ポケットに『MOTHER』。
〜『MOTHER1+2』プレイ日記〜

8月29日 7番目の場所


たまに、
電車のなかでプレイしていて集中力をそがれないのか、
と訊かれることがある。僕も最初は不安だった。
けれど、やってみたらまったく問題なかった。
電源を入れて、ヘッドホンをつけて、
セーブしたファイルを選ぶだけで、
僕はあっという間にそこへ没頭できる。
立っていようと座っていようと、
座席に座っていようとホームで立っていようと、
僕はすぐにゲームのなかに自分を投影することができる。

ことに、ここ最近の集中力には自信がある。
我ながらどうかと思うほど僕はそこへ入り込んでいる。
そして、それはどちらかというとゲームのせいである。

物語は大きくうねり、
僕はそれに振り回されながらややうっとりとしている。
具体的にいうと、
ダンジョンおとこが登場したあとくらいから、
ゲームは僕を振り回し始めたように思う。

その日の深夜近く、終電に乗り込んだ僕は、
いつものようにバッグから
ゲームボーイアドバンスSPを取り出して電源を入れた。
グミ族の村から続くダンジョンへ潜る。
ここ数日、少しずつ攻略してきたダンジョンだ。
進みながら分かれ道の先をたしかめ、
本道を最後に残すように探索してきた
薄暗い洞窟のダンジョンだ。

どうやらそこに7番目の場所があった。

7番目の場所を守る誰かに挑戦するまえに、
僕はそのダンジョンのなかに
取り逃したものがないか慎重にたしかめた。
いくつもの横道を潰し、いよいよそこ以外に道はなかった。

ゆっくりと時間をかけて進んできた僕と僕の仲間は、
行きつ戻りつしているおかげで十分に成長している。
ほどなく、僕らはその番人を退けた。

進めば、そこは7番目の場所である。

以前に書いたように、
この日記はあらかじめ画竜点睛を欠く。
言葉を尽くしてその場所を描写したいけれど
僕はそれをしない。
ただ、7番目の場所は、とても綺麗な場所だ。
言葉を尽くして描写したくなるほど綺麗な場所だ。

その綺麗な場所でうっとりとしていると、
思いがけずつぎの展開が待っていた。
予想外にそれを味わったときの痛快さときたら!

うっとりしながら僕は液晶画面のなかに没頭し、
「や!」と思ったときには
すでに降りるべき駅を電車が通過していた。

終電に乗っていて、一駅乗り過ごすということが
いったい何を意味するかわかるだろうか?

僕は隣町の駅から戻る術がなく、
しょうがないからタクシーで一駅ぶん引き返したのである。
なにやってんだかな。

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2003-08-30-SAT


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