KANA
カナ式ラテン生活。
スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。

【砂糖ひとつとってみても】


スペインにも、スターバックスができはじめた。
現在マドリーに、4店舗はある。
ふつうのバルなら
コーヒー1杯が1ユーロ(約125円)前後なのに、
ここでは2.5ユーロ(約310円)くらい。
お客さん入るのかなぁ、と思っていたのだけど、
いままで見たときはどこも大盛況。

で、昨日、ダンナさんと行ってきた。
スタバはじめてと言うのでからかうと、
「だって俺が日本におったときには
まだなかったんやて、スタバ……って言うの?」
と悲しそうな顔をした。
奴は1998年以降の日本を知らない。
そいつはからかってすまん、と真顔で謝った。

さて、コーヒーを受け取り、
砂糖やフレーバーの置いてある台へ移動する。
そこで久々に、ダイエット・シュガーを見た。
あぁ、あったあった、ダイエット・シュガー!
久しぶりに見たなぁ。


スペインのバルでふつうにコーヒーを頼むと、
エスプレッソが出される。
カフェ・オレでも頼まない限り、
カップはエスプレッソ用の小さなものだ。
なんちゅうの、ゆで卵がひとつ入るくらいの大きさ。
そしてソーサーには、砂糖の袋がのせてある。
これが、まず例外なく10g入り。
はじめてスペインでコーヒーを頼んでこれを見たとき
「あぁ、あったあった、10g入りの砂糖袋。
スリムな3g入りスティック・シュガーじゃなくて、
この重みのある10g入り。
そういえば昔はこれだったよなぁ」
と、とても懐かしい思いがした。

しかもこの、ただでさえ10gも入っている砂糖袋が、
1杯のコーヒーに2つ出されることも少なくない。
こうなるともう懐かしさを通り越して、
ええっコーヒーの砂糖溶解度を実験させる気ですか
いややっぱりどう見ても無理ですばい、
あるいはコロイド溶液になっても飲めと言いますか
いやどうか勘弁してください、
いまでも充分順調にスペイン飯で体重が増えていて
心ならずも振り返ればクラスにひとりいた
「陽気でちょっと物真似のうまいデブ」という
キャラクターになってしまっとるとですよ、
どうかこれ以上の糖分の摂取は勘弁してくらはい、
と後ずさりしてしまう。

もちろん、ダイエット・シュガーなんてものは
相当気取ったカフェにでも行かないと目にしない。
大声で喋りながら楽しそうに街を歩くおばちゃんたちの
実に見事に豊かな腰まわりを見れば、
まぁここはそういう国なのよねと合点がいく。
ちなみに、ケーキなどの甘さも半端じゃない。
「上品な甘さ」には、出会ったことがない、本当に。


それほど砂糖好きなスペイン人でも、
「日本人って、砂糖好きなのねー。
ちょっと私には信じられないわ。
本当?からかってるんじゃなくて?」
と、かんなり驚くことがある。

スキヤキ・パーティにて。
1.鍋で肉を焼く。
2.野菜を並べる。
3.砂糖を入れる。
「ウソ!砂糖を入れるの?」

肉じゃがが美味しいと好評で、レシピを訊かれる。
「調味料は酒、しょうゆ、砂糖」
「……砂糖?料理に砂糖を入れるの!?」
焼き鳥のたれにしても、同じ。
スペイン人にとって、
砂糖はあくまでデザート&カフェ用らしいのだ。

これがどのくらい気持ち悪いものなのか、
たぶん同じくらいだろうと想像しているメニューが
スペインにあるので紹介しよう。
それは、米の牛乳煮。
もちろんすごく甘くて、シナモン風味。
こちらではごく一般的なデザートで、
スーパーではダノン社などの製品が
ヨーグルトやプリンの横に並んでいる。
「米と牛乳……。オエー」
それが、私の感想。なんか給食を思い出すし、ダメ。
でもたぶん、料理に砂糖を使うのって
これくらい違和感のあることだと思うのだ。


一方は、コーヒーに添えられた砂糖の量や、
緑茶やウーロン茶や100%オレンジジュースにまで
砂糖が添えて出されることに驚く。
もう一方は、料理に砂糖を使うことに驚く。

砂糖ひとつをとってみても、この違い。
……おもしろかぁ!


カナ






『カナ式ラテン生活』
湯川カナ著
朝日出版社刊
定価 \700
ISBN:4-255-00126-X



ほぼ日ブックスでも
お楽しみいただけます。

もれなく絵はがきが届きますよ。

2002-12-11-WED

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