OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.60
- deep sorrow on web -


United Airlines のサイトは
ロゴマークを黒く変えて
Chairman James E. Goodwin 氏の
今回のテロ事件の犠牲者となった
乗客と乗員への最大限の哀悼と
遺族への深いシンパシーの言葉。
それから出来る限りの対策についての
お知らせがあった。

American Airlines のサイトも同様に、
Chief Executive Officer Don Carty氏の
哀悼の言葉と、対策についてのお知らせと
まずどんな情報も
FBIに最初に報告する義務があることも知らせていた。
いろんな情報を即座に公開できないことへの
説明だろう。

遠い海の向こうで起きた悲惨なテロ攻撃。
だが、インターネットは距離を越える。
身近な出来事として、私の皮膚や内臓にも
その恐怖と切実さが迫ってくる。
私の中に起こっている激しい悲しみと怒りは
本質的にどこから来ているのだろうと
心の中とサイトをトレースしてみた。

残虐極まりない犯人への怒り。
「文明の衝突」と言われる
一部のイスラム世界対アメリカの
果てしない闘いの構図へのやるせなさ。
犠牲になった人々の一瞬で壊されてしまった
日常への想い。
理由は限りなく湧いてくるが、
どれも私個人の怒りの根源なのかというと
少しずれているような気がした。

現在の私の日常であるITの世界に戻って
今回のテロ事件の犠牲になった
各関係サイトを旅してみることにした。
そして、ぶちあたった。
まず最初の衝撃だったところに。

それは「旅客機が戦闘機として使われた」
そのことだった。
単に民間機を乗っ取って民間人を犠牲にした
こと以上に、どうしようもなく悔しかった。
なぜなら、私も以前は彼らと同業者だったからだ。
ITの調査の仕事に携わる以前には、
空の上で仕事をしていた。

仕事を楽しみ、生活を大事にする英国人と一緒に
「密室」の中で仕事をすることは、
文化の違いを学ぶ良い機会だった。
空の上で笑い、泣いた。
あの仕事の空間。

毎年一回全クルーに義務づけられる
Safety Equipment Precedure(SEP)
という安全業務の再確認テストの時には
ハイジャック対策の講義も受けた。
乗務員としては、その時が来たら、
「抵抗してはいけない、
 何もアクションをとってはいけない、
 犯人を刺激してはいけない」
と 、FAAの厳しい面相の人が講義し、
過去の事例を分析したビデオを見て
全員肝に銘じた。

実際に湾岸戦争中も乗務した。
ヨーロッパは緊張の中にあった。
ヒースロー空港には戦車も配備されていた。
日が経つにつれてお客さんがだんだん減り、
400人近く乗れる長距離ジャンボジェット機に
たった3人しか乗らず、15人の乗務員で
それこそ至れりつくせりのサービスをした。

でも、旅客機が交渉の道具になることはあっても、
旅客機が戦闘機になるなんて
誰だって想像だにしない。

今でもお客として飛行機に乗ると
外見とは裏腹に
乗務がいかにハードワークかを知っているので、
恐縮して乗ってしまう。

会社や国は違っても、あの仲間と大事な空間が
武器になったことを考えて空(くう)を見つめてしまう。
武器が旅客機じゃなきゃよかったのかと
批判を受けるかもしれないが、
もちろんそうではない。
ただ私には特に嫌なことなんだと思う。

そして、WTCもペンタゴンも仕事場だ。
旅客機と同じ真剣勝負の仕事場だ。
仕事場に仕事場が突っ込んでいく。
そんな構図が実際に起こったのだ。
フィクションでもなんでもなく。

こんなローテクな戦略の攻撃による非常事態に、
一体ハイテクの世界はどう対処しているのか。
ITは役に立つのか?

ペンタゴン、つまり
Department of Defense(DoD)のサイトは
とにかく今回のテロ事件について
情報を山のように公開している。
同機関の犠牲者の名前、行方不明者の名前。
機能停止の機関の詳細など
どれも迅速な情報公開だ。

圧巻は、同じくDoDのページで公開している
「DoD News Briefing on Pentagon Renovation」。
ペンタゴンの建物の修復に関する対策会議が、
DoDで行われたようだ。
そこでのプレゼン資料が2つ。
1. 建物の崩壊の状態を克明に記録した映像
2. そしてプレゼンに使用したスライド
これ以上の機密情報は
もちろん公開していないのだと思うが、
これだけでもやはり、
新聞、TVよりも詳しく建物内部の崩壊状態を
DoDのアプローチとして知ることができる。
そしてこのミーティングの議論のやりとりも
詳細に掲載されている。

ペンタゴンの事実の冷静な分析力と
素速く積極的な対策を講じている姿勢が
強く現れている。

攻撃のショックにひるむことなく
ITを存分に利用しているようだ。
もっとも、何か別の戦略の下に公開している
ということもあるのかもしれないが。
世界の人々が平等にアクセスできるのは
確かではある。

でも、それに比べると
日本政府のサイトには、
マスコミの報道を越えるような情報は
今のところ見当らないようだ。

それから、WTCのがれきの下の生存者が
携帯電話を使って居場所を知らせていた。
しかし、位置情報システムサービス開始が
遅れていたために、
せっかく発信されたSOSの位置を
即座に追跡することができなかった
というニュースもあった。
サービスが開始されていれば…と本当に残念だ。

* * * * *

みなさんにもすでに情報は届いていると
思いますが、テロに便乗したサイバーテロや
ウイルスメールに注意するように
いろんなニュースサイトで呼びかけています。
私も今朝2通ウイルスらしきものを受取りました。
しばらくは注意するに越したことはないようです。

それから、テロ事件関連のインターネットの活用の
ニュースページはこちらにあります。
とても参考になりました。
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20010913206.html
http://japan.cnet.com/News/2001/Item/010912-2.html?mn

今回は雑感を書いたので文体が違ってしまいました。
ではまた。


marsha

2001-09-21-FRI

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