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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

デートのマナー その2
ハンバーガーの食べ方知ってる?

ジョージ で、その外人のゲイ二人、
座りましたぁ〜。そうすっと、
そういうお客には、
けっこう、機転の利くウェーターが
やってくるわけよ。パーッと飛んできて、
「今日は何にいたしましょう?」って。
そうすっとねー、彼ら、素敵だったよ。
いちばん最初に料理のメニューも
何にも見ないで、ワイン・リスト、開くんだよ。
つねさん うん。
ジョージ ほで、ワインを決めて。
つねさん よっく見てるねー(笑)。
ジョージ そう。それで、お料理はね、
ほんっとにメニューみないで、
「ハンバーガーはあるだろう?」って訊いたの。
ノリスケ うん。「当然あるよね?」ってことよね。
ジョージ そう。さらに素敵なのは、
一人は、ハンバーガーに、ケチャップが欲しい、
もう一人は、ケチャップはいらないけど、
塩コショウを多めにしたい、
ピクルスとマスタードが欲しいって旨伝えたの。
で、ワイン、スポーンと抜いて飲みながら、
前菜も何にもなしで、
ハンバーガーを出させたの。
ノリスケ なんて格好いいの!
僕にはできない。自信ないよ。
ジョージ でね、ちょっと話がずれちゃうけど、
ハンバーガーの食べ方。
どやって食べる? ハンバーガー。
その、絵に描いたような景色っていうのは・・・
ノリスケ そうだなあ、大きめのオーバル皿に、
ハンバーガー、フレンチ・フライ。
ジョージ そね。んで、それがやってきた時には、
どんなことがあっても、
まず一回、上のバンズを取るのよ。
つねさん 剥がす。
ノリスケ でも、最初っから剥がれてるのも、あるよね。
ジョージ それがね、良くないんだよ。
ノリスケ 良くないんだ。
ジョージ なぜかっていうと、
ハンバーガーのパテを冷まさないために、
焼いたバンズが上に乗っかってないと、いけないの。
ノリスケ そっかー。
ジョージ それと同時に、
バンズが上に乗っかることによって、
パテの余分な油を、バンズが吸うの。
ノリスケ なるほどねー。
ジョージ そすっと、バンズはバンズで、
油を吸って美味しくなるの。
だけど、それをそのまんま食べると、
水蒸気が溜まっているから、
ベタベタになるんだよ。
ノリスケ はい。
ジョージ だから、一回、目の前にやってきたら、
ハンバーガーの上のバンズを、取る。
ノリスケ うん。
ジョージ んで、取って、
自分の好きな味付けをすればいんだよね。
ノリスケ なるほどねー。
ジョージ で、彼らはね、
自分の好きなよーに味付けをして。
ノリスケ 片方は、ケチャップ塗って。
片方は、マスタード塗ったのね?
ジョージ そう。片方は、塩コショウ振って、
マスタードを塗って・・・
つねさん ピクルスを置いて。
ジョージ もう一回もとに戻しました。
どうします? そのあと。
ノリスケ え?
ダグウッド・サンドイッチみたいにかぶりつくの?
それとも・・・でも、
ナイフとフォークも来るよねぇ。
ジョージ そうなんだよ。
つねさん いちおう来るよ。
ジョージ ね? ナイフとフォークで、
まず半分に切るの。縦に。ワサッと。
ノリスケ こうやって、半月にするわけね?
ジョージ で、半分に切るやり方も、
上のバンズを軽ーくね、
親指と人差し指で押さえて。
ズレないように。
ノリスケ はい。エレガント。
ジョージ で、親指と人差し指の間に、
ナイフをこうやって滑り込ませて。
で、ピュッ、と押すと、
きれーに半分に別れるの。
ノリスケ あー。
ジョージ で、半分に切ると、
口の中にスッポリ入るわけ。
でも、半分に切らないと・・・
ノリスケ それこそダグウッド・サンドに
なっちゃうね。大口あけてね。
ジョージ ジュースが、ダカダカダカッて
出てっちゃって、奇麗じゃないしね。
んで、半分以上に切ると、また、だめなの。
4分の1とかに切ると、ばらけるし、
ハンバーガーの醍醐味っていうのは、
口で噛み切ることなんだよ。
ノリスケ あー。
ジョージ ハンバーガー頬張ると、
最初にフワフワッとした
バンズの部がやって来て、
バンズの部がなくなったと思ったら、
レタスと玉ネギの部がやって来るんだよ。
つねさん あ、そっちか。
ジョージ で、シャクッていったと思ったらば、
肉汁がダーーーッと出始めて、
バンズとは違う、柔らかさの部が、
やって来るんだよね。
つねさん ふんふんふん。
ノリスケ すてき・・・
ジョージ で、これを味わうためには、
真っ二つに切らないといけないの。
つねさん 半分なんだ。
ジョージ で、その外人二人は、
まさにその様にして、ハンバーガーを食べ、
ハンバーガーをおつまみにして、
ワインを飲んで。
ハンバーガー食べ終わったら、
