KANA
カナ式ラテン生活。
スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。

 
【(実は)これがラテン男だ!】

オラ!
サッカーのワールドカップ2002も、
もうすぐとなりましたな。
『万年ベスト8の無敵艦隊』というかんじの
スペイン代表チームも参加するので、
よかったら見てみてください。
ちなみに、エースはこんなひとです。

[FW] ラウル・ゴンサレス
・ レアル・マドリーのFWもつとめる、
自他ともにだいたい認めるスペインの顔。
かなり、かっこいい。
なのにどこか笑顔は自信なさげだし、
ここいちばんの勝負運がなくて
だいじなPKを外したりするし、
びっくりするくらい高い声なうえに早口。
胸の奥をキュウとさせるタイプ
(ミスチルの桜井くん型?)なので、
年下男に弱いおねえさま方、要チェックっす。

そうなのだ。
スペインに来るまでは、
「ラテン男」ってこんな要素だと思ってたのだけれど。

<ラテン男・5大要素>

・長い黒髪が汗で湿っている。
・チンピラ風のペラペラシャツを
胸の第三ボタンまで開けて着ている。
・エナメルの靴を履いている。
・愛の告白をしようとすると
「黙って。」なんて軽く瞳で制して
やおらバラをくわえたままで熱い接吻。
・愛する女のためならば
無言で闘いにおもむき、
胸に銃弾を受けて真っ赤な血を流す。
(胸ポケットにはやっぱりバラが一輪)

だけど実際には、このラウルのように
「母性本能くすぐり型」というか
「すんごいマザコン型」というか
「なんだかとっても女々しい」男ばかりだった。
だから、バラをくわえてもいない。残念。


まず、ヘアスタイル。
短髪率、ものすごく多し。
バリカンでくるくるにまるめたくらいの長さも
たっくさんいる。
(もちろん、野球部でも国見サッカー部でもない)
そして、ハゲも多い。
ハゲかボウズかわからないこともある。
どっちにしろ、出家僧ほどに短いひとが多い。
長髪なのはフラメンコ関係者くらい、かも。

次に、着ているもの。
ジャージ系、若者を中心に多し。
もちろん、ジャージとエナメル靴は合わせない。
たまにピッチリしたてろてろのシャツを着て
パツパツのパンツをはいていて
その組み合わせのセンス最高な男前もいるけど、
たいがい彼らは女性に興味がない。
ううむ、まっことこの世はままならぬ。

そんなことはどうでもいいのだけど、肝心の中味。
あのねぇ、これがとにかくもう、女々しいのだ!


まず、マザコン。
40歳になっても50歳になっても「ママァー!」。
まるでカツオが「ねえさん」に甘えるように
「なんで言ってくれなかったのさ、ママ!」なんて、
ええおっさんがおばあちゃんを責めちゃったりする。

高校生くらいの男の子が
ママと一緒に買い物する光景もよく見る。
さらに、たまに試着室まで同行して
「どう思う? ママ」
「いいんじゃない、ハビー。
でもさっきの服の方が、あなたずっと素敵よ」
なんてやっちゃったりする親子もいる。

先日、数人のスペイン男性と
いっしょにごはんを食べる機会があったので
「やっぱり、母親の料理が最高なわけ?」
と訊いたら、
20代の彼も30代の彼も
「もちろん!」と、予想以上のスピードで即答した。
そして、どの料理が最高に美味しいんだ、
それを食べに親戚みんなが集まって来るのさ、
そんな自慢が続くのだった。
ママとしてはうれしいけど、
彼女としたら、大変だよ、これ。
もし日本だったら、
(たとえそう思っていたとしても)
「ママの料理がいちばん!」なんて言った瞬間に
「きゃーっ、マザコン登場よーっ!」と
悲鳴非難の大合唱がわきおこるに違いない。


そしてマザコンなうえに、女々しい。
とにかく、人前でしょっちゅう泣く。

よく道端でカップルがケンカしているけど、
男の方がわんわん泣きながら
「なんでだよー。
なんでそんなこと言うんだよー。
俺、悲しいよぅー」
なんてグチグチ言ってたりするのを見ることがある。

そうそう、いま人気のテレビ番組に、
全国からオーディションで選んだ16人でレッスンして、
毎週ひとりずつ落としていくという
「ASAYAN」のようなものがあるのだけれど。
出演者は、ほとんど20代ね。
まず、オーディションに受かったときには
2メートルくらいまで驚異のジャンプをして
そのまま地面に倒れ込んで神に感謝を捧げ、
指輪にキスをしながら恋人に愛を捧げ、
ふるえる手で電話の番号を押して
「ママ!? ママ!?
ぼくだよ、やったんだ!
合格したんだよーっ!」
と、どたどたのたうちまわりながら
わんわんわんわん号泣。

あるいは、その週に落選する候補に挙げられたときには
みるみる涙が溢れてくる目を両手で覆い、
身体を「苦悩」のかたちに折り曲げて
足をぶるぶると震わせる。
隣に座っていた仲間が手を差し伸べると、
その手を両手でぎゅうっと握りしめ、
「きっとだいじょうぶさ」
という、まぁ明らかな慰めのことばに
いちいち涙しながらうなずくのだ。

そしてついに落選してしまったら。
スタジオに、両親(あるいは兄弟や恋人)などが
こちらもまたすでに泣きながら現れる。
彼はそんなあたたかい家族に走りより、
涙、涙でかたーく抱き合い、キスをする。
「ごめんね、ママ、だめだったよ」
「なに言っているのよダビー、
あなたは素晴らしい結果を出したわ。
ただ、たまたま今回は求められていたのが
違っただけのことよ。
あぁ泣かないで愛しのダビー。
あなたには才能があるわ。あなたは最高よ」
「ママァー!」

ううむ。


さらに、女々しいというか女らしいというか、
とにかくよくしゃべる。
バルでも道端でも電話でも、
恋人とでも男同士ででも
なにがなんでもずっとずっとしゃべっている。
スペインでは、
男という字を3つ集めて「かしましい」と
読ませたいと思うですよこれはもう。


まだほかにもいろいろあるのだけれど、
マザコンにしろ、号泣にしろ、おしゃべりにしろ、
あるいはちびっこと遊んであげたりとか、
とにかく屈託ない。
屈託なく、やりたいことをやっているのだろう。

どれも男らしくはないけれど、
まぁ人間らしいもんね。

とすると、
日本の男がちょっとくらいマザコン風だったり
泣いたりおしゃべりだったりしても、
「ラテン式ね」
と思って、そう責めるなかれよ大和撫子よ。

……って、やっぱりちょっと抵抗あるかなぁ。
ううむ。まっことこの世は、ママならぬ!

2001-12-28-FRI

BACK
戻る