ポケットに『MOTHER』。
〜『MOTHER1+2』プレイ日記〜

7月30日 特別な数秒間を鑑賞する


ロールプレイングゲームでは、
しばしばキャラクターが「踊る」ように思う。
なにかの比喩や特殊な攻撃方法のようなものではなくて
ほんとうにキャラクターが
音楽に合わせてくるくると動き回り、
「踊る」ことを指している。
わけても2Dのロールプレイングゲームにおいては
それは、一度は必ず登場するといっていいくらい
馴染みのある演出の方法である。
最初にキャラクターを踊らせたのは
どのゲームだったのだろう。
『ドラゴンクエスト』の初期の何作目かだろうか。

もちろんそれは、
ステップを踏んだり腰をくねらせたりするわけではない。
なにしろ2Dのロールプレイングゲームにおいて
キャラクターはそれほど写実的に
描かれているわけではないので、
どうしても「キャラクターが音楽に合わせて
あっち向いたりこっち向いたりする」という
レベルにとどまってしまう。
いわばそれは、踊っているように見えるというだけである。

ところがこれがなんともうれしいのである。

自分が操作していた主人公や仲間のキャラクター、
あるいは決められた動きだけを
くり返していた街の人たちなどが、
数秒間、特別な動きを披露する。
たいていそれはゲームの中盤にあって
酒場やお祭り、結婚式などが舞台になったりする。
ちょっと風変わりな場所で、特別な音楽が鳴り、
キャラクターたちが特別な動きをする。
そういった特別な数秒間が僕はとても好きである。

『MOTHER』や『MOTHER2』にも、
そういう特別な数秒間がある。
どちらかというと、ほかのゲームに比べて
映画的な演出として作用しているように思う。
やはり僕はそれを眺める数秒間が好きである。

帰りの電車で『MOTHER2』を進めていたら、
ホームに降りたときにその数秒間が始まった。

「カモーーン! トンズラブラザーズバンド!」

深夜の人気のないホームを歩いていた僕は
思わず目の前にあったベンチに腰掛けて
ゲームボーイアドバンスSPのボリュームを最大にした。
はっきりと、それは鑑賞であったように思う。

完成度の高い「踊り」だった。
けっきょく3回も観ちゃったよ。

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2003-07-31-THU


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