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矢沢永吉、50代の走り方。

第3回 次の10年間のための、パスポート。







「後悔しない人生」なんて口じゃよく言うけど、
若いころはそんなのほんとは理解できない。
若いころっていうのは、
ほんと、永遠に生きていけるような気がしてるからね。

それが50歳ぐらいになってくると、
だんだん「わかるなぁ」と感じるようになる。
そんなことが感じられるところまで到達して、
なおかつ現役でステージに立てる。
今のオレはすごくラッキーだと思う。


  『アー・ユー・ハッピー?』(矢沢永吉・日経BP社)より





(※矢沢永吉事務所スタッフTさんへのインタビューです)


ほぼ日 Tさんは40代ですが、ご自身としては、
「50代になること」を考えますでしょうか。
具体的なイメージって、ありますか?

自分が50代になる時のことは、
まだわからないですが、
近くに矢沢がいますので、
たしかに、すこしは考えますね。

いま20代の人は、
自分が30代になることなんて、
きっと、考えられないでしょう?
「年とるのって、イヤだな」と思うだろうし。
だけど、そういう20代の人も、
30代のかっこいい人を一回見ちゃうと、
「あぁ、いいな」って感じるわけです。
ぼくから見る50代って、それに似たものです。

人生は早送りすることもできないし、
巻戻しもできないですよね。
1年が365日っていうのは、誰も変わらない。
そういう1日や1年をつみかさねていかないと
53歳にはならないし、一足とびには、
53歳になることができないんですよね。

だからこそ、将来に
「53歳って、いいよね」って
いい顔をして好きなことをやるためには、
がんばんなきゃいけないなぁ、と言いますか。

目の前にいる矢沢だとか、
お会いして話す糸井さんだとかが
ぼくにとっての53歳でして、ふたりとも、
「53歳って、いいんだよ」って言ってる。
そう言ってるなら、いいんだろうなぁとは思うし、
そういうことを言える場所に行きたいなとは考えます。
ただ、そういう場所に行こうと思うなら、
やっぱり、黙っていたらいけない。
それはわかるんです。

矢沢は以前、
「20代に頑張ったやつだけが、
 30代のパスポートを手に入れられるんだ」

と言っていました。
それは30代から40代に向かうことでも言えるし、
結局、その時その時を一生懸命に走っていないと、
50代の快適さって、ないと思うんです。
それは自分でも感じます。

20代にさぼったら、30代はないですね。
20代は、それはラクだし……いいですよ。
若いし、そこそこモテるだろうし、
しようと思えば、適当に遊んでいられる。
何もしないでも、日々は流れていく。

でも、それをひきずっていたら、
30歳40歳になった時に後悔するよね。
たとえば30代になって、はじめて
ほんとうに好きな人が目の前にあらわれた時、
「あぁ、二十代の時に一生懸命やっておけば……」
と思ったり
するでしょうね。

ほぼ日 Tさんも、実際この二十年弱ほど、
毎日、仕事仕事だったんですよねぇ。
「30代へのパスポート」
「40代へのパスポート」って、
実感しているだろうなぁと思いました。
ほぼ日の20代や30代の読者にとっては、
未体験ゾーンですので、
経験を重ねるという話って、おもしろいですね。

たとえば、仕事もずっとやっていると、
仕事の効率がいい人とか頭がいい人とかいうよりも、
「一生懸命さ」のある人と組んだほうが
何よりもほんとうにいい仕事をできる、

とわかってきますよね。

真剣にやっている人の仕事は、
たとえ未熟だとしても気持ちがいいし、
やはり、一目おく価値がありますよ。
一生懸命向かってくる相手は、敵として怖いですし。

それに、この世界でも、
「看板があるから」とか、
「誰かの名前をタテにしてうまく利用しよう」
という人って、実際に、
いつしか消えていきましたし……。

何よりも、一生懸命な人は、「逃げない」です。
ふつう、イヤな話が出てくると、
ほとんどの人が中途半端に逃げるじゃないですか。
たとえば、ぼくのいるところは
音楽の世界ですから、ミュージシャンたちと
全部が全部、うまくいくわけではないんです。
当然、あるミュージシャンに
去ってもらわなければいけない時だって、出てくる。

