OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.63
- QB is back! -


こんにちは。

今回はトランスコーディングを
1回お休みします…、というのはね。
ロボットのQBをもう一度、
ちゃんとご紹介したいからなんです。

インテリジェントなロボットへの
アプローチの話です。
それは、人工知能(AI)ってどういうふうに
生活に役に立つかのアプローチにも
つながっていくと思います。
後半には小熊くんのQBプロジェクト体験談も。

QBは、今までイラストや画像で
見せてもらってたりしたのですが、
実物をまだ見ていませんでした。
Pongちゃんは表情のある顔と、頭だけの
ロボットだったけど、QBは身体がある。
さて、どんなロボットになったんだろう?

実は、制作者の長尾さんがこの11月に
IBM 東京基礎研究所から名古屋大学に
移っちゃうというので、
「はれ〜!QB見とかないと!」
と、つきみ野まで出かけました。
「担当編集者は知っている」のつるちかさんと一緒に、
ゴトゴト、テクテク。

さっそくご対面。
こんにちは、QB。(ちなみにキューPじゃありません)

●対話型ロボットなんだよ。

ナガオ「QB、あいさつしてね。」
(PDA から無線で声をQBに飛ばします)
QB
「やあ、こんにちは。
僕の名前はキュービー。
シカクくてクロいから
キュービーって呼ばれているんだ。
よろしくね。」


私「よろしくねー。」
helloQB
winkQB 次は右目を閉じるよ。パチン!

(ちょっと見づらいけど、
左のパソコン画面にQBの顔が。
ここで、表情を制御できます。
まゆげ、まぶた、目、口が独立して動き
愛嬌のある表情を作ります。
なお、このパソコンはいつもは
QBのお腹の中にあって
QBを自動制御しています。
そして胸には、QBバッジがピカっ!)

ナガオ「QB、遊んで!」

QB
「じゃあ、クイズをしよう。
…(間)。
ところで、僕に関するクイズを出すよ。
僕の名前はQB。QBには黒い服があるけど
この服はなんでできているのかな?
次の3つから選んでね。

1、フェルト
2、備長炭
3、ゴム」


私「じゃあねー、備長炭!2番。」

QB「2番? ほんとかい?」

ナガオ「多分、ホント。」

QB「…(間)、びっくり!大正解!」
(手が上下に動く)

ナガオ「あれー?合ってるの?備長炭じゃないだろ?」

私「ゲラゲラゲラ…。あーごめん、ごめん。」

というわけで、いきなり
プログラムミスが発生してしまったQB。
正解は「ゴム」だったんです。
ダイビングのウェットスーツ素材の
ふかふか柔らかいやつ。

ま、ご愛敬、ご愛嬌(笑)。
だって、「ロボフェスタ関西」でも
「うつくしま未来博」でも
がんばってデモをいっぱいご披露して
きたんだもんねー。
お疲れさまだね、QB。

さすがにこの後は、
センサマットの上を上手く歩いたり、
Webで検索した天気予報やニュースを
読み上げてくれたり。
QBのインテリジェンスを
ちゃーんと見せてくれました。

でも、いやにかわいい。生意気なところもね。
「お持ち帰り」したくなっちゃたなぁ。

長尾さんのQB構想は、
普段は部屋の中をウロウロ動き回っていて
人間が呼ぶと近づいてきます。
そして、人間の要求に応えて
Web上の欲しい情報を探し出し、
それを読み上げてくれるというような、
音声コミュニケーションを通して
人間に代って知的な仕事をする
対話型AIロボット

QBがネットワークにつながっている
ということが、とても重要なファクターであり、
PCや、PDAや、携帯電話などのような
今のコンピュータ機器に代わって、
『情報世界と人間をつなぐ
インターフェースロボット』
として研究中で、
もちろんこれからまだまだパワーアップする模様。

ナガオ 「QBは、外から触れたり、
プログラムを換えたり、
いろいろできるんですよ。
ゆくゆくは、人工知能の実験とか
トランスコーディングを使ったりとか
学生の教材としても使えるように
なるといいなと思っているんです。」

長尾さんとQBチームの学生研究員のみなさん(7名)の
愛情をたっぷり注ぎ込まれたオールハンドメイドのQB。
ハード部分はレゴ・マインドストームを使用。
モーターが首、足、腕、顔で動いていて、
その分なかなかバッテリー消耗が激しい。
それは今のロボットの宿命なんだよね。
哀しいけど。

