1月2日は箱根駅伝の日!
箱根駅伝を勝手に応援するページ。

元はと言えば、
「駅伝の話を書いて欲しい」という事だったんです、
私のところに留守番番長の話が舞い込んだのは。
思えば、スポーツについて何かあるたび、
イトイさんへアツいメールを送り続けていた事が、
こんな大それた事になってしまった訳です・・・

という事なので、
1月2日、箱根の話題は欠かせないでしょう!
しかし。

実は、ファンに向けて箱根駅伝の見所を紹介した文章って、
ネット上にはあちこちにあるんですよね。
放映している日本テレビや、読売新聞、報知新聞でも、
注目選手の情報などをたくさん記事にしていますし。
そういうプロの方々の手によるモノがすでにある。
また、ファンが勝手に応援しているページも
たくさんあるんですね。

それに、
1月2日と言っても、更新されるのは11時、
すでに箱根駅伝は始まっちゃっていますもんね。
だから、
ありきたりの「箱根駅伝の紹介」をしても
意味がない!

という事で、
ちょっと違った角度から、箱根駅伝について書いてみます。

ファン以外に贈る「駅伝の面白さ」について

マラソンとか駅伝とかを面白がっていると
「あんなただ延々と走っているだけのものの、
 どこが面白いんだ?」
なんて事を良く言われるんですよ。

確かに、野球やサッカーとかの
「ゲームとしての面白さ」みたいな分かりやすいものは、
ないかもしれませんね。
だから、
マラソンや駅伝の面白さって
「分かる人には分かるけど、
 分からない人には全然分からない」
みたいになりがち、でしょう。
そして確かに、
「マラソンや駅伝の面白さ」を書いた文章って
あまりありませんし、
ファン以外に向けたものなんて、
少なくとも私は読んだことはないです。

なので、ここでは
ファン以外に向けて駅伝の面白さを語る
ってのを、
駅伝ファンを勝手に代表してやってみたいと思います。
うまくできるかわかりませんが、
「なんで正月早々から、あんなに長い距離を
 辛そうに走るのだろう。
 そしてなぜ、あんなに多くの人が
 それを熱狂して見ているのだろう」
と、不思議に思っていた方は、
是非読んでもらいたいな、と思います。

キーワードは「思い入れ」です。

まず、おさえておいてもらいたいのは、
「マラソンや駅伝は
 メンタルな要素が大きい競技である」

という事です。つまり、
体力や技術以上に、精神力が結果に占める割合が大きい
という事です。

実はそれは、マラソンや駅伝に限った事では
ないかもしれないんですけどね。
「スポーツにおいて、一流になればなるほど、
 実力の違いにメンタルが占める割合が大きくなる」
みたいな話を何かで読んだ記憶がありますし。
だけど、
それがマラソンや駅伝では分かりやすくあるんです。

というのは。
長い長い距離を走ることって、ホント苦しいことなんです。
しかも、その苦しい状態が、ずっっっと続くんです。
だから、
その苦しい状態でどれだけ頑張れるか、という事で、
結果が大きく変わってしまうんです。

もちろん、だからといって、
精神力だけで全て決まってしまう訳じゃないですよ。
無茶苦茶、精神力が強い素人
例えば、江頭2:50みたいな人が、
精神力だけで駅伝の選手に勝てるか、といったら、
それは無理でしょう(笑)
走るための体力や技術が全然違いすぎます。

ちょっと脱線しますね。
わかりにくい事ですが、
「走る技術」というのも確かにあるんですよ。
だから、
「走る技術」をコーチする事で、
100メートルを速く走れるようにする講義が
東京大学にあると聞きました(笑)

話を戻します。
だから、走るための体力や技術というのも、
その基礎として重要ではあるんです、当たり前ですが。
だけど、
激しいトレーニングを積んできている選手達は、
そういう部分はかなり備わっているんですね。
そうすると、
精神的なちょっとした事が、結果を変える
と言うことが、往々にして起こる訳です。

「マラソンや駅伝はメンタルな要素が大きい競技である」
というのを、もう少し深く掘り下げてみます。
メンタルな要素の一つは
「自信」じゃないかな、と思うんです。

長い距離を走っていて苦しくなってくると、
「自分の体力はもう限界なのではないか」
とか
「ここで走るペースを落とさないと
 最後までもたないんじゃないか」
とか、などなど、
弱気な気持ちというのがもたげてきてしまう
そう思うんですね。
とするならば、
弱気な気持ちを振り払って頑張り続けるには、
拠り所として「自信」ってのがある方が有利でしょう。

