カレーの恩返し
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新宿二丁目のほがらかな人々。
SPECIAL!

マンハッタンに
「カレーの恩返し」を
かけちゃいましょ!
その3 
甘いもの最前線。
田中
そしてブラウニーがあります。
ジョージ
ブラウニーってすっごい売れるのよ。
ブラウニー、‥‥どう言えばいいんだろう。
日本人とアメリカ人って
お菓子、ケーキに対する嗜好がまるで違うの。
日本人て、やわらかい、口どけがよい、
あるいはパリパリしている、
食感が軽やかなものが大好き。
チーズケーキ1つとっても、
日本人が好きなベイグドチーズケーキは、
ふっくらとしていて、突然とける。
レアチーズケーキにしても、
なめらかでサラッとなくなっていくけれども、
ニューヨークチーズケーキはベトッ、重たい、
どっしりとしている。音で言うとボテッ。
“シェフ"/
チーズケーキ、最近ではニューヨークスタイルの
みっちりしたものを食べるようになりましたが、
ふわっふわでしたよね。スフレみたいに。
ジョージ
ニューヨークでスフレすら重いのよ。
“シェフ"/
ということはブラウニーは、
とってもニューヨークっぽいですね。
ジョージ
ちなみに、なんでベイグドチーズケーキであるとか
ブラウニーであるとかっていうのを
アメリカ人って重宝するかっていうと、
食後の時間をどれだけ楽しむか、
長引かせるかっていうのに命を懸けるの。
日本のように口どけのよいものを食べてしまうと、
あっという間に終わってしまう。
特にあの人たちの胃袋においては
またたく間に食事が終わってしまうの。
だから、日本のレストランって、
アイスクリームをものすごく売ろうとするけれど、
そんな感覚ではじめてアメリカに行ったとき
「アイスクリームください」って言ったら、
「子どもかよ」って言われちゃったの!
「だってすぐとけるだろう」って。
アイスクリーム食べたいんだったら、
ブラウニーの上にアイスクリームのっけてもらえば、
もつもんね、しばらく。
「食べはじめからどれくらいの時間、楽しめるか」
なのね。
“シェフ"/
それであんなに、みっちり硬いものばっかり。
ジョージ
ビスケットもそう、クッキーもそう。
みんな硬くてねっとりよ。
田中
そういえばそうです。
ジョージ
アメリカで、子育てしてて、子どもがぐずると、
チャンキーって噛みごたえのあるビスケット1つ与えて、
そうすると1時間静かになるんだよね。
子どもの口ではすぐ食べられないから。
日本で言うと、硬いせんべいを渡すと
静かになるのと一緒。
“シェフ"/
チュパチュパしてますもんね。
ぼくはかつおぶしの端っこをしゃぶってました。
あちらは甘いものがたっぷりですね。
ジョージ
ほら、こんなのがあるわよ。
「ドー’サン」。
「クロナッツ」の次は
「ドー’サン」って言われてるの。
田中
「ドー’サン」?
ジョージ
ドーナッツ・クロワッサン、略して「ドー’サン」。
“シェフ"/
「クロナッツ」がクロワッサン・ドーナッツですね。
ん? どう違うんだろう。
ジョージ
「クロナッツ」は揚げるのね。
「ドー’サン」はオーブンで焼くの。
そこにたーっぷり甘いものがかかってるのよ。
口どけはいいんだよね、ふっくらしていて。
でも生地はクロワッサンよ?
“シェフ"/
ドーナッツは揚げるけど、
「ドー’サン」は油で揚げないんですね。
ジョージ
そう。焼くんだけど、
そもそも生地に油がいっぱい入ってるから、
180度を超えた途端に沸騰がはじまって、
つまりはオーブンの中で揚げてるようなものよ。
カロリーだってちゃんと高いのよ。
田中
ありゃ。
ジョージ
お気をつけあそばせ。
でもこの「ドー’サン」のお店、
お酒とのマリアージュが楽しめるって書いてあるわ。
素敵ね、これ!
“シェフ"/
甘いものとお酒‥‥。
ジョージ
ニューヨークのマダムと呼ばれる人たちは、
ほんと暇でしかたがないの。
これまでのアメリカ人の歴史の中で、
暇でしかたがなかった歴史ってないのね。
ずーっと開拓をしていたし、
お金儲けに一生懸命で。
でも、ニューヨークとかロサンジェルスとか
サンフランシスコとか、大都市には
働かなくても昼の時間を持て余しているおばさんたちが
いっぱいいるの。その人たちはね、
ひたすらデパートに行くのよ。
例えばバーグドルフ・グッドマンであるとか、
ブルーミングデールズであるとか、
ニューヨークの伊勢丹みたいな所に行くと、
必ずカフェがあって、アフタヌーンティーやってるの。
絶対そのイメージよ!

