OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.125
- Damejin 3 -



“脱力系”というよりもはや“解脱力”‥‥な
---- 『ダメジン』をよろしくお願いしますの3



テアトル新宿にてゆる〜く公開中

□「何だろう‥‥」に慣れてくれ

三木聡さんは「ヘンなことに遭遇する運がある」
とおっしゃるんですけど、
ヘンなことに遭遇する強運って、
運は、やはりパ○スロで磨いているのかなあ。
‥‥なんてアホなことを考えている
2006年の暑い梅雨。蒸してます。

『ダメジン』トークもいよいよ第3回。
あと1回を残すだけとなりました。

本日は、「ポイント5」です(vol-123を見てね)。
「5. ネタをいつ考えるのか、気になる」

どうも、ヘンなことに遭遇する運が強いらしい。
運を高めるには「インドへ行く」のがいい、
‥‥じゃなくて“認識力”の問題らしい。
おそらくそれは“好奇心”とも置き換えられると思う。
「これは何だ?」とおもしろがると、
なんか洞察力がついてきて、
いろんなことが「ヘン」に見えてくるかもしれない。

そして、次のステップは、
「自分がおもしろがれることに、誠実になれるか」
三木さんのクリエイティブ魂ともいえる純粋な想い。
さらにそれは「自分が良く思われたい」という
欲との闘いでもあるのだと‥‥。

そういう意味では、『ダメジン』ほど、
その想いがストレートに湧き出ているものは無い。
最近の映画の中でもダントツトップな気がします。

絢爛豪華すぎてよくわからない状態の映画には、
ときどきなんだかゲンナリしますが、
そのあたり、『ダメジン』は、
じつにじつにスカーッとします。
1つ1つのシーンの隅々にこだわりがあり、
サービスはたっぷりしつつも、
萌える想いはストレートです。

ぜひみなさんも、ムシている梅雨はムシして、
(あ、熊本さんになっちゃう、いや〜)
とにかく、この夏、スカーッとしてください。

では三木さんのお話、つづけます。



□ネタをいつ考えるのか、気になる

── 三木さん、ネタはいつ考えるんですか。
   やはり、四六時中?


三木 いや、そんなことないですよ。
   「記憶の底に眠っているものを、
   困って思い出す」という感じです。


── その思い出すものの元は、日常的に探して‥‥?

三木 探してるというんじゃなくて、そういうことに
   遭遇する運だけはあると思ってるんですけど。


── 運ですか‥‥。

三木 運が大きいんじゃないかと思うんですけど。

── きっとみんな遭遇しながらも、
   気がつくか、つかないか、
   という違いだったりするのかなと思うんですけど。


三木 そのこともあると思うんです。
   認識するということが、
   いろんなことの根源になるじゃないですか。
   たとえば、犬を描いたときに、
   犬の足をまっすぐに描く人は、
   犬のことをあまり知らない人で、
   犬の足は、1回曲がって伸びてる、
   と描く人は、犬の認識がある人です。
   そういう認識をするかどうかですよね。
   ‥‥ということに近い。

   ダメなことを認識するのが好きかどうか、
   というのは、あります。
   好きなものは認識しやすい。
   僕はオートバイに乗るので、
   オートバイの絵を描け、と言われたら、
   描けるんですよね。
   エンジンがどこについて、とか。
   でも、オートバイを知らない人が
   オートバイの絵を描くと、
   めちゃめちゃな絵になるとか、
   それと似たようなことはあるのかな、と。


── 好き、なんですね。

三木 何が好きかというと、
   人の恋愛はどうでもいいけど、
   人の変なクセとか、そういうのは意外と好き、
   というのはありますね。


── 観てから気がつくんですよね。
   あ〜そういえば「ウソをつくと眼鏡が曇る」
   みたいな、言われてみればそうだ(そうか‥‥?)、
   というポイントは。


三木 そうそう。
   そんなに突飛なことではないんですよね。
   映画監督やってるから、
   すごい非日常的な生活を送っているか、というと、
   そうでもなくて。
   朝、撮影に集合して、撮影し終わって帰ってくる
   という日常がそこには存在してて。
   それよりもドンパチ、けっこういろんなドロドロ
   した関係も含めて、あったりするわけでしょ。
   みんなの思ってることのほうが、
   よっぽど凄かったりしますからね。

