『新選組!』
with
ほぼ日テレビガイド
第28回「そして池田屋へ」を観て。

永田 第28回を‥‥。
西本 たったいま見終わりましたが‥‥。
糸井 いやあ、今回はすごいですね‥‥。
さんにん ‥‥‥‥。
永田 ええと、どこからどう話せばいいんだろ。
糸井 なんせ池田屋ですからねえ。
西本 すごかったですねえ‥‥。
永田 すごかったなあ‥‥。
糸井 見どころ満載でしたね。
西本 例によって、ぼく、
いっぱいいっぱいですよ。
永田 もう、やめっか! 最終回だ!
『新選組!』もテレビガイドも
ここで終わってしまおう!
糸井 落ち着け。
西本 例によって、ぼく、
いっぱいいっぱいですよ。
糸井 まずは、違うところからはじめませんか。
首位攻防の天王山のまえに、
ショートパンツのおねえさんが
始球式を行うようにしてはじめませんか。
永田 あ、いいですね。
西本 そういう展開だと楽です。
たとえば、イカの話なんかどうでしょう。
糸井 イカ(笑)!
永田 イカの話、大歓迎!
西本 なにかとイカが出てきましたよね。
永田 だじゃれもありました。
糸井 しかし、イカって、
あんな風に売っているもんですか。
三谷発明なんですかね。
西本 まるまる一匹が売られてましたね。
デカかったなあ。
糸井 大きなお世話かもしれませんが、
ゲソをぶらぶらさせてるってのはどうですかね。
あれは取ったほうがいいんじゃないですか?
マンガみたいな、「イカの記号」に
なりすぎていたように思えましたが。
永田 まさにそういう「イカの記号」として
出したかったんじゃないでしょうか。
イカがイカ型であることに意味があるというか。
糸井 ぼくとしては現場判断で、
ゲソを切るべきだったと思うんですけど。
だってぶらぶらするじゃないですか。
西本 ちょっと生焼けの感じでしたね。
糸井 ええ。もしもぼくがスタッフで、
現場でなにか言える立場だったとしたら、
「ゲソはやめよう!」って言いますね。
永田 なるほど。じゃあぼくはそこで
「ちょっと待った!」って言いますね。
「イカはイカ型であることに
 意味があるんですよ、糸井さん!」
と現場で言いますね。
西本 となると、ぼくは現場で
「まあまあ、ふたりとも」
って言いますね。
永田 それを聞いてぼくらは‥‥。
糸井 「おまえは引っ込んでろ!」と。
西本 言われたぼくは、いったん引き下がり、
家でヨメに愚痴りますね。
「あいつらさあ、
 イカのゲソのことで延々もめてんだよ」と。
それを聞いてヨメはきっと
「どっちでもいいのにねえ‥‥」と。
糸井 じゃあ、まあ、
イカについては賛否両論ということで。
永田 ほかにイカ的なものはありますか。
西本 はい、あります!
Don Doko Don!
永田 ぐっさんと平畠さんだ。
西本 大河ドラマのなかで、
Don Doko Donが一瞬の再結成!
永田 解散してないって。
糸井 あれはサービスですよね。
西本 よかったですよね。
永田 にしもっちゃん、大喜び。
西本 ええ。さらにうれしかったことでいうと、
ぼくの好きなオダギリジョーが
今日もいい働きをしてましたよ。
糸井 近道を知ってるあたり、
存在感を出してましたね。
西本 にわかオダギリファンとしては
すごくうれしかったですね。
永田 もうそういう本質の話に移りますか?
糸井 もうすこし遠回りしましょうか。
今回、ぼくね、舞台となった場所に、
完全に土地勘があるんですよ。
つまり、八坂神社から四条、橋があって
あの川を挟んで‥‥ってあたりが
ぼくがよく知っている京都なんですよ。
西本 ああ、なるほど。
糸井 これまで出てきた、壬生だとか、
八木邸だとかは詳しくはわからないんですよ。
ただ、今日は知ってる場所であるがゆえに、
たのしめたし、同時に驚きもあった。
というのは、近さなんです。
あのあたりの近さを知ってるがゆえに
「うわ!」って思えるんですよ。
永田 番組のあとの解説では
「500メートル四方」と言ってましたが。
糸井 近いですよお、あのあたりは。
2時間とか3時間って単位で
捜索のことを語ってますけど、
距離だけでいったら、
「ちょっと行って戻ってこい」
みたいなもんですからね。
それはね、緊張感あったわぁ。