その自信の元は、
過去の実績の場合もあるでしょう。
「前にこれだけ走れたのだから、ここでも頑張れるはずだ」
素晴らしい実績があれば
苦しくなった時に、そのように思えるハズです。

陸上では良く「持ちタイム」という事が言われます。
その選手のこれまでのベスト記録の事で、
選手紹介などで表記されている事が多いんです。
その選手の「競技能力」を表すものとして扱われていますが
それは、選手の体力的・技術的能力を表すと同時に、
「自信のレベル」も表していると言えます。
「これくらいの記録なら自分は走れるハズだ」
そう思えるでしょうし、
競っている相手より自分の記録が良ければ
「あの選手よりは頑張れるハズだ」と
苦しい時に踏ん張れるんじゃないでしょうか。

また、激しい練習を積んできた、というのも、
「あれだけ凄い練習をしたきたんだから・・・」
という事が力となってくれるかもしれません。
そういう意味での「自信」もあると思うんです。

もちろん、
精神力ってそれだけじゃないですよね。
元々我慢強い、マラソン向きの性格って人もいるでしょう。
鍛錬によって我慢強くなった、という人もいます。
体調の悪さが精神的な頑張りを邪魔する、
という事だってあると思います。
そういう色々な意味での「精神力」が
勝負を分ける事が多い、そう解釈してください。

以上が
「マラソンや駅伝はメンタルな要素が大きい競技である」
という事についての
高校時代、三流へぼ陸上部だった私の考察です。
高いレベルで競技をされている方には
笑われてしまう内容かもしれませんけどね。

さて、次に言える事は、
「駅伝はチームスポーツである」
という事です。
長距離を走る、というのは個人競技です。
だから、
駅伝でも、個人個人が走る場面では個人競技であり、
それを直列に並べて足し算しただけのように見えます。
でも、ここに、
「マラソンや駅伝はメンタルな要素が大きい競技である」
という部分が合わさると、
チームスポーツとしての側面や、
もっと言うと、ゲーム的な面白ささえ生まれてくるんです。
作戦・戦略なんて事も、
駅伝を表した記事では普通に見られます。
ちょっとそこを分析してみましょう。

よく
「駅伝は流れが大事である」という事が言われます。
それはつまり、良い流れに乗ったチームでは、
選手が自分の実力以上の走りをすることができ、
一方、悪い流れにはまってしまったチームでは、
選手は自分の実力を出し切れずに終わってしまう、
という事です。

それはなぜか?
「良い流れ」ってつまり、
物事がうまく進んでいる状態、ですよね?
駅伝の場合だったら
当然、順位が良ければ「良い状態」になります。
もちろんそれは、相対的なものでも良いですね、
予想していたよりも良かった、とか、
順位を上げてきてチームとして上昇気流にある、
みたいなのでも「良い流れ」になります。
そして、逆の場合が「悪い流れ」になる。

だから、
駅伝の鉄則は「先手必勝」なんだそうです。
始めの方に実力のある選手を走らせて、
なるべく良い順位・できればトップを取りに行く。
そうして、
後の選手が良い流れで走る事で実力を出し切れるように
あわよくば実力以上の走りができるようにしよう、
これが、駅伝の「基本戦略」だと言うんです。

これはつまり、こう考える事ができます。
まず、
どんな理由であれ、良い順位で走る事は、
気分の良い事でしょう。
特に、トップを走るのは、最高の気分でしょう。
そうして良い気持ちで走る事が、
精神的な頑張りを助けてくれる、という事があるそうです。
また、
良い順位で走っている、というのは、
つまりはそれだけ、前に走っていた同じチームの仲間が
頑張ってきていた、という事なんです。
となると、
「一緒に練習をしてきた、あいつらが頑張ったんだから、
 オレももっと頑張らないと」
という気持ちになって、
苦しい時にその気持ちが後押ししてくれるでしょう。

逆に、順位が悪いと、
「自分がもっと頑張らないとチームの目標を達成できない」
と思って気負ったり焦ったりして、
力が出し切れない、なんて事が良くあります。
ハイペースで走りすぎて後半にスタミナ切れを起こしたり
「もうダメだ」とあきらめの気持ちが起きたりして、
苦しさを我慢できなかったり、するのでしょう。

(こんなふうに書くと精神がひ弱に思えるかもしれません。
 だけど、
 選手たちはぎりぎりの所で勝負しているんです。
 それはどうか、ご理解下さい。)

