OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.99
- peau'd ane and TIFF2005-


第18回東京国際映画祭、はじまりました。

こんにちは〜。

実はたったいま、
中国のチャン・イーモウ監督と高倉健さんが
六本木けやき坂のレッドカーペットを颯爽と歩く姿を
拝見して帰ってきたところです。
高倉健さん、かっちょいい〜〜。
まだドキドキしてますが、余韻を楽しみつつ、
いよいよ本日から「第18回 東京国際映画祭」です。
去年もこちらでちょこっとレポートさせて
いただきましたが、
あれから1年、いや〜早いです、月日の経つのは…。

チャン・イーモウ監督といえば、中国の巨匠監督。
ついでに言うと、
『HERO』で、私の心に爆弾を落としてくれた監督。
映画という世界に強烈に引きずり込んでくれた監督。
あれはタイミングってものだったと思うけど、
それにしても“運命の人”が目の前にいると思うと、
ますます動悸が激しくなり、
足早に麻布十番の商店街を走って帰ってきました。

今年、映画祭のオープニング作品は、
チャン・イーモウ監督『単騎、千里を走る。』
(高倉健さんが主演です。)
不治の病に侵された息子に代わって、
京劇「千里走単騎」の撮影のために中国の奥地へ赴く父。
息子との長年の確執があったけれど、
中国の素朴な人々との交流をするうちに
父の心が優しく溶けていく、
というようなお話らしいです。
またまたヒューマンな感動が味わえそうで楽しみです。
今年の映画祭は、アジアへの想いをさらに強く感じる
ラインナップになっています。
さっそく今日観てきた『モンゴリアン・ピンポン』、
これはすべてにおいて、もう最高です!
みなさんはどれを観ますか?

●ジャック・ドゥミ監督と『ロバと王女』

ところで話は変わりますが、その東京国際映画祭では
『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』
で有名なジャック・ドゥミ監督の没後15周年記念する
特集もあるんですね。
ドゥミ監督の『ロバと王女』は、1970年製作の
フランスで大人気だった“幻”の作品です。
このたびデジタルニューマスター版で復元されて、
もうすぐ(10月29日)日本公開になるというので
ワクワクしてます。
横浜フランス映画祭で観てから、
美味しいお菓子がいっぱい詰まっている綺麗な箱を
プレゼントしてもらったような、作品のスウィートさと
その豪華さに惚れ込んでいたので、とてもれしくて。

『ロバと王女』という楽しいタイトルの映画は、
原作がシャルル・ペローの童話『ろばの皮』。



お話は、「父が娘に恋をした、さあ大変!」
みたいなちょっとタブーでブラックな物語だったりして。
逃げる娘(姫)は父(王)が大事にしていた
“黄金を産むロバ”を父に殺させ、
そのロバの皮を被って父から逃げるという、
オトナ向けなお伽噺です。
もちろん、お約束の白馬に乗った王子
(ここでは赤いタイツのジャック・ペラン王子)が
現れて姫を救うという定番のお姫様ストーリー。


Peau D'Ane?ine-Tamaris

見どころは、
夢のように甘く甘く、とろけそうな香りがしそうな、
美しくて心地のよい映像。
カトリーヌ・ドヌーブ、ジャン・マレー、
ジャック・ペラン、デルフィーヌ・セイリグ
という豪華キャスト。
ドゥミ監督作品に欠かせないミッシェル・ルグランの音楽。

公開当時、フランスでは大人気だった作品だけど、
フィルムの劣化で再上映されることがなく、
“幻の傑作”と呼ばれていたそうです。
「もう一度観たい!」というフランスファンのリクエストと
若い世代の人にも観てもらいたいという気持ちが高まり、
ドゥミ監督夫人で、やはり映画監督の
アニエス・ヴァルダが監修をして、
息子のマチュ−・ドゥミ曰く「ファミリー企画で」
仕上げたデジタルニューマスター版だそう。

マチュー・ドゥミ監督に会いました。

実は、6月の横浜フランス映画祭のときに、
ドゥミ監督の息子のマチュー・ドゥミさんに
お会いすることができたので、
『ロバと王女』の公開にちなんで
そのときのとっておきのお話をご紹介します。



横浜のインターコンチネンタルホテルで待っててくれた
赤いジャージが似合うマチュー・ドゥミさんは、
お疲れなのかちょこっと眠そうでしたが、
「時差ボケはないよ」とニコリ。
子どものようなかわいい笑顔で迎えてくれました。
33歳。若く見えますね〜。
ジャック・ドゥミとアニエス・ヴァルダの息子で、
アニエス監督作品の『カンフーマスター』(1987)で
俳優デビュー。15歳でジェーン・バーキンと共演。わお!
(バーキン演じる親友のお母さんとの恋のお話)
その後、数多くの作品に出演しますが、
1999年には監督として、短編映画『Le Plafond(天井)』を製作。

今年の横浜フランス映画祭では、
第2作目『しくじり』を観ることが出来ました。
これは、お父さんの影響がかなりある!と感じるような
ブラックユーモアや風刺の精神がこもった、
笑いのセンス抜群のショート作品です。
このことについても伺いたいなと思って、
監督を質問攻めしてみました。
眠いときにあまり考えたくないような質問だったかも…。
ちょっと反省しつつ、でも楽しいひとときでした。
マチューも『ロバと王女』の復元作業には
かなりがんばったということなので、
みなさん、ご鑑賞の際には、
ぜひ息子マチューさんを思い出して観てみてくださいね。

●インタビュー、マチューにせまる(笑)。

デジタルリマスター版の製作の動機は?