つまりね、すぐ近くにある
木造家屋のどっかで敵が会合を開いているわけ。
そのイメージを考えると‥‥怖いよ。
永田 しかもその木造家屋が、
ふつうの街並みに混じってるわけですからね。
糸井 さらにもうひとつつけ加えると
ぼくはこの宵山の雰囲気を
実際に、味わっているわけですよ。
西本 ああ、ちょうど現地にいましたよね。
糸井 今年だけじゃないんですよ。
偶然なんですけど、毎年、
宵山の時期って京都にいるんですよ。
あの、祭の夜の街の、独特な雰囲気ね。
永田 今日はある意味、そこに尽きますよね。
糸井 うん。あの川なんてさ、
みんなが祭の余韻を味わいながら
歩いたり、川床で飯を食ったりする場所ですよ。
そんな日にあの無粋な集団が
田舎者の浪人どもと
剣劇をくり広げるわけですからね。
永田 そのギャップはぼくも驚きました。
というのは、ぼくは史実をあまり知らないので、
頭のなかにある「池田屋事件」っていうのは、
忠臣蔵の討ち入りに近い感じだったんですよ。
ようするに、どこかに敵が集まっていて、
そこに攻め込んでいくんだろうっていう。
寝静まった街を進んでいく新選組みたいな。
糸井 ああ、なるほどね。
永田 だから、土方の
「今日は、街が落ち着かないな」
っていうひと言で、すっごくつかまれましたね。
事件と京都の街が溶け合って、
ぜんぜん違う世界をつくってしまって。
糸井 その意味でいうと、最初のところで
新選組がどう行動したらいいかっていうのを
伊東四郎に訊くじゃないですか。
あそこからはじめるっていうのが
また発明だったよねえ。
永田 新選組に京都の街を背負わせるんですよね。
あそこに八木家をもってくるのは
八木家ファンとしてはうれしかったです。
あの、新選組と長州と、
どっちが正しいといえないなかで
「京都の街を守る」っていうのは
たしかに観るものを安心させるんだけど、
近藤たちって、よそ者じゃないですか。
だから、京都とのジョイントとして、
八木家をもってきてるんですよね。
三谷さんが、八木家を「家族」として
過剰にアットホームに表現してるのは
これだったのかなあ、と思って。
お父さんらしい伊東四郎さんと、
お母さんらしい松金よね子さんと、
史実にはいない長女と、息子で。
糸井 つまり民意を味方につけるという
表現の工夫なわけですよね。
全員を味方につけているわけじゃないけど
近藤としてはつけましたよね。
西本 たしかに、そう感じましたね。
「勝てば官軍」という価値観で
どちらが正解かっていうのが
厳密にはいえないなかで、
新選組の、もともとの大儀、
「京都の治安を守る」ってことに立ち戻って
それを忠実に守らせたことに
説得力を感じました。
糸井 そうなると、長州側が
「京の街を焼く」っていう発想をしたところに
戦術ミスがあるんでしょうね。
永田 三谷さんも、あえてそこを強調してますよね。
「帝をさらってどうのこうの」っていうより、
「あいつらは京の街を焼くつもりだ」
っていうことを前面に出している。
西本 また京都の人たちにとっても、
長州というよそ者に火を放たれるってことは
イヤなことでしょうしね。
糸井 そこに祭をもってきているのが
また効果的なんですよ。
京都の祭っていう、無形文化の日に、
「焼く」を合わせてるわけですから。
それは痛いですよね。一千年の歴史を
焼いてしまうみたいなものですから。
西本 「焼くのはイカだけにしてくれ!」
ってことですよね。
糸井 まあ、無視しますけど。
永田 ええ、無視してください。
西本 意外にこういう発言が、
文字にしたときに活きるんですよ。
糸井 街という意味で大きかったのは、
「斬り合いを観ている町人たち」
っていう構造ですよね。
西本 あれがいいですよね!
ホントにあれくらいの距離で
やじ馬って観てたんでしょうね。
糸井 うん。そういう彼らを
ほんとうの主人公にもってきている。
永田 いや、ほんと、今日の主役は
「京都の街」ですよね。
糸井 また、うまかったのが、
中村獅童さんを使って
一般民衆の目線を表現してたところね。
永田 ああ、それは感じました!
微妙に辻褄を合わせる役割もあるんですよね。
板挟みになってる桂小五郎は
どうするんだろうって思っていると、
