「ほぼ日」なりのリナックス研究。
リーナス・トーバルズの
インタビューもできそう。

第4回 開発者について。

(※リナックスを考えることで、
  これからの仕事のヒントを得たいなぁ、
  という企画の第4回になりました。
  今日は、開発についての現状を、
  ひきつづき、風穴江さんにうかがいます)


 「楽しくなくちゃ、仕事じゃない」
 「Linuxは破壊的存在なり」・・・。
 リナックス関連の話題の本の多くは、
 このような呼び文句からもわかるように、
 単なるコンピュータ関連本というよりは、
 仕事論や、価値観に深く関わったものが多いんです

風穴 リーナスもまだ31歳ですが、
リナックス関連の開発者は
20代が、ゴロゴロいるんですよね。

リーナス自身も高校の頃ぐらいから
プログラミングをやりはじめましたが、
たぶん、日本の高校生や大学生で、
彼のようにパソコンをやっているか、
と言うと・・・まだまだ、厳しいです。

工学部系の大学生でも、
自分でフリーソフトウェアを書いて
世界に発信できる人は、
ほとんどいない、のが日本の現状です。

アメリカでリナックス関連の
ハッカーに、取材で会ったりすると、
23〜24歳、そのあたりの年齢の人が、
ほんとうに、いっぱいいるんですよ。

日本だと学部を出たか出ないかの年で
こんなことをやっているのか、と驚きます。
木村 若いハッカーに会うと、おもしろい?
風穴 ええ。すごいです。
いろいろな人がいますが、
例えば、最近では有名人の、
ミゲル・デ・イカーサさんという、
メキシコ出身のハッカーがいます。

リナックスの中で、
GNOMEプロジェクトという、
「ウインドウズ系でも使いやすい
 デスクトップインターフェイスを作ろう」
という動きがありますが、彼はいま、
それをひっぱっているんです。
現在28歳の人ですけれども、
彼は、24歳くらいから有名でしたよ。

ものすごい元気で、
プログラマーとしての力もあるし、
何せ・・・話がでかい、と言うか。
木村 おおっ。「話がでかい」。
風穴 一歩間違えるとホラ吹きなんですけど、
でも・・・スゴいんです。

言ったことをほんとうに
やってしまうあたりが、すごい。
開発スピードが、ものすごく速い。


GNOMEプロジェクトは、
はじまってから3年めになりますが、
1年前とか2年前なら、
「ウインドウズを超えるような
 デスクトップ環境を作る」
と、いくら言われても、
「でかいことを言ってるなあ」
みたいに思っていましたが、
最近、もう、ちょっと、
すごいことになってますから。

それと、Gnumericっていう名前の
表計算ソフトがあるんです。
エクセルみたいなものですね。
彼はそれも2年前くらいから作ってますが、
「エクセルでできることは、ぜんぶできる」
と、いきなり豪語するわけです。

そうは言っても、
最初の頃のプログラムなんて、
全然だめなわけですよ。
1年くらい前とかの時点でさえも、
「エクセルのファイルで
 読み込めるもの、あるかなあ・・・。
 でも、その程度で、だめじゃん」
とわたしは思っていたのですが、
最近では、かなりうまく
読み込めるようになっているんです。

すごいスピードで、開発されていて。
木村 なるほど。
えーと。
そういう人のすごさは、
夢があるところだったりするんですか。
風穴 はい。やはり、
プログラムの力だけがあっても、
上を目指さないと、
止まってしまうところもあるし。

人を惹きつける
カリスマ的なところも、ありますよ。
・・・と言うか、彼はものすごい明るい
あの人に会うと、気が大きくなります。
木村 (笑)「気が大きくなる」って、
なんか、いいですね。
風穴 (笑)ラテン系の明るさがあるんです。
言っていたことをあとで考えると、
「そうは言うけど、そりゃ無茶だよなあ」
と思うんです。でも、彼は
多少スケジュールが遅れても、
着々と進めていくので、そこは
たいしたものだなあ、と思います。
木村 すごそうです。
風穴 ですから、
実はぼくはいま、リナックス関連で
「このプロジェクトは、まだできていない」
と、うかつなことを言えないんです。
もう、来週には、できているかもしれない、
というドキドキ感がある・・・。
そのくらい、ものすごいスピードなんです。
木村 開発者は、どういう生活をしていますか。
風穴 リナックス開発は、
個人で参加をできるとは言いましても、
最近では、リナックスに関わる企業たちが
優秀な開発者を、サポートしています。

「開発に専念できるように
 生活の面倒を見てあげている」

というケースが増えているので、
ますます開発のスピードがあがっています。

リーナス自身は、
トランスメタという
プロセッサを開発している会社
勤めていますから、リナックスと
ぜんぜん関係のない仕事もやりつつ、
リナックスのこともやっています
ね。
木村 こういう話って、
リナックスのことを知らなくても、
なんか、聞いてて、おもしろいですよ。
風穴 リナックスと言うと
欠かすことのできない開発者が、
アラン・コックスという人です。

リナックスって、常時、基本的には
2本並行して開発が進んでいるんです。

あるバージョン、例えば
2.4というものが出ると、
それは「安定版」と言われます。
そこには新しい機能はつけくわえないで、
不具合をどんどん潰していきます。
それが、ひとつの方向の開発です。

それと、その安定版をもとに、
次のバージョンを目指して、
どんどん機能拡張をしていく、
という「開発版」も、あります。
木村 それ、両方必要ですね。
風穴 リナックスの2.4、
とかいう言い方をしましたが、
ふたつめの数字が「偶数」だと、
「安定版」になるんです。
そこから、バグ取りをしていきます。
「奇数」だと「開発版」なんです。

ですから、
例えば2.0が出たとすると、
2.1が次の「開発版」ですよね。
その2.1がある程度かたまると、
2.2が「安定版」としてリリースされます。

このあいだの1月に2.4が出たところです。
開発版は、まだはじまっていないのですが、
もうすぐ2.5というのがはじまります。
リーナス自身は、主にこちらの
開発版の面倒を、見ているんです。
新しい機能をどう入れるかを、担当
します。

安定版の系列を主に担当しているのが、
さきほどの、アラン・コックスという人なんです。

ですから、割と、「欠かせない人」と言うか。

冗談ですけど、
「リーナスとアラン・コックスを
 おなじ飛行機に乗せないほうがいい」
と言われていますけれども。
木村 アラン・コックスさんの年齢は、
リーナスさんとおなじくらいですか。
風穴 わかんないです。
リーナスは青年っぽい顔をしていますが、
アラン・コックスは、ひげもじゃで、
カスミを食って生きていそうですから。
仙人みたいな感じですから。
彼はリーナス以上にシャイですから、
あまり人前で講演もしません。
でも、有名です。

アラン・コックスが、
「もうそろそろ、この安定版はいい」
と言ったら、その安定版も、
そうとういいぞ、と言うか。
木村 ふーん、そういう人も、いるんですね。


(つづきます)

 

2001-05-31-THU

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