
ピーコ うん。
いま青山に住んでるし、事務所も青山で。
それがどうして青山かっていうと、
渋谷に行くんだって、六本木に行くんだって、
溜池に行くんだって、季節がよければ、
ぜんぶ歩けちゃうから。
糸井 だから、よく会うんだ。
ピーコ もう、歩くの大好き。
だから、歩くのも、すごい速い。
糸井 そこは俺、そっくりなんだけどな。
ピーコ だって、この歳して運動嫌いなんだから
歩くくらいしかないじゃない?
他に何にもできないから。
糸井 今は、人気が出過ぎて、その歩くのは
不自由になっちゃったんだ?
ピーコ でもなるたけ歩いてるけど、
すまして歩いてるけど、
何てったって、あなたが最初に言った
毛皮が目立つでしょ?
糸井 (笑)そりゃ目立つよ!
「お、どこのマダムかな?」って。
ピーコ 毛皮着なくったって
こういうふうにしてたって
目立つでしょ。
糸井 目立つ目立つ・・・
そんなやつぁいないからね、あんまりね(笑)。
すごくおもしろいよなあ・・・。
何がおもしろいか
よくわかんないくらい、おもしろい。
ピーコ 早く言えば、
周りが個性の強い人ばっかりだったでしょ?
そういう人の中でいたわけだから、
そういう意味では幸せだった。
すっごく素敵な人にめぐりあってると思う。
糸井 やっぱりその、
1人の人が生きてる間っていうのは、
玉突きじゃないけど、
何かを与えあうものが
絶えずあるんだね、やっぱり。

それはきっと、向こうから
こっちに与える影響もあっただろうけど、
向こうもピーコから、
何かをもらってたんでしょうね。
ピーコ どうなんでしょうね。
糸井 なんでかはわからないけどさあ・・・
だってそうじゃなかったら
会いたくないじゃない?向こうも。
ピーコ まあ、みなさんよく会ってくださる。
糸井 そうだよねえ。
ピーコ だから芸能界なんて、
ほんとに口だけのお付き合いって多いからね。
でもそうじゃない人ばかりがまわりにいたから。
それはすごくありがたいと思ってる。
糸井 ああぁ、きっとその流れで
人の名前が順番に出てくるだけでも
おもしろいと思うんですけど、
ぼくとしては、できれば今回、
その都度の誰かの話じゃなくって、
中心軸をピーコって人にすえて、
濃く、土管を通したいんですよね。
ピーコ ふーん。
・・・いま何時?
糸井 あ、もう、いい時間ですね。
ピーコ ちょうどいい時間ね。
糸井 いやあ、おもしろいよ、ものすごく。
もちろん、最終的には
どれをどう載せるかも、
いっしょに作りますから。
ピーコ うん。
ま。本になっちゃうのは
お任せします。
私はそういう能力はないから。
糸井 ありがとう。すっごいおもしろかったよ。
聞きたいことがいっぱい増えた。
ありがとうございました。
ピーコ これは、あとで整理してくれるわけだから、
何をしゃべってもいいわけでしょ?
糸井 整理します。その意味では楽だとは思いますね。
ピーコ でも、明日も雑誌の取材を、
3時間くれって、言われてるの・・・。
きっと、目を取ってからの話になると思う。
糸井 それ、泣ける話に
まとめられちゃうでしょう?
ピーコ それは、困ったことなの。
糸井 そうだよ。美談にされちゃう。
ピーコ 「ガンになりました、
 皆さまの力で治って帰ってきました」
っていうのは、嫌なんです。
糸井 俺もそう思う。正直。俺もそう。
ピーコ わたしはガンを隠して入院して、
手術しちゃったあとにテレビに出たけども・・・。
スッと入院しちゃって、
ちょっとしたお休みです、みたいにすれば、
みんなの前で改めて言わなくても・・・。

ガンって、きっと、
言っていい人と言っちゃいけない人が、
すごく微妙な分け方になるけど、いると思う。

だれそれが闘病中、と
テレビの中でベラベラ流れちゃうと、
「自分もそうじゃないか?」
と思わされる人が、
いっぱいいるわけじゃない?

それこそ、ガンの患者を持ってる家族には、
ああいうのは、耐えられないと思う。
今はどこのテレビでも、
そういうことを何でもやるんだけど、
あれは、すごく嫌なの。

例えばみんなは
取材をする前に先入観があって、
わたしがガンで目を取るっていうことは
すごい大変なことだと思うらしいんだけど。
そりゃ、大変じゃないこともないけど、
わたしからすれば、そうでもないの。

腎臓とか何とかでおなかを切ったり、
もっとすごいこと言えば、
乳がんで乳房を切ったら、やっぱりそこが
女のアイデンティティだとは思わないけど、
それだって、嫌なわけでしょ。
わたしはある意味では、
目でよかったと思っているところがあって、
でも、そういうことは、
いくら言っても伝わらないんだよね。
糸井 うーん、伝わらないように聞くね、みんな。
ピーコ だから、目を取ってよかったこともあるし、
気がつかなかったことに気が付くようになった、
と、ほんとうに思ってるんだけど。
でも、そういうふうに言うと、
今度は偽善者みたいになるじゃない?
糸井 いや、そのさじ加減は
たぶんとてもむつかしいけども、
聞く側としては、がんばりますよ、私たちは。
ピーコ 私はあなたのことを信じてるからいいけど。
・・・でも、いつ頃までに本を作る気?
私のスケジュール、タイトだよ。
糸井 わかる、わかる。
できればギュッとインタビューしたいなあ。
あと2度話してみれば、
うまくいくんじゃないかと、
ぼくは踏んでるんですけどね。
ピーコ どうぞ、そちらの才能でやってください、
じゃあ、わたしは帰ります。
糸井 才能はないんだけどさあ。
ピーコ あ、そうだ。
あなたね、私がこのコートを着るとね、
そんなに嫌らしくはないのよ、
着方があるの。
糸井 (笑)嫌らしいとは、言ってないんだけどね。
ピーコ あのね。着方があんのよ、
パッと着ちゃうの。
糸井 ああ、わかったわかった。
「おかみさん気分」みたいなものを、
ちょっと入れるわけね。
ピーコ (笑)まあね。
糸井 よくわかった。
そのコートは、嫌らしくない(笑)。
ピーコ (笑)
糸井 じゃあまた。
ほんとにどうもありがとう。




(※ここまでで、1日目のインタビューはおわりました。
  このあと、数回のインタビューが行われて、
  『ピーコ伝』というかたちで本が書き下ろされます。
  みなさん、楽しみにしていてくださいませっ!!)

2001-05-31-THU

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