捨助が、うまくからんでいって調整する。
桂小五郎さんが、まるで観ている人たちに
ことわるみたいに高らかに言いますよね。
「いったん、藩邸に帰る!」
(パンと膝を叩き)なるほど!
糸井 オッケーです!
西本 オッケーです!
糸井 桂小五郎ファンの人からすると
疑問に思うのかもしれないですけどね。
西本 そのへんは、三谷さんの
桂小五郎観なんでしょうね。
たぶん、三谷さんって
「この役はこの役者じゃないと」って、
狙ってキャスティングしていると思うので、
三谷さんの桂小五郎へのイメージが
「人情家」というより「テニスボーイ」の、
石黒賢さんと近いんじゃないかと。
糸井 その感じが随所にしますよね。
助けを求めてきてるのに
門を閉めるっていうあたりは完全に
「政治家・桂小五郎」のイメージでしたね。
西本 そう思います。
糸井 じゃあ、そろそろ。
永田 そろそろ?
糸井 池田屋のアクションのシーンに。
西本 いきましょうか。
永田 いきましょうか。
糸井 誰からいく?
永田 どこからいきます?
西本 お先にどうぞ。
糸井 いえいえお先にどうぞ。
永田 いえいえいえどうぞどうぞ。
糸井 それじゃ、はじまりませんよ。
永田 じゃあもう、ジャンケン!
糸井 いいね、ジャンケン!
西本 承知!
さんにん ジャーンケーンポン!
糸井 (グー)
西本 (パー)
永田 (パー)
糸井 あ、負けた。
ふたり ジャーンケーンポン!
永田 (グー)
西本 (グー)
ふたり あいこでしょっ!
永田 (パー)
西本 (グー)
永田 あ、勝っちゃった。
西本 どうぞ。
永田 ‥‥コホン、それでは。
まずぼくは‥‥「音」の話を。
西本 ああっ、「音」かぁーーー!
糸井 「音」ねーー! いいとこいくねー!
永田 「音」、いかせてもらいます!
お先に「音」、いかせていただきます!
ふたり どうぞどうぞ!
永田 つねづね思ってはいたんですけど、
ほかのドラマと違うなあと感じるのは、
ダイナミックレンジが広いんですよ。
ふたり はいはいはいはい。
永田 クラシック音楽と同じように、
ささやくような小さな音から
ドカーンという派手な音まで、
映画並の幅があるように感じるんです。
で、それをすごく丁寧に
つくってあるじゃないですか。
今回、とくに、もう、足音から斬る音から。
糸井 あと、無音ね!
西本 そうなんですよー。
永田 そのメリハリがすごい。
BGMはBGMで、
ここぞというところに滑り込んでくるし。
あの、撮影の技術的なことは
よくわからないんですけど、
音って、あとから当て直すんですよね?
西本 ええ、そうです。
永田 すんごい、繊細ですよね。
鎖帷子で受けた音と、肉体を斬った音と
ぜんぶ、違いましたし。
糸井 過剰に大げさにもしてないですしね。
西本 ああ、観返してえ!
糸井 ぼくが音ですごいなと思ったのは
静寂の雰囲気ですよ。
池田屋の二階に長州の連中が
いるかいないかをたしかめるとき、
近藤がほんとうに
「そっと」階段を上がっていく。
ふたり そうそうそう!
糸井 あれもう、めっちゃかっこいいよね。
あれ、昔のチャンバラでいったら
ありえない演出だよね。
だけど、いまのドラマとして観ていると
ものすごくかっこいいよね。
西本 いままでのチャンバラだったら
「ダダダダダッ」って階段を駆け上がって
バッサバッサと斬りかかるっていう
演出だったでしょうし。
糸井 ところが、「そーっと」階段を上がる香取慎吾。
それで、「バッと」開けて、
そこにやつらがいたら‥‥。
永田 閉める!
糸井 閉めるんだよ!
永田 あそこ、音だけの演出なんですよね!
「とんとんとん」(階段を上がる音)
「バッ」(戸を開ける音)
「チャリッ!」(敵が抜刀する音)
「バッ」(戸を閉める音)
糸井 あの怖さっていったらなかったねえ。
明かりもなにもないわけじゃないですか。
少人数の試合をしにいったわけですよ。
そのスリルがねえ、伝わりますよねえ。
永田 それで、街に戻るっていうか
町人の視点が入るときは、
祭ばやしが聞こえてくるんですよねえ。
糸井 うっまいよねー。
西本 ああ。きっと、ここまで読んで、
もう一度観返したい人がいっぱいいますよ。
糸井 それ自分じゃねえか!
西本 そのとおりです!