そして、もちろん、Pongちゃんから継承された
べらんめぇ口調。
「あー、ぜんぜん、違うぞー!」とか、
「おめぇの負けだよ!」と
威勢のいい言葉を吐く珍しい生き物(じゃないけど)
なんだけど、茶目っ気たっぷりでなんか憎めない。

長尾さん曰く
「QBは身体より頭なんです。」

ん?どういうこと?
「つまり、身体の動きを追求している
ヒューマノイドと呼ばれているような
ロボットや、動物を模倣したロボットとは
めざすところが違っていて、
QBは、人間の頭脳のシクミに注目している
ロボットなんです。
だから、人間の頭脳労働を助ける。

例えば、単純な計算でも
それを人間に1万回やれっていうと大変だけど、
ゴメン、ゴメン、やっぱりそれ100万回だったよ、
とコンピュータに言ったとしても、
コンピュータは「嫌な顔せずに」
やってくれるでしょ?
それと同じように、そういう単純だけど、
やっかいな仕事はロボットに任せて
人間はもっと創造的なことに時間を使うのが
いいんじゃないかな」と。

「でもこりぁ何だ?みたいな
ちょっと異質な感じだよね、QBは。」
とボソっとつぶやいたりも…。
(ふふ、ルックスのことだろうか…。)

それにしても、QBの本質的なところを伝えるのは、
なかなか難しいんだよね。

そんなQBに会うチャンスがあります。
「ロボフェスタ神奈川」
11月23日から25日までです。

QB、がんばれ。

ところで、「ほぼ日」のこのコラムで
QBプロジェクトに参加しませんか?
と、前に呼びかけてみたところ、
長尾さんのところには、遠方からとか
社会人の方とかから熱いメールを
いただいたそうなんです(知らなかったよ)。
メールを下さったみなさま、ありがとうございました。

今はQBはクローズドな研究だけど、
この先、オープンな研究として
いろんな情報をネットワークでシェアしながら
QBを育てるようなプロジェクトにしたいと
長尾さんは考えているそうです。
そのときにぜひ参加をして下さい!とのことです。
どうか、またよろしくお願いします。

●オグマくん

そして、見事、長尾さんから
「来て下さい」メールを受取った大学院生、小熊くん。
「名古屋まで連れて行きたい」とまで
長尾さんに言わせた小熊くんはどんな方でしょう?

ということで、メールインタビューしてみました。
青い文字が小熊くんの回答です。

ありきたりな質問ですが、小熊くんは
なぜQBプロジェクトに参加しようと思ったの?


それはなんといっても、「面白そうだったから」です。

以前に日経エレクトロニクスで
AIBO の開発秘話みたいなのを読んで、
「ロボット面白そうだな」と漠然と思ってたんです。

そしたらある日、何かの拍子で、
インターネットの検索結果に
このページが引っかかり、
ちょうど QB のお手伝いを募集してる回でした。
そこで、まーしゃさんの
「おもしろいと思うなー。
私が学生だったら、絶対参加したいっ!」
という一言に、コロッとやられたというか、
その気にさせられたというか(笑)

さらに募集内容をみてみると、
「ロボットの製作に興味がある?」
-あるある!
「人工知能に興味がある?」
-ありますよー
「自然言語処理(特に対話)に興味がある?」
-ちょっとだけある
「Java プログラミングが得意?」
-プログラミング大好き!
「大学の研究室とはちょっと違うことがやりたい ?」
-やりたい!
「ハンダ付けなど工作が得意?」
-得意じゃないけど、できるよ
てなかんじで、もう、すっかりその気。

しかし最初は、
IBM でやってる研究だってことに気づかず、
とにかく面白そうだからボランティアでも
いいからやらせてくれ、と思って応募しました。
その時は、大学院を卒業する前に、
自分のひとつの経験というか、
もしだめでも思い出になればいいか、
ぐらいに思ってましたね。

で、長尾さんとこにいく前の日に、
地図を見て、初めて、
「おぉ〜っ、IBM だったのか!」って。

そこからだんだん、話が大きくなってきたというか、
めくるめく急展開でめまぐるしい日々を過ごし、
いろんな経験をしていく中で、しまいには、
このほぼ日のページに登場するまでに
なってしまいました。

「面白そうだから」と首をつっこんでみたことが、
予想以上に「面白すぎる」ことになって、
本当に運が良かったと思います。

これまでロボットを作ったことはある?

