ポケットに『MOTHER』。
〜『MOTHER1+2』プレイ日記〜

7月15日 茶色い草のたなびく野原で


なんだか知らないけど
電車がなかなか来ないことってあるもんだ。
けど、まあ、やることはあるので、ということで
例によって例の作業をはじめる。

待っている時間が長かったことがひとつと、
僕がそこの地形を把握してしまったことがひとつ。
それで僕は電車に乗り込むころには
茶色い草がたなびく山間の野原に着いてしまった。

進んでみるか、と考えた。

正直、レベルはもう十分に上がったと僕は感じていた。
青いスターマンや、歩く脳みそには苦労しなくなったし、
サイパワーが足りないと感じることもなくなった。
昔はこの山にずいぶん苦労したと思っていたが、
多少、記憶が増幅されていたのかもしれない。
死ぬほど苦労したなあ、と思っていたが、
いま歩くとそれほどでもなかったような気がする。

あとは、たっぷり時間が取れさえすれば、
さほど苦労することなく
聖なる山を登っていけるだろうと僕は思っていた。
今日がその日になってもぜんぜんかまわないだろう。

茶色い草のなかに一歩踏み出すとエンカウント。
羽の生えたトカゲのようなモンスター。
ひょっとしたら、オート戦闘でも乗り切れるかと思ったが
いちおう慎重にコマンドする。

手応えが、ある。

いきなりトカゲが火を吐く。
全体攻撃。ダメージは30前後。
しずくのペンダントを装備していなければ60ダメージ?

なんとか倒したが、痛手を負った。
体力回復して気合を入れ直す。
トカゲが複数で来たらサイブロックで封じ込めよう。

すぐにエンカウント。
前回苦汁をなめさせられたサソリ。けど、今度は1匹だ。
大事をとってパラライシスを試す。効いた。
けっこう堅い。何度か攻撃して倒す。

やっぱり、キツいぞ。
あんなにレベルを上げたのに。

どうやら、僕の昔の記憶は
ちっとも増幅されていなかったらしい。
ここはやっぱりタフな場所だ。

続いてエンカウントしたときに出会ったのは、
火を吐くトカゲの色違いだった。
それだけで僕は萎縮する。

昔のゲームは容量が少なかったため、
詰め込むグラフィックにも制限があった。
だから、同じ絵のモンスターの色を変えて、
もとのモンスターよりも強いモンスターとして表現した。
たとえば、ふだん出会うスターマンよりも
青いスターマンのほうが強い。
だから、色の違うモンスターに出会ったときは
十分に警戒しなければならない。

さっき初めて出会って苦戦したトカゲの色違い?

しかもやつらは群れを成していた。
ぞわぞわする感覚が電車のなかの僕を包む。
サイパワーをケチっている余裕はない。
攻撃と回復を繰り返しながら、
なんとか爬虫類の群を退ける。

ふー。

押し続けていたRボタンから指が離れる。
1歩ずつ、恐る恐る歩く。
ああ、ずいぶん久しぶりの感覚だ。
どうかエンカウントしないでくれと願うあの感覚。
昔、ダンジョンの奥はいつだってそうだったじゃないか。
地形を把握するために最短のルートを選んで歩く。
画面の端に、わずかに崖が表示されたのを見て引き返す。
あっちに分かれ道はない。どうやら、こっち。

懐かしいモンスターに出会う。
僕のお気に入りだった「くま」だ。
ただし、色が違う。深くくすんだ灰色だ。
ちぇっ、相変わらずにやにやしている。

一撃が女の子の体力を8割奪う。
危なかった、と、胸をなで下ろした瞬間。
連続攻撃。女の子へ。マジかよ。

女の子の名前が赤く染まる。
スーパーヒーリング!

どうなってるんだ?
あんなにレベルを上げたのに。
あざ笑うかのようににやつく灰色のくまを
なんとか退ける。回復。体力回復。

茶色い草のたなびく山間の野原。
すぐそばで凶悪なモンスターたちが
息を潜めているような気がする。
どっちへ歩いてもエンカウントしそうだ。

僕の乗る電車は目的の駅へ着いた。
僕は降りたが、そのままホームのベンチに座った。
家路へ着く大勢の人たちが僕の前を通り過ぎていく。

僕はそれどころではない。

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2003-07-16-WED


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