ああ、観返してえ!
永田 じゃあ西本さん、どうぞ。
西本 ぼくはですね、
沖田総司のチャンバラなんですけどね。
糸井 ああ、はいはいはい。
永田 それ、もう共感するわ。
西本 ぜんぜん派手な動きはしてないんですよ。
ところが、ムダのない剣のさばきっていうので
「いちばん強い沖田」を見せてる。
そこに気づいたときに、
「おおっ!」と思いました。
糸井 そうなんだよねえ。
西本 最小限の動きで、
確実に相手をしとめていく動きっていうのに
まあ、感心しましたね。
永田 派手に上段に構えたりしないんだよね。
全部、下段あたりから、こう、
手首を効かせるような太刀さばきで。
糸井 そのあたりは、屋内の狭さっていうものを
きちんと配慮してありましたよね。
西本 そう! ぼくらは『その時歴史が動いた』
予習しましたけれど、屋内は狭いんです!
永田 沖田に限らず、全員に太刀筋がありましたよね。
個々の性格をきちんと反映しているっていうか。
永倉新八は実直な感じで「決め」の多い剣。
オダギリジョーは「美学」のある感じ。
照英は、もうネタみたいな「肉体の技」。
糸井 彼は元やり投げ選手ですしね。
永田 で、いちばんなるほどと思ったのは藤堂平助。
『その時歴史が動いた』を観て、
藤堂平助が池田屋突入班の
一員だったって知って、意外だったんですよ。
ドラマで観るかぎり、
そんな人に見えないなあと思って。
あの修羅場に、あの人のいい平助を
どうやって放り込むんだろうと思ってたら、
こう、前のめりになって突っ込むっていう、
「いざとなったらスイッチ入れてキレる」
っていう感じで表現してましたよね。
糸井 うん、顔つきが変わってたよね。
一方で、近藤は「動かない太刀」でしたよね。
むちゃくちゃ強いんだろうなっていう、
そういう表現ですよね。
だって、道場の先生だからね。
永田 近藤は、片手でさばくんですよね。
なんかこう、テニスで、
「男子はバックハンドでも片手」
みたいな強さを感じました。
糸井 山本太郎はあいかわらず見事な「様式美」で。
西本 で、八嶋さんは今回もまた、
なにもしてなかったと。
ふたり あはははははは。
西本 いちばん威張ってるけど、あの人、
「ここだ、ここだぁ!」
って叫んでるだけですからね。
永田 それもまた個性。
糸井 で、ぼくの番ですけどね。
ふたり どうぞどうぞ。
糸井 ぼくが感じたことは‥‥。
ヘルメットしているやつは強い!
西本 ああ、それも思ったわー。
永田 いえてる。鎖帷子。
糸井 なんやかんや言って、
新選組は備えをしてるんですよ。
鎖帷子つけてるし、武器からなにから
戦い用に仕組んでいるわけですよ。
それにくらべて相手は、
ただ相談をしようとして
池田屋に集まっているわけでしょ。
その差はとんでもないよね。
服の下に鎖帷子が1枚あるだけで、
おそろしく有利だと思うんだ。
永田 あの、草野球やるときに、
素人は、マスクがないと怖くて
キャッチャーできないんですよ。
経験者は平気で面ナシでやるんだけど。
軟球だから当たったってそんな
たいしたことないんだけど、
あの安心感ってものすごいんですよね。
糸井 刀に対しても同じですよ。
早い話が、あれは刃物なんですから。
刃物は竹刀じゃないんですから。
昔、実際に刃物を持った男が
暴れてるところを見た人がいてね、
その人から聞いた話なんだけど、
その男、遠くでむちゃくちゃに
刃物を振り回してるだけだったんだって。
人に届かないようなところで振り回すだけ。
つまり、怖いんだよ。
斬るほうも、斬られるほうも。
刃物って、そういうもんなんだよ。
だから、つくるほうが
「チャンバラ」っていうことばに
安心してたらダメだよね。
その意味で今回、ああいう
「肉体性のあるチャンバラ」を
きちんとつくったのはえらいよね。
永田 なるほど。
西本 防具が重要に思えるっていうことは、
刃物の怖さが表現できてたってことですよね。
糸井 あの、藤堂平助が、
頭の防具を外したとたんに
ばっさり斬られたじゃないですか。
あれもそういう表現ですよね。
だから、ヘルメットはすごいんです。
つまり、刃物はあぶない!
永田 刃物はあぶない!
西本 刃物はあぶない!
糸井 今日の結論!
「刃物はあぶない」!