   それを映画を観て解釈してくれたり、
   思い出してくれれば、それはそれで、
   僕としては幸せなことですね。
   映画観ている間、全然関係ないことを
   考えてもらってていいわけです。
   川の中に住んでいる人見て、
   「うちの近所にはこんな人がいたなあ」
   と思い出していただければ。
   いいんです、映画の中に没頭しなくても。
   ユルユルやってますから、そのうちまた
   映画の中に戻ってきてくれたらね。


── 「時効警察」の“時効課”も、
   有りそうな気がしますけど、絶対にない(笑)‥‥。


三木 よく言われるんですよ、
   リアリティが無いって(笑)。
   でも僕の中ではリアリティがあること
   だったりするし。


── いや、セットの緻密さや、
   背景の人々の動きの細かさに
   リアリティたっぷりですけどね。
   ただ、ああいう警察官がいたら、
   たぶんクビになるような‥‥。


三木 でも、なんか、「私たちの課ってあんなもんです」
   って言ってる警察の方もいました。
   シティボーイズのコントでも、
   「自分の会社もあんなもんです」
   と言われてましたからね。
   会社でしゃべっていることを1日録音して、
   それを脚本に起こしてみたら、
   いかに1日意味の無いことを話しているか、
   ということがよくわかる‥‥。


── 私も会社勤めとか、飛行機に乗ったりとかして、
   けっこう笑えるシチュエーションありましたね。


三木 「お客様の中で、お医者様はいらっしゃいますか」
   って呼び出したことありますか?


── ありますよ。
   毎回、いろいろ事件は起きましたから。
   トイレでコールベルが鳴ってかけつけると、
   血だらけのお客様が倒れかかってきたりとか‥‥。
   でも、三木さんの視点が、やっぱりおもしろい。


三木 ほら、あるじゃないですか(笑)。
   僕自身、特殊なことをやっているとは、
   思わないですよ。
   僕の視点は、僕がまず第1の客だと思ってるから、
   図々しくも。
   どうしても、そういう視点になっちゃうんですよね。
   「自分がおもしろがれることに、誠実になれるか」
   そのことにいちばん誠実なのが、
   『ダメジン』なんですよね。
   プリミティブに作っているから、そういう意味で。
   最近はどうなんだろうって自分で考えてて。
   でも、なるべく自分のおもしろいことに、
   立ち返るようにしないと。
   変な欲が出てくると、ダメなんですよね。
   全体がガラガラと崩壊して成立しなくなっちゃう。


   

── 変な欲って?

三木 「自分が良く思われたい」
   ということなんですよ。
   そういう欲との闘いになると思うんです。
   自分が良く思われたいと思うと、ダメなんですよ。
   結果として、そういうことなんじゃないかと。
   ストーリーとして、もう少しちゃんとしないと
   いけないとか、思ったりすることじゃないかと‥‥。
   「あれ? これ、ストーリーとしてどうなんだ?」
   と思い始めるとダメなんですよね。


── 『ダメジン』はストーリーとして、ちゃんとして‥‥。

三木 いないですよね。
   ストーリーを求めて来る方にとっては
   「何だろう‥‥」と思いながらね。


── 「何だろう‥‥」をいちばん狙ってますか?

三木 狙ってないんだけど、結果そうなっちゃう。

── 「何だろう‥‥」って残る。

三木 その「何だろう‥‥」に慣れてくれ、って、
   ずっと言ってるんですけど。
   なかなか慣れてもらえなくて。


── そうですか‥‥。すっかり慣れました(笑)。

三木 いまだに怒って帰る評論家の人もいたりね(笑)。

── よかったと思うのは、
   慣れたあとに『ダメジン』でよかったと。


三木 あ〜、それはプロデューサーも言ってました。
   『ダメジン』が最初に公開されなくてよかったと。
   『燃えよ、ドラゴン』の方が先に公開になってて、
   『ドラゴンへの道』が次なんだよね、
   プルース・リーの。


── そこですか。

三木 結果的には、そうなってる。
   大部、違いますけど(笑)。


   つづく。

次回はいよいよ、最終回。
ポイントは、

6. ユルいものづくりの現場が、気になる
7. オダギリさんが、なんか気になる
8. トルエンじゃなくてシンナー、が気になる

一挙公開です。
気になりますね〜。
お楽しみに。

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Special thanks to Director Satoshi Miki
and Unplugged. All rights reserved.

Written by(福嶋真砂代)

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2006-07-12-WED

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