もっとも、
選手によっては「追われるより追いかける方が好き」
って人もいます。
前に目標があると頑張れる、という事みたいです。
他の選手を抜くことに快感を覚える、
それも選手の個性ですよね。
また、
後ろから実力ある選手が追いかけてくる事に焦って、
ペースを乱して自滅してしまう、なんてことも、
駅伝では良くある光景です。
だから、「先手必勝」が必ず良いとは言いきれない。
ここに、作戦・戦略が生まれる余地があります。

つまり、
選手一人一人の実力や個性、
ライバルチームとの力関係などを考えて、
どういう順番にすれば選手の実力を一番良く引き出せるか、
ライバルチームに勝てるか、
という事を考えて作戦を考え、選手を配置する。
例えば、
最初に強い選手を並べてトップを取り、
他との差をなるべく開いておいて、
残りの選手の力を引き出して逃げ切ろう、とか、
最後にエースをおいて、
なんとかそこまで粘って最小の差でつないで逆転を狙おう、
などのゲームプランができる訳です。

もちろん、作戦が上手くはまる事もあれば、
失敗してしまう事もあります。
予想もしなかった好循環が起こることだってあります。
その辺が、駅伝の難しさであり面白さ、なんですね。
駅伝ファンはそういう部分も楽しんでいるんです。

こういう駅伝の面白さを象徴するシーンを一つ紹介します。
2年前の箱根駅伝、9区の逆転劇
駒澤大学・高橋正仁選手と順天堂大学・高橋健介選手の
勝負です。

この年の順天堂大学は、
大学長距離界を代表する実力のランナーが揃った
豪華メンバーで、優勝候補の本命でした。
対する駒澤大学も良い選手が揃ってはいましたが、
主力の一人が怪我で欠場した事もあり、
順天堂大学と比べるとやや不利と目されていました。

実際のレースも、中盤から順天堂大学が独走します。
駒澤大学も必死で追い上げますが、
順天堂大学がリードしたまま終盤の勝負区間・9区に。
順天堂大学はエースの高橋健介選手が走ります。
2年前の大逆転劇の立役者となって以来、
学生のエースとして君臨している選手。
普通、エースは2区を走るんですが、
順天堂大学は終盤勝負を想定し、
ここに満を持してエースを投入していました。

一方の駒澤大学・高橋正仁。
前年の箱根駅伝で優勝のゴールテープを切り、
3年生ながらキャプテンを任されている期待の選手です。
といっても、
さすがに順天堂大学・高橋健介選手と比べると、
過去の実績から格は下と思われていました。
だから、
順天堂大学がリードしてこの区間に来た所で、
さすがに勝負あったかな、と思いました。
現に、高橋健介選手(以後・健介選手と記す)は
区間記録を狙える程の素晴らしいペースで走り始めました。

しかし、
駒澤の高橋正仁選手(以後・正仁選手と記す)は、
それを上回るもの凄いペースで追いかけます。
さすがに無茶だ、そんなペースでは23キロも走れない、
と思わせるほどのスピードで。
といっても、表情からは焦りとか気負いとかは感じられず、
怒っているんじゃないか、と思えるほどの
気合いの入った表情で一心に前を追いかけます。

そして、28秒あった差を一気に縮めて
7キロ手前には追いついてしまったのです。
追いつかれた事に気づいた健介選手の驚いた顔は
忘れられません。
そりゃ、そうでしょう、
区間記録を上回るペースで走っていた自分が、
まさか追いつかれるとは思いもしていなかったのですから。
(後日彼は、「頭の中がパニックになった」と
 述懐しています。)

とは言っても、
正仁選手はそんな無茶なペースで走ってきたから、
終盤のスタミナが持たないだろう、と思いました。
一方、健介選手は実力があるし、
堅実なペースで走ってきている。
だから、
残りのスタミナを考えるとやっぱり健介選手が有利だろう、
どこかで健介選手が正仁選手を引き離すだろう、
そう思っていました。

しかし、予想に反して二人の併走は続きます。
健介選手は再三、スパートを見せますが、
正仁選手は一歩も引きません。
そして逆に、残り1キロで、正仁選手は、
まるで短距離を走るような爆発的スピードのスパートで、
健介選手を振りきってしまいました。

この時の正仁選手の気合いは、鬼気迫るものがありました。
見ていて本当に興奮しましたね。
健介選手は完全に、その気合いに飲まれた、
と言って良いでしょう。
区間記録を上回るペースで走っていたハズが、
それよりずっと遅い記録になってしまったのですから。
でも、後に書くように
健介選手は決して、メンタルの弱い選手ではないんですね。
それだけ、正仁選手が素晴らしかった、という事です。