ふたり 「刃物はあぶない」!
糸井 「刃物はあぶない」!
永田 もういいです。
糸井 あと、刃物があぶないということで
もうひとつ言うと、さっきも出たけど、
池田屋の狭さですよね。
つまり、自分の刀が味方を傷つけちゃうかも、
みたいな場所に大勢がいるっていう状況は
人数で勝っていても、
ちっとも有利じゃないんですよね。
だから、一対一で勝つ自信があれば
少人数でもやれちゃうわけですよ。
西本 そうですね。よく、時代劇を観てるときに、
「まわりを囲んでるやつも、見てないで
 一斉に斬りかかればいいじゃない」
って突っ込む人がいるじゃないですか。
でも、ようはその振りかざした刀が
どこにいくかってことがわかんないので
みんな静観せざるを得ないわけですよね。
永田 刃物はあぶないですからね。
糸井 そう。刃物はあぶない。
池田屋は狭い。
西本 今回、池田屋のセットはすごかったですけど、
『その時歴史が動いた』で見た
写真を見事に再現してましたね。急な階段とか。
糸井 階段が急だってことは、
全体が小さいっていうことですよね。
あの、推測だけれども、今回の
「狭い場所での戦いの表現」は、
三谷さんが考えてないところで
現場の人たちが「こうしよう、ああしよう」と
知恵を足しながら
つくっていってるんじゃないかと思うんですよ。
永田 あ、そうかもしれません。
三谷さんがコラムで書いていたんですけど、
チャンバラって、脚本の段階では、
ト書きで簡単に書くしかないんですって。
「息詰まる死闘が続く‥‥」
みたいにしか書けないって。
西本 ああ、ぼくもそれ読みました。
だから、現場の経験者たちが、
「このドラマだったらこうだろう」
「この狭い場所ならこうなんじゃないか」
っていうふうにして
つくっていったんじゃないですかね。
糸井 それがあの完成度につながってるんですね。
いやあ、見事でした。
永田 一方で、援軍が到着してからのチャンバラは
「刃物があぶない」の演出から
ガラッと変化してましたよね。
糸井 あそこからは、格闘技にしましたよね。
ようするに、殴りや蹴りを入れて、
総合剣術格闘技にしたわけですよ。
あれはもうね、田舎者の強さ。
その表現はうまかったね。
西本 ストリートファイトでしたよね。
山本太郎と照英なんかはとくに。
糸井 そのあたりのさじかげんもよかったね。
つまり、そればっかりになるとかっこ悪いから。
武士じゃなくなりすぎるのもよくない。
だから、近藤は絶対それをしないんですよ。
だって彼はものすごく武士になりたい人だから。
永田 あ、そうですね。
きちんと名乗ったりしてたし。
糸井 あの人だけは武士として勝つ試合をしてる。
そういうところでいちいち
ものすごく納得がいきましたよね。
‥‥よかった。
永田 よかった。
西本 よかった。
糸井 あと、触れるべきだと思うので言いますが、
沖田が喀血するシーンのCGはどうでしたか?
西本 あのアジサイのところですよね。
ぼくはトム・ハンクスの
『グリーンマイル』を思い出しました。
糸井 『グリーンマイル』!
ぼくらトム・ハンクス好きですからね。
永田 トム・ハンクスにハズレなし!
ふたり トム・ハンクスにハズレなし!
糸井 たまにあり!
ふたり たまにあり!
糸井 永田くんは、あれ、どうでした?
永田 ぼくはありでしたよ。
ぜんぜんオッケーです。
糸井さんは?
糸井 ぼくもありでしたよ。
西本 でも、あのへん、クレームの対象に
なったりするんでしょうね。
糸井 怒る人は怒りそうですね。
「どういう意味が!」とかね。
永田 アジサイの青と血の赤とか、
燃え尽きる若い命のイメージとか、
いろいろ解釈はあるんでしょうけど、
ぼくはドラマの流れをスッと止めて
特別な世界を挿入する演出で
ふつうにいいなあと思いました。
糸井 いや、ありゃ貧血の表現でしょう。
永田 あ、そっちか!
糸井 違うかな(笑)。
西本 ぼくは『グリーンマイル』です!
糸井 どうであろうと、
ぼくはキレイだなと思いましたよ。
永田 うん。ぼくもオッケーです。もしも、
時代劇にCGを入れること自体がダメなら、
先週のハエもダメになっちゃいますよ。
西本 あ、そうなりますね。
糸井 ‥‥ハエ? ハエってなに?