まったくないですねー。
プラモデルのロボットも作ったことなかったです。
でも、レゴブロックだけは
物心ついたときからずーっと、
中学生くらいまで遊んでました。
今も実家にあると思うんですが、
押入れのどでかい収納ケースに
あふれるくらいレゴを持ってて、
4畳半の子供部屋いっぱいに
広げて遊んでました。妹や弟と。
だから、QB にマインドストームが使われてるのを見て
ググッときましたね。(笑)

QBプロジェクトを経験してみてどうだった?
難しかったことや、おもしろかったこと、教えて。


やっぱり、プロジェクト、というくらいだから、
同じ目標に向かって取り組む仲間というか
チームメイトがいて、それが面白くもあり、
難しくもあったことです。

いままでは、大学院での研究にしても、
全部一人でやって来たので。
プロジェクトチームなんて、
会社に入らないと経験できないだろうなーと
思っていました。

AIBO のもそうだったんですけど、
成功物語みたいなのを読むと
やっぱりチームで取り組んでるのが
多いじゃないですか。
みんなで大きなものを作り上げていく
という過程にあこがれを感じていました。

チームでやると、
やっぱりできることの範囲がものすごく
広がりますよね。

逆に、コミュニケーションの難しさなどは、
プログラムのコードひとつ変更するだけでも
いろんなところに影響を与えることもあって、
大変といえば大変でした。
でも、それはわかっていたことだったので、
苦痛ではなかったですね。

小熊くんにとってQBの魅力は何?

ロボットとは思えないくらい、愛嬌があることかな。
目とか眉毛とかがクリクリって動いたりするところ。
それはプログラムされた愛嬌のはずなのに、
なぜかほほえましいんですよね。
QB を作りながらずーっと
見てるのに飽きないです。
それから動作の一つ一つが危なっかしくて(笑)
親心がくすぐられます。

そのくせに、
なかなか頭がいいようなそぶりを見せる。
そういうギャップもいいなー。

まあ、ひとりよがりというか、
自分が作ってるからという
だけのことなのかもしれませんけど。

1日目にサイゼリアで長尾さんにごちそうになって
辞められなくなったって、ホント(笑)?


食べ物の恨みは一生・・・いや、間違えた。
食べ物の恩は大きいですね。
僕のようにいつも空腹な貧乏学生には(笑)

まぁ、それは冗談として、
長尾さんには食べ物以外にもたくさん
お世話になったので、
その恩義は感じています。

これからやってみたい研究は何ですか?

そうですねー。

長尾さんの影響を受けたのと、
QB を見てて思ったのが、
人間とロボットとのインターフェースを
研究してみたい、ということです。
人間同士だと、
インターフェースとしていちばん簡単でしかも
重要なのって声だと思うんです。
だから人間とロボットも、
声によってコミュニケーションを
する時がいつか来ると思います。
今でも一応、
コミュニケーションの真似事はできてますが、
なんか不自然。

QB にしても、
QB 自体はトランスコーディングと人間との橋渡し
というような存在なので、
Web のような"書かれた情報"を扱うのがメインで、
音声の入出力に関してはまだまだ知的ではないです。
書かれたものにアノテーションがあってはじめて
トランスコーディングできるわけですが、
人間が発する声にその場で
アノテーションするわけにはいきませんから、
今の QB はある程度決まったパターンでしか
会話ができないのです。
そこを克服したい。
それはすごく難しいけどやりがいはあると思います。
面白そうだと思います。

目標はチューリングテスト合格かな?(大きく出たぞ)
でもチューリングテストは
文字で会話するんでしたっけ?

-------------------
ふーむ。
小熊くんと長尾さん、そしてQBとの出逢いは
大きかったようですね。
それに、チューリングテストは
人工知能と人間の知力の勝負。
QBも挑戦するか…?楽しみです。

「一人で何かをしようなんて考えてないから。
人と力を合わせることはすごく大切。
それが僕は楽しいんです。」と、
長尾さんはよく話してくれるのですが、
まさに「チーム力」というものを
小熊くんも経験したのですねー。
これから何かプロジェクトをやってみたいと
思ってる人にも、とても参考になるね。

それにしても、私も小熊くんに来てもらって
本当にラッキーだったと思います。
インターネットのいいところだなー。
どうもありがとう!

-おまけ-
QBandNagao-san
お腹の中のパソコンを取り出して
調整をしてる長尾さんと
「きゃーっ!」
ヌードのQB。ナイスバディ!?
お腹の中央にスピーカが見えます。
モーター類もいっぱい入ってます。

次回はまたトランスコーディングに
戻る予定です。QB、またね。


marsha

2001-11-15-THU

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