ほぼ日 それはそうですよね。
「あの人が去ってくれないと、まわりも腐る」
という時だとか。

でも、それをみんながわかっていながら、
誰もその役目をやりたがらないんですよ。
できることなら誰もそんな役はやりたくない。
でも誰かがやらなければいけないことで、
当然それはマネージメントの役割になるんです。
そんなイヤな話って、たくさんあって、
それは私生活でも仕事でもあるじゃないですか。
明らかに避けられないトラブルが出た時、
なあなあですますことも、できなくもない。
先送りしたり、ごまかしたり、ウソついちゃったり。
それは、イヤな意味での「オトナ」なら
できちゃうかもしれないですけれど。

そこを、一生懸命な人なら、
そこでやっぱり正面を向いていますよね。
自分がまちがっていれば、あやまればいいんだし、
相手が悪いと思ったのなら
「オマエが悪い!」と言わなきゃならないし。
……相手に「悪い!」とか、
みんな、言うのイヤじゃない?
でも、言わないと解決しないですよね、根本的には。


これは尊敬している人の受け売りなのですが、
「お金」と「時間」と「知恵」の
3つがあったら、解決できないことなんて、
あまりない、と今の時点でのぼくは、思っています。
でもその前提には、逃げないで
ぶつかっていくことの姿勢が必要なんですよ。

お金を出せば解決できることもある。
関係がこじれていても、時間が経てば、
「あの時は若かったよ」で済むこともある。
ただ、いろいろなことにおいて言えるのは、
きっと、ぶつからないことには
何も変わらないんじゃないかなぁ、ということです。
考えてみたら、ほんとにそうですよね。

矢沢永吉だって、
みなさんと同じで問題は山積みですよ。
インタビューで、次のように答えてました。
「問題、問題、問題が押し寄せてくるけど、
 問題来ました、それ片づけましょう。
 はいつぎおいで、問題おいで、ってやるしかない。
 邪魔があったら、とりのぞくしかない」って。

確かに、最初によけて通ったら、
次に歩く時にもよけて通らないといけないし、
「ずーっと死ぬまでよけて通るのか?」
そういう話になってくると思います。

だったら、目の前にある問題は向きあって片づけて、
そうすると、だんだん体力がついてきますよね。

最初は石コロのような小さな問題だったものは
どんどん大きな岩石のようになるもので……
ずっと逃げてきた人は、岩石になった時に、
その先に進むことができないんですよ。

戻るしかなくなってしまいます。

こういう考え方も矢沢からカラダで教わったんです。
だから当然、周りにいるスタッフも、
体力がつきますよね(笑)。

ほぼ日 なるほど。
ただ、当たり前のことですよね。
「明日でいいや」「あさってでいいや」
ってやってきたら、
後で汗をかかないといけなくなる。

夏休みの宿題だったら
量が決まっているからいいけれど、
実際の仕事は、片づく問題を片づけておかないと、
「あとでやればいいや」って思っていると、
そのうちに、それよりも早く
片づけなければいけない問題が、
いきなり空から降ってくる
もんね。

そうすると、早く片づけなければいけない問題が
一挙にふたつになってしまって、
どちらかがすごく遅れてしまって手おくれになる。
そういうことって、山ほどありますし。
逆に、目の前にあることをどんどん
片づけていく方向でやっていさえすれば、
もうそれはすぐに「片づいたもの」になるので、
先に進めるじゃないですか。



(※次回に、つづきます。
  「自分は、具体的にはこういう53歳になりたい」
  「このコーナーはこういうことを扱ってほしい」

  そうしたご意見やご感想などを、ぜひぜひ
  postman@1101.com
  こちらまで、お寄せいただけるとうれしく思います。
  のちのち、このコーナーで紹介していきますので!)

2002-07-08-MON


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