OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.104
- Believe 1 -


自分の目で見る世界とは‥‥。
──『ビリーブ』


障がい者はできないのではない。
社会が彼らをできないと思って、
できなくさせているのだ。

(スペシャルオリンピックス創設者、
 ユニス・シュライバー夫人のスピーチより)


***

たくさんの元気をほんとうにありがとう!
という素敵な映画に出逢いました。

1月21日から公開される『ビリーブ』は、
「スペシャルオリンピックス世界大会・長野」
の映画を撮るために集まった、
“9人のクルー”を撮ったドキュメンタリーです。

この9人には、知的発達障がいがあります。

スペシャルオリンピックス(SO)のことは
こちらに詳しい説明があります。
知的発達障がいを持つ人たちが、
年間を通して参加するスポーツのトレーニングや
競技会すべてを指すので「オリンピックス」と
複数形になっています。
2005年2月には、長野で冬季世界大会が
開催されました。

過去に『エイブル』と『ホストタウン』という
スペシャルオリンピックスを舞台にした
ドキュメンタリー作品で、知的発達障がい者を
あたたかく見つめ続けてきた小栗謙一監督が、
こんどは「彼らと“一緒に”映画を作りたい!」と、
長野に乗り込み、
6カ月前からクルーと一緒に合宿を重ね、
『ビリーブ』という映画を作ったのです。

私は、2年前に『ホストタウン』を観て、
スペシャルオリンピックスの活動を知りました。
アイルランド、ダブリンでの夏季世界大会の
開会式には、U2のボノ、ネルソン・マンデラ、
モハメド・アリ、
アーノルド・シュワルツェネッガーが
サポートしている姿があり、
主役の知的発達障がい者のアスリートたちは、
じつに活き活きと自信に満ちあふれ、
輝いていました。

映画を観ることで、
自分の中にいままであった「意識のハードル」を
知ったことと、そしてそれはそのまま、
日本にある意識のハードルのようでもあること、
「彼らは決して特別じゃないんだ」と
ハードルが少しずつ取れていく感覚も覚えました。

そして今回の『ビリーブ』を観ると、
ハードルなんか軽く飛び越え、
彼らと「友達になりたい!」、いや、
「友達になってください!」と言いたくなりました。

それほど、彼らの息づかいを間近に感じ、
彼らの悩み、不安、驚き、喜びを一緒に
味わえるような、
ちょっと言葉がおかしいかもしれませんが、
「生きてる」彼らを等身大で感じることが
できる映画です。
そして、どんなひとも、間違いなく、
身体の底からムクムク、元気エネルギーが
湧いてくることをお約束します。

こんな素敵な彼らには、やっぱり会いたい!
じゃないですか。
それで、会いました、9人のクルーに。
うれしいことに、小栗謙一監督にもたっぷり
お話を聞かせていただけました。
その模様をプチ連載でお送りします。

寒い北風がびゅーびゅー吹いていた日、
彼らが取材を受けている部屋にそっと入ると、
ちょうどジュニアプレスのみなさんが、
インタビューをしている真っ最中でした。
「今回の経験をどのように生かしたいですか?」
「私たち9人は、初めはバラバラだったけど、
 ひとりひとりががんばって、全員ががんばれば
 なんとか映画ができるかなと思いました」
‥‥という、真剣そのもののインタビューが
行われていて、空気も張りつめていました。
張りつめすぎて、お疲れ気味なのか
クルーのみなさんは、ちょっと休憩が入りました。

(クルーとジュニアプレスのみなさん)

休憩を終えたクルーたちは、
口々に「こんにちは〜!」と
元気なあいさつをして
部屋にもどって来ました。

まず自己紹介をしあって、いよいよ
インタビュー開始です。
うまくいくかしら、ちょっと心配しながらも、
彼らの笑顔を見たとたん、楽しくなりました。
実際、不思議とあったかい空気が流れてて、
私自身、すごく心地よくて、
ワクワクしながら過ごせました。
ほんと不思議なパワ−の持ち主たち。