製作企画自体は2002年に始まっていますが、
修復が終って新たに公開されたのは2003年です。
観客の要望が多く…フランスでは『ロバと王女』は
大変人気のある映画で大人から子供まで
人気のある作品です。
ところが新たに公開するとなるとネガが痛んでいて、
いい状態ではないということで、
修復が必要だということで
リマスタリングすることになりました。

これは家族がらみの企画になります。
分担は、全体の監督はオディアールという編集者、
家族の友人で、両親と何作か仕事をしてきた人です。
母のアニエス・ヴァルダは、映像を担当。
パリにあるエクラルという現像所で再現作業をしました。
姉のロザリーは音響の担当。
ロザリーは音だけじゃなくてDVDのブックレットも
担当しました。

アニエスがDVDにたくさんのボーナストラックを
盛り込みました。
が、いちばん大事なのはネガの修復と音声の再現で、
映像と音声修復にあたってはアニエスと
相談をしながらやりました。

難しかったところは?

長いということ。
映像を修復することは手間がかかる仕事で、
時間がかかります。
つまり映像を1コマ1コマ修復する必要があります。
ですから痛んだ部分を修復するのは大変時間がかかります。
それだけ苦労した甲斐がありました。
色彩は素晴らしいものになり、
当時のネガとおりの映像になったと思います。

映像は当時のものを再現していますが、
音声は新しく入れ直し、モノラルからステレオに切り替え、
今の音声に必要な基準を満たすようにしています。

小さい頃、童話をよく読みましたか?

『ろばの皮』以外の童話は、実はあまり知らないです。
お伽噺よりは映画と共に成長しましたから。

お父さんの影響を感じますか?

父の影響はもちろんあります。
子供のころから何度も何度も父の映画を観てきました。
特にミュージカル作品は子供にとって、
とてもとっつき易いものなんですね。
自分の好みとして、架空のフィクションを
好むようになっていったと思います。
特にスタジオで撮影していくものが好きです。
僕が好きなのは、必ずしも現実主義な映画ではない
と思います。

監督業について。
自身のショート作品『しくじり』についての
思いを聞かせてください。


とにかく自分の大切にしたいものは
語ろうとしなくても映画に現れると思っています。
『しくじり』は短編作品の2作目です。
いまは長編作品に向けて模索している最中です。

『しくじり』にみられるブラックユーモアの起点は何?

この短編作品では、いまの社会が
どこまで高度化されているか、
社会に適応できない人に対して
どれほど厳しい社会であるかを、
テーマとして関心を抱いて作りました。

小さい頃のお父さんとの想い出や、
自分が夢中になっていたことは何ですか?
ゲームの「カンフーマスター」もやりましたか?


『カンフーマスター』も自伝的です。
ジェーン・バーキンと映画をやろうと思っていたときは
ゲームに夢中でした。
他には、父からローラースケートを教わって、
夢中になりました。いまはやめましたけど(笑)。

映画制作にあたっていちばん大切にしていることは?
あるいはこれから作りたい映画は?


難しい質問ですね。
これから作りたい映画は、
「クリエーションとクリティック」を扱いたい。
これからは長編の製作準備をして、
自分の子供時代をテーマに描いてみたいです。
これは第1作目のテーマになっているものです。
そちらはイントロ的なので、掘り下げていきたいですね。
それと、俳優としてのキャリアも続けていきたいです。

日本の映画で好きな映画は?

最近観た映画では北野武監督の『座頭市』です。
現実離れしているけど、詩的で、感動的な話でした。

日本の時代劇は好きですか?

北野武作品が好きですが、時代劇も好きですよ。
****
マチューさん、merci beaucoup!

というわけで、『ロバと王女』は、
Bunkamuraル・シネマで10月29日から公開ですが、
それに先行して、
「ジャック・ドゥミ没後15年記念イベント」が
開催されます。
お見逃し、お聞き逃しなく!!

どれも素敵だけど、特に、野崎歓さんのよどみのない
楽しいトークをぜひ聴いてください。
野崎さんは、東京大学助教授として
フランス文学を教えながらも、
香港映画をはじめアジア映画にも造詣が深い先生です。

今年出版された『香港映画の街角』では、
香港映画のおもしろさ、深さを教えてもらえて、
香港がとても愛しくなります。
そして今回は、本業のフランスのお話なので、
さらに先生の舌の回りが滑らかになること間違いなし。
ドゥミ監督の映画の魅力が倍増しますね〜。

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ジャック・ドゥミ没後15年記念イベント

10月27日(木)
イベント:村治佳織(ギター)&小沼純一(音楽評論家)
上映作品:『シェルブールの雨傘』

10月28日(金)
イベント:野崎歓(フランス文学者)&笛木健治(ピアノ)
上映作品:『ジャック・ドゥミの少年期』
『ローラ』『ロシュフォールの恋人たち』
ジャック・ドゥミの代表作の上映(ル・シネマにて)
音楽&トークイベントをドゥ マゴ の軽食とともに
楽しめるイベントです。
(Bunkamura B1F ドゥ・マゴ前広場)

チケット:
-映画鑑賞券 1000円
-イベント 3000円
-作品鑑賞+イベント 3500円
詳しくはhttp://www.tiff-jp.net/まで
※第18回東京国際映画祭関連イベントになります。

◆初日イベント
初日29日の11時の回終映後と、1時の回上映前に、
フルート奏者・山形由美さんによる
ミシェル・ルグラン楽曲の生演奏があります。


Peau D'Ane©Cine-Tamaris

あ〜、芸術の秋ですね!食欲も(笑)。
じっくりしっかり、お腹いっぱいに楽しみましょう。
東京国際映画祭のこともまた書きます。

では。
special thanks to Tokyo International Film Festival
and Tayo Nagata (Cetera International)

ご近所のOL・まーしゃさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「まーしゃさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2005-10-26-WED

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