西本 先週、オダギリジョーが
目を開けたまま寝るっていう
エピソードがあったじゃないですか。
あそこでオダギリジョーの鼻の頭に
ハエがピタッてとまるでしょ。
糸井 えっ! あれ、CG?!
西本 CGですよ(笑)。
永田 ひょっとして糸井さん‥‥。
糸井 「うまいこと撮ったなあ」と思ってた。
ふたり そんなわけないでしょ!
糸井 まあ、池田屋の剣劇は見事でした。
永田 そして、締めは
宮部鼎蔵との見応えあるやり取り。
西本 満を持しての「幕府の犬め」発言!
永田 ここで来たかっ、っていう感じでしたよね。
そのあとのセリフもよかったですよ。
「おれを斬ってもそのあとには
 幾千幾万の志士が続くが
 おまえはそれをことごとく斬るつもりか?」
西本 「ご公儀に逆らう者なら斬る!」と。
糸井 本質論ですよね。
永田 あそこ、ぼくは
『もののけ姫』を思い出したんですよ。
糸井 あ、『もののけ姫』ね!
つまり、正解のない試合なんだよね。
永田 そうそう、そうなんですよ。
「恨み言を言いながら死んでいく
 宮部鼎蔵のほうが、
 じつは正しいんじゃないか?」
っていうあたりは、
たたり神と同じような感じがしたし、
どっちが正しいんだかわからなくて
混沌としてくるなかで、
「京の街を守る」っていう
民意をぎりぎりで汲み取るあたりは、
「この村を、いい村にしよう」っていう
烏帽子のセリフを思い出したし。
なんかこう、勧善懲悪じゃ収まらない
難しい問題を扱いながら、
それでも、つくり手は観る側に、
いちおうの正解を
提示しなきゃいけない苦労とか。
糸井 なるほどね。でも、そういうことは、
『もののけ姫』以前にも、
黒澤映画なんかでも扱われてるんですよ。
永田 あ、そうなんですか。
糸井 うん。だから、その意味では
様式に乗っ取ったかたちともいえる。
ぼくがおもしろいと思ったのは、
あそこで終わらず、本質論を
その後の竜馬にバトンタッチするという
二重構造のほうですね。
西本 「どいつもこいつもバカじゃきに!」
糸井 見事にぜんぶしゃべらせてましたね。
もちろん、文句はないんですけど、
あそこ、もっと観念的に見せてくれても
よかったかなとは思いました。
亀の切腹なんかは、直接見せてないぶん、
重みが出てて、じんわり泣けたじゃないですか。
永田 あれって、第1回から観てたら、
もっと泣けるんでしょうねえ。
西本 それは思いましたね。
糸井 まあ、まだまだありますけど、
こんなところにしておきましょうか。
西本 そうですね。
永田 ‥‥ああっ! 待った!
ひとつ忘れてることがあった!
西本 なんですかなんですか。
永田 みんな、後半のチャンバラで忘れてますよ。
冒頭、ぼくらはいきなり
つかまれたじゃないですか。
山南敬助ですよ。堺さんですよ。
話し合いのところで、怒鳴るところ。
ふたり あーーーーっ!
永田 あれはびっくりしました。
西本 今回、山南の出番ってあそこだけなんですけど、
チャンバラしなくても
ぜんぜんオッケーでしたよね。
いや、存在感ありました。
糸井 それから、忘れてるといえばあれですよ。
土方が池田屋に到着したときの、
「かっちゃん、うしろだ!」
ふたり あーーーーっ!
糸井 そのまえの決断を迫る場面では、
近藤のことを「局長!」って呼ぶんだよね。
そのあたりの使い分けが、さすがですよね。
だてに薬売りやってないですよ。
ところが、近藤の命にかかわる場面では
思わず「かっちゃん!」なんですよ。
だって、「近藤!」じゃ、
とっさにわからないかもしれないからね。
ほら、近藤勇って、養子だからさ。
永田 そういう問題ですか。
西本 順番からいって、ぼくも
みんなが忘れていることを
言わなくてはなりませんが。
ふたり どうぞどうぞ。
西本 池田屋のあったところって、
いまパチンコ屋になってるんですね。
ふたり ああああああ(笑)。
西本 あれ、ぼくがパチンコ屋のオーナーなら、
絶対、店の名前を「池田屋」にしますけどね。
糸井 池田屋事件の日は、
サービスデーとかにしてな。
永田 夜10時からは大解放!
西本 画面に「お・き・た」ってそろうと、
コインが、喀血のように、
ジャラジャラジャラーって出てきたり。
ふたり それはないわ!