あ! ポップバーが来る!
田中
スティックジェラートってあります。
ジョージ
スティックジェラートって、
基本的にガリガリ君だから。
“シェフ"/
そんなぁ。
ジョージ
ガリガリ君だから!
そもそもあの形状のアイスクリームって、
アメリカにはなかったの。
あったとすると、昔タッパウェアが、
ジュースを入れて冷やせばポップバーになる、
っていうのを売ってヒットして、
だからご家庭でみんなが食べるものであって、
売るものじゃなかったのよ。
でもポップバーは結構いろんなお店で始まった。
理由は、アメリカ人にとって冷たいお菓子は
アイスクリームであって、しかも、
おうちで食べるものなのね。
しかも、スーパーマーケットから遠くに
お住まいになってらっしゃるので、
乳脂肪分の高いアイスクリームでないと溶けちゃう。
しかもみんなで大量に食べるから。
バー状の一人前のアイスクリームっていうのは、
ほぼ需要がなかったのよ。
ところが、ニューヨークも
空前のエスプレッソブームで、
エスプレッソバーに行くと、
いろんな一人前のお菓子のようなものが並んでいて、
ブラウニーもあれば、カップケーキもあったりする中、
冷たいお菓子も出始めたの。
もともとは冷たいものを食べる文化がなかったのを、
スターバックスがアイスラテで大ブームを起こしたので、
人の口は冷たいものを求めるようになって、
ポップバーが売れるようになったのね。
“シェフ"/
しかもグルテンフリー、
オールナチュラルです。
田中
グルテンフリーはずいぶん聞きますね。
ジョージ
大流行りよね。
今回のポップコーン屋さんもグルテンフリーよ。
NON GMO(遺伝子組み換え食品不使用)だし、
ビーガンだし、ホールグレインだし、
すごいわぁ。
それから‥‥あら? ベルギーチョコレート?
“シェフ"/
を、ソフトクリームにしたお店です。
ジョージ
チョコレートフレーバーのソフトクリームに
ちょっとだけカレー粉かけると美味しいわよ。
サロン・デュ・ショコラでも、
クミンシードの香りのチョコレートってあるでしょ?
ってことはカレーだから。
ほんのちょっとだけかけたら絶対美味しいと思う。
“シェフ"/
やってみますやってみます!
ジョージ
SATCに出てブレイクしたサラべスキッチンはジャム、
ディーン&デルーカでも取扱のある
モーリスキッチンはシロップ。
このあたりのものっていけるの。
うちにもある。
田中
「手かげんしないしょうがシロップGOLD」
ライバルですね。視察しましょう。
ジョージ
ここのジンジャーシロップは美味しい!
“シェフ"/
美味しいんだ。悔しいなぁ。
ジョージ
アメリカのジャムやプリザーブの関係の上手なところは、
なめらかで、味がほのかで、日本人向けというか、
大量に使えるの。これがねアメリカのジャム。
食事の味付けは、ほとんどのものが強いんだけど、
調味料に関しては、
マヨネーズもケチャップも薄味なの。
これね、大量に使うからだと思うの。
だって、マヨネーズって、
このくらいの(ひとかかえもある)ジャグに
入って売ってるじゃない?
日本人の使い方だと、1年くらいもちそうな量よ。
でも賞味期限3ヵ月でしょ?
アメリカ人って、こうやって(おたまですくうように)
大量に使うから、1週間でなくなるの。
“シェフ"/
「エンパイアマヨネーズ」
っていうところがマヨネーズを出しますね。
ジョージ
エンパイア‥‥、知らない。ご免なさい。
“シェフ"/
遺伝子組み換え作物を使わず、保存料や着色料もゼロ、
ハッピーチキンの卵黄使用。
ガラス瓶にもこだわりが、って書いてあります。
ジョージ
ハッピーチキンの卵黄ね、
放し飼いの鶏のことをハッピーチキンって言うのね。
ハッピーチキンフライドチキンとかっていう
ムーブメントがあって、放し飼いの鶏を目の前で落として
フライドチキンにするっていうのを
やった人がいるんだけど、子どもは泣きわめくわ、
大変な状態で。理想と現実は違うのねっていう。
“シェフ"/
だいじなことですが、伝えるのが難しいですね。
ジョージ
あ! ハニーベイクドハム、これ美味しいと思う。
たぶん、豚のもも肉を、削ぎ切りして食べるやつよね。
これは美味しいはず!
“シェフ"/
ハニーベイクドってことは、ハチミツを?
ジョージ
そう、表面が甘いの。
香港のチャーシューみたいなやつ。
ちょっと甘くてクチャッとした感じ。
これ絶対、カレーが合う!
何しろ、一番最初に
ユダヤ人とイタリア人と中国人の料理って言ったけど、
次はインド料理があるんだもの。
インド人のコミュニティってすごいもの、ニューヨーク。
‥‥面白いのが、マンハッタンの先っぽには、
チャイナタウンがあって、
チャイナタウンのすぐ上に、
だんだんちっちゃくなってる
リトルイタリーがあるんだけど、
なんでここに中国人とイタリア人がいるのか、
っていうと、すぐ近くに市場があるからなの。
でね(地図をさしながら)、
魚はみんなここにあがってくるんで、
一番いいのがやってくる。
牛さんは、こっち側にミートパッキングっていう、
最近流行りの地域があるんだけど、
そこも基本的にイタリア人だったの。
いまもナポリピザのお店とかあるわよ。

で、このあたり、ガーメント地区に
昔はインド人がいっぱいいたの。
繊維街よ。
世界中の繊維の歴史ってインドから始まって、
今、韓国のほうに向かいつつあるけど、
カレー屋さんも多くて、
美味しい匂い渦巻くような雰囲気なの。
で、成功した人は、ミッドタウンのこのあたり、
エンパイアステートビル周辺に彼らは住む。
そうでなければブルックリン、
クイーンズのほうに出ちゃう。
アッパー・イーストサイドの高級住宅街には
いかないのよね。
そんなわけでエンパイアステートビルの周りは、
高級なインド料理屋がいっぱいあるの。
ボクのニューヨークはそんな感じ。
フードコートに行くと、ハンバーガー屋さんがあって、
サンドイッチ屋さんがあって、
ホットドッグ屋さんがあって、
これが3トップで絶対あって、
それ以外に中華のデリがあって、カレー屋さんがあって、
だんだんギリシャ料理のお店が多くなって、
あとはコリアンバーベキューのお店かな、
それは必ずある。
だから、今回の伊勢丹のニューヨーク展って
すごく新鮮に感じるの。
(次回最終回につづきまっす。)
2016-05-27-FRI