実は、このレースには因縁があったのです。
2年前の箱根駅伝、同じ区間で、
当時2年生だった健介選手が駒澤大学を逆転し、
チームを優勝に導いていたんですね。
逆転された駒澤の選手も、
そのシーズンの駅伝で連続区間賞を獲っていた
強い選手だったのですが、
健介選手は冷静に差を詰めて追いつき、
見事逆転したのでした。

それ以来、順天堂大学と駒澤大学は、
あらゆる駅伝で熾烈な争いを繰り広げていました。
健介選手はその中で、順天堂大学のエースとして
駒澤大学に立ちはだかっていたんですね。
しかし、2年後の同じ舞台で、正仁選手は
先輩の敵討ちを果たした、のでした。

実は、この次のアンカーで順天堂大学は、
健介選手と同学年の選手が駒澤大学を逆転して優勝し、
健介選手の敵討ちをしたんですね。
そういう意味で、本当に手に汗握る名勝負の年でした。
きっと、箱根史上に残る名勝負として、
今後も語り継がれていく事でしょうね。。

いかがでしたか?
少しは「駅伝って面白いのかも」と
思っていただけたでしょうか?

ここまで書いてきたように、
駅伝というのは、メンタルな要素が大きいスポーツなので、
選手の気持ちなどを想像すると、
とても思い入れを入れやすいのですね。
「駅伝の面白さ」って、一言で言えば
そういう部分にあると思っています。


という事で、最後に観戦のポイントを書きます。
どこか、応援するチームを決めましょう。
箱根駅伝なら、母校が出ていれば最高ですし、
そうでなくても、何らかの形で決めれば良いと思います。
そして、
どうすれば選手の力を引き出して勝負に勝てるか、と、
「思い入れを持って」見ていきましょう。

でも、
スポーツの見方に、正解なんてないと思うんですね。
だから、
カッコイイ男の子が頑張ってる、みたいなミーハーなのも、
全然オーケーです。
自分なりの楽しみ方で、楽しんでみてください。

私はどんなふうに楽しむのか・・・
それは、この下のもう一つの原稿を読んで下さい。


箱根駅伝とインターネット


ここでは、
「インターネットが私の箱根駅伝の見方に与えた影響」
について書いてみます。

インターネットには、
箱根駅伝についてのホームページがたくさんあります。
だから、
それらを通じて箱根駅伝の色々な事に詳しくなった、
というのも、もちろんあります。

だけど、
一番大きいのは、
「箱根駅伝を走る選手のホームページ」
を見るようになった事でしょう。


きっかけは、
2年前、優勝候補・駒澤大学のエースだった
神屋選手がホームページを開いた、と聞いたことです。

まず、
メディアやファンではない、選手自身がホームページを開く
という事に驚きました。
しかも、優勝候補のエース選手、そんな有名選手が、
という事に。
神屋選手は2年生の時からエース区間を任されていて、
アンカーで1分近い差を逆転したり、
インカレという学生で一番大きな大会で連覇している
学生随一のスターランナーだったんです。
私自身、藤田敦史選手を見て以来、
駒澤大学を応援していて、神屋選手にも期待していたので、
喜んでホームページを見るようになりました。

実はこの頃、
神屋選手に対して、奇妙な噂が流れていました。
彼は足を骨折していて、次の箱根駅伝に出場できない、と。
前の駅伝で足を引きずった姿が
テレビで映されていた事もあり、
その話は信憑性のあるものとして流れていたんです。
ファンとしては凄く、動揺しますよね。
それに対して、彼は日記でその噂をきっぱり否定して
ファンを安心させてくれたのでした。

神屋選手自身が後日書いている話では、
この噂がホームページを公開するきっかけだったそうです。
「どうせ勝手に話が流れるなら自分で情報発信しよう!」
そう思い立ち立ち上げた、と
彼のホームページに書いてあります。

そして、神屋選手以外にも、
何人かの選手がホームページを持っている事を知りました。
という事で、好奇心で彼らのホームページも見てみました。

中には、
応援している所のライバル校の選手も居ました。
それらの選手のホームページや掲示板も、
喜んで見ていましたよ。
そういう選手の書いている色々な事から、
ライバル校の様子も推測することも出来たので、
そこから色々な予想を立てたりするのが楽しかったのです。

箱根駅伝が終わっても、
例えば区間賞を獲った選手に祝福のメッセージを送ったり、
その後に選手が出るレースを聞いて応援したりしながら、
選手たちのホームページを見続けました。
選手によっては、
掲示板に丁寧なレスをしてくれる人もいましたし、
そういう事で、選手の人たちのことを
身近に感じるようになったんですね、勝手ながら。