フレンチ・フライに、
マスタードとケチャップを
たっぷり塗りながら、
二人でもってワインを1本、空けたの。
つねさん そうね。
ジョージ すごい。
ジョージ で、その間、60分。
ノリスケ うぉー。
つねさん 時間、見てたのね(笑)。
ジョージ んでね、これって、
すーごい贅沢な食事じゃん。
ノリスケ 贅沢ー。
ジョージ なにが贅沢って、
高級ホテルのメイン・ダイニングで、
いちばん安いものを食うんだよ。
で、しかも、いちばん安いけれども、
いちばん、自分たちが食べたくって、
美味しくって、手軽なもの?
お腹いっぱいになりすぎないものを食べて、
だけど、ワインを飲んで帰るんだよ。
ノリスケ ちゃんとね。
ジョージ うん。カベルネ・ソーヴィニオンだったの。
つねさん あ、そうだったー?
ジョージ うん。たぶん、
8千5百円くらいのワイン。素敵だよねー。
つねさん すごい。
ノリスケ しかも、安いもの食べるのにさ、
メニューを見ないわけだからさ。
ジョージ そう。
ノリスケ そこのプライドがあるわけだよね。
ジョージ メニュー見ないで
「ハンバーガーはあるだろう?」
って聞くんだよね。
値段は関係ないんだよ、
ってところからスタートしてるところが・・・
つねさん そうだよね。
ノリスケ 格好いいっ!
ジョージ そう。格好いいんだー。
それで、その二人は、お金を払わずに、
やってきた伝票に、サインだけして・・・
つねさん で、部屋に消えていった・・・
ジョージ んー。出口がね・・・
つねさん 違うの。
ジョージ そのダイニングは、
一般の出口と、
僕たちが座っているところの、
いちばん端っこ。
ここがね、客室の方にしか
行けない出口があるんだよ。
そっから、出ていくの。
失礼しちゃうでしょー?
ノリスケ 泊まり客だったんだね。
ジョージ でもね、ちょっとプリティな感じ。
ノリスケ 二人で、なに? なんだろう?
仕事? バカンス?
つねさん 仕事でしょ? あれ、たぶん。
ジョージ 彼ら? うん、仕事だね。
つねさん 仕事だよ、あれは。
ジョージ でね、絶対ね、あのー、
若い方、指輪してる子の方が・・・
つねさん だから、あの、ケビン・スペイシー崩れ。
ノリスケ でも、若いったって、
30代なんでしょ?
ジョージ 30前半だね。
その子がね、日本に来てるんだよ、出張に。
つねさん うん。はあー。
ジョージ それで・・・
ノリスケ 指輪してる、妻子持ちの方が、
子供は知らないけど、家族がある、らしい方?
ケビン・スペイシー崩れ。
ジョージ そうそう。それが、たぶん、来てるの。
日本に。お客さんなのよ。
ていうのは、ケビン・スペイシー崩れの方が、
上席に座ったから。
ノリスケ 奥の?
つねさん そ。
ジョージ 奥っていうか、あのー、
客席ホールを見なくていい、
プライバシーが完全に保てる方の・・・
ノリスケ 女優席ね?
ジョージ そう。僕が座ってる方。
いつも。あのー、上客は、
そっちの方に座らされるの。
つねさん あ、僕、知らなかった。
ジョージ そなんだよ。
つねさん そゆのがあるんだ。
ジョージ うん。で、もうひとりの、
本来年上である方が、
下座の方に座ったってことは、
若いほうがお客さんだから、
上席に座らせたんだよ。
つねさん ほぉー。
ジョージ で、しかも、サインしたのは、
若い方だから。
つねさん あー、そーなの?
ジョージ 彼が、泊まってるの。
ノリスケ 泊まってるんだ。よっく見てる(笑)。
つねさん 見てるねー! そこまで見なかったよ。
ジョージ で、年上の方は、東京に住んでるの。
ノリスケ あー。
ジョージ で、おそらく東京に住み始めてから、
まだ1・2ヶ月しか、経ってないの。
だから、それまでは・・・
ノリスケ それは、どうして分かったの?
ジョージ ん、まずね、英語が、日本に慣れてない。
ノリスケ あ〜。
ジョージ その、日本に長く住むと、
ネイティブ・スピーカーでも、
分かりやすかったり、ゆっくり喋るの。
ノリスケ 分かりやすい英語を喋るのね。
つねさん あ、確かに。速かったよね。
ジョージ そう。向こうの英語だった。
それとー、彼が食事のいちばん最後に、
トニック・ウォーターを取ったんですけど、
食後にトニック・ウォーターを
飲む習慣っていうのは、
日本に長らくいるとなくなってくるので、
おそらく。
つねさん あ、そっか。
ジョージ うん。日本に来て、
あんまり間がないんだと思います。
つねさん あ〜。
ジョージ で、そんなね、どゆのかな?
慣れた、慣れたカップル。
なんか普通とは違う、恰好いい、
横で見ていても格好いいカップルがいる、
すぐ後ろがね、
これがねぇ、日本人のカップルでねー。
ノリスケ うん。ででででで???
(つづきます)

2001-05-04-FRI

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