──自分たちが作って、自分たちが出ている
  この映画『ビリーブ』をはじめて観たとき、
  どんなふうに思いましたか?
  ぜひ感想を聞かせてください。


□勝又由貴さん(通称:会長)
自分を見てすごいなーと思いました。
気球に乗っていい気分でした。いい景色でした。

□川口弘樹さん(通称:リーダー)
小栗さん(監督)がこれを作ってくれたのが
ありがたいです。
厚かましいけど自分で、
「リーダー」とか言っちゃって‥‥。
映画が作れてほんとによかったです。

□増満伸朗さん
自分がいっぱい出てるなーと思いました。
雨の中をよくインタビューできたなあ、
小泉さん(首相)とのインタビューが印象的。
小泉さんはテレビと同じ感じでした。

□前原えりかさん(通称:サブリ−ダー)
録音をやったり、
がんばった自分が映ってました。
風が強くて、辛かった。
スチールカメラは重かったです。
でも、納豆パワーでがんばりました。

□宮崎亮太さん
みんなとよい映画を作るためにがんばりました。
小泉さんや岩崎(恭子)さんとか、
本人に会えてすごくよかったです。



□和田勇人さん
1時間41分(の映画を)見ると、
このときはこういうふうだった、
こんなことがあったと思い出しました。
いろんなスケジュールを
こなす場面が多かったです。
エンディングテーマの曲も映画に合う、
きれいな音楽だと思います。

□渡辺元さん
‥‥映画に出てよかった。
(と、口が微かに動いたと思います。)

□下池健一さん
映画に出ちゃった!
いまでも信じられない、感じです。
気球のところがよかったです。

すると、由貴会長が合いの手を入れました。
「気球に乗りたいは○、乗りたくないは×」
でした。
(気球に乗る前日に、
 監督がみんなの意志を
 紙に書いてもらいました。)

□平山浩二さん
気球は乗ってないです。
俺、恐いのはイヤなんです。
朝は早いし、飯も食えないし、
軽井沢(合宿)は晴れててよかったです。
長野は、寒くて凍えそうでした。
寒いのは苦手ですね。
けんかはするし、寒いし。

(平山さんは、映画の中でも、
 後ろからニコニコとクルーを見守って、
 必要なときにはさっと手をさしのべる
 やさしいお兄さん役でした。
 このときも、本音を言いながら、
 みんなを笑わせてくれましたね。)

──気球に乗った人は?

(宮崎さん、増満さん、川口さん、
 由貴ちゃんが 手を上げてくれます)。

── ありがとうございます。
  どんな気持ちでしたか?


□宮崎さん
少しずつ上がって、下の人が小さくなって
楽しかったです。

□増満さん
俺、高所恐怖症なんだけど(笑)、
克服できました。

□川口さん
上から「ホストタウン」が見えたのが
よかったです。

□勝又さん
最初は不安で不安でしたが、
景色がとてもきれいで
下の人が小ちゃかったです。
カメラを落とさないかと心配でした。

クルーたちは、
映画の撮影中よりも、終ったあとに、
急激に仲良くなったらしいです。
誰かがついつい長い話をしてしまっても、
じっと聞いていたり、
ときには「おいおい、大丈夫か」
と声をかけたり、
お互いに気を遣い合って、思いやる、
まさに「ナカマ」になっていました。

映画の中でも、
彼らは持ち味を存分に発揮していますので、
しっかりチェキしてください。

さて、次回から、
小栗謙一監督のお話をお届けします。
映画『ビリーブ』が伝えたいこと、
「ビリーブ」って本当はどういうことなのか、
を聞いてみたいと思います。

お楽しみに。

★★★
ただいま、彼らの撮影した写真展を
開催中です。お早めにどうぞ!

Believe〜僕ら9人の写真展〜

1月17日(火)〜25日(水)
(10:30 - 19:00 最終日は15:00)
コニカミノルタプラザ ギャラリーA
Special thanks to nine wonderful crews,
director Kenichi Oguri
and Moviola.

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メールの表題に「まーしゃさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2006-01-20-FRI

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