当たり前の話なんですが、
競技をしている選手も一人の人間なんですね。
しかも、学生スポーツの選手は、
競技以外では私たちと変わらない学生生活を
送っているんですね。
だけど、競技を見ている人間って、
どうしてもそういう事を忘れがちだと思うんです。

だけど、
選手のホームページを見ていると、
そういう事が実感を持って感じられるようになるんですね。
だって、彼らの書いている事って、
競技以外の事では普通の大学生と変わらない訳ですから。
例えば、同じ部員たちとバカなことをやっていたり、
趣味について語っていたり。
理系の学生の選手が書いている実習の話なんかは、
私は同じ理系として共感持って読んでいました。


もちろん、
競技についての悩みなどを赤裸々に書いていたり、
チームの状態を克明に報告する人もいました。
そういう選手達の悩みや闘いを、
リアルタイムで見つめ続けた訳です。
そりゃ、思い入れも入るってものですよ。
だから、そうやって見てきた選手の不調は
一緒になって悲しんでいましたし、
その選手の活躍は自分事のように嬉しかったりしたんです。

という訳で、
インターネットによって、私は
過剰だと言える程の思い入れを持って駅伝を見るように
なっていました。
そうすると駅伝を見る自分の気持ちが変化している事に
気が付いたんです。

一言で言えば、
選手一人一人に、情が移ってきたんですね・・・

そうすると、勝負に辛い見方ができなくなったんですよ。
スポーツは勝負事ですから、
相手チーム・ライバルチームの不幸は、
自分の応援しているチームにとってはプラスなんですね。
だから、
勝負にこだわってくると、
相手チームのミスを願うようになっちゃう。
それは別に、そんなさもしい気持ちとかではないと思う。
スポーツファンにとっては普通の事でしょう。
(ワールドカップでも、
 相手国のミスを喜んだり、しませんでしたか?)

だから、
駅伝を見る時でも、そうだったんです。
応援しているチームのライバルに対しては
「ブレーキでも起こさないかな」なんて
思っちゃっていました。
(『ブレーキ』とは、
 一人の選手が予想より極端に遅くなる事を言います。)

だけど、
選手一人一人に情が移ってくると、
そんなふうには思えなくなってきたんです。

もちろん、
応援しているチームに勝って欲しいとは思っています。
そりゃ、そうです。
でも、ライバル校の選手だって、
私たちと同じような学生生活を送っている普通の大学生で、
そんな中で走ることに懸けて真摯に頑張っているのだ
という事が実感を持って分かるようになってしまったので、
彼らの不幸を願うような気持ちを持てなくなったのです。
出場する選手たちがみんな、
後悔しないように力を出し切って欲しい

そう心から思えるようになったんです。
(その上で、応援するチームが勝って欲しいな、と(笑))

なんか、もの凄く綺麗事に聞こえますよね?
私も以前だったらそう思ったことでしょう。
だけど、
これは今の私の本心なんですよ。
インターネットを見なかったら、こんなふうに思うことは、
きっとなかったでしょうね。

そうやって選手のホームページを見ながら
過剰な思い入れを持って駅伝を見ることで、
そうでない人には分からない感動を味わう事もあります。
ここではその分かりやすい例を書いてみましょう。

昨年の箱根駅伝で、早稲田大学は
当初の周囲の予想を上回る健闘を見せて3位に入りました。
この年の早稲田はシード権がなく
予選会を勝ち抜かなければならない過酷な状況でして、
箱根駅伝の本大会でも苦戦が予想されていました。

しかし私は、
早稲田はきっと健闘するだろうと思っていました。
というのは、
この大会にかける選手たちの気持ちを
知っていましたから。


この前年の早稲田には、
佐藤敦之という絶対的なエースが居ました。
この選手は3年生でマラソンの学生記録を塗り替えた
凄いランナーでした。
あの瀬古や藤田の記録を塗り替えたのですから、
その素晴らしさは分かるでしょう。

だから、
その年の早稲田は佐藤選手を中心に戦うだろうと
思われていました。
しかし彼は、4年生の後半に絶不調に陥り
(オーバートレーニング症候群と聞いています)
結局、箱根駅伝に出場できなかったのです。
大黒柱の欠場に動揺したのか、
早稲田大学の選手たちは実力を出し切ることができずに
チームは14校中10位に沈んでしまったのでした。

(箱根