ほぼ日テレビガイド
〜女子の部〜



モギコ
ていうかさー、思うんだけどさー。

ゆーないと
なんですかーー。

モギコ
男子部しゃべりすぎ!
もうぜんぶ言われちゃってるよ!
後攻め、不利!

ゆーないと
いえてるいえてる! 
「かっちゃん」くらい残しとけ!

ナカバヤシ
それならそれで正式に先攻後攻を
提案してみるという手はありますね。
一度、場をもうけて言ってみますか?
ただ、そうなると、我々も
あの人たちみたいに、
じーーーーっとドラマを無言で観て、
「観ましたね」「観ましたな」とか言って
ぐだぐだぐだぐだ語り合うことが
義務づけられるわけですけれども。

ふたり
それはイヤ!

ナカバヤシ
同感です。あの人たち、
ちょっと変です。

ゆーないと
奥の部屋でだまーーってテレビ観てさ、
終わったのかなと思ったら、
いきなりテーマソング歌い出したりするし。
‥‥ちょっとヤバいよね?

ナカバヤシ
ともあれ、語るべきことがなければ、
さっさと終わりにしましょうか。

モギコ
それもくやしい!

ゆーないと
はいっ! ありますっ、あるです!

モギコ
おお、たのもしい!

ナカバヤシ
ゆーないとさん、どうぞ!

ゆーないと
イカです!

ふたり
イカかい!

ゆーないと
あのね、獅童の持ってたイカがね、
だんだん短くなっていくのよ。

モギコ
へ?

ゆーないと
池田屋のまえでさ、獅童が観てたでしょ?
あのとき持ってたイカが短くなるの。

ナカバヤシ
それはつまり‥‥。

ゆーないと
食ってるんですよ。
ちゃんと、イカを。

モギコ
つまりそれは時間経過の表現か。

ナカバヤシ
‥‥よく観てましたね、そんなとこ。

ゆーないと
お腹空いてたから。

モギコ
そういう細かいところでいいんならね、
オダギリジョーの目をほめたい。
池田屋から隊列を組んで帰るときの、
やつの目はヤバかったよ。キマってたよ。
イっちゃってましたよ。シビれたわー。

ナカバヤシ
それでは私も言わせてもらいますけど‥‥。

ふたり
シンゴちゃんでしょ!

ナカバヤシ
りょうちゃんです!

モギコ
り、りょうちゃん?

ゆーないと
誰スか、それ?

ナカバヤシ
すなわち、麻生久美子さんです。

モギコ
ああ、おりょうさんか。

ナカバヤシ
そうですそうです。
あの、血なまぐさい夜が終わったあと、
視聴者の緊張感を一瞬で和らげたのが
なんだったか覚えていますか?
足ですよ、足!
階段を上がる
りょうちゃんのキレイな足首!

ふたり
あっ、あれはキレイだった!

ナカバヤシ
でしょう?
場面転換の演出として
じつに効果的でしたよね。

ゆーないと
ふつう、男子だったら、
ああいうところに
反応しそうなもんだけどなー。

モギコ
男子部は、
おりょうさんの足首は無視して
沖田総司の手首について、
延々、話してたな。


さんにん
やっぱ、変。


ほぼ日テレビガイド
〜美術部〜


2004-07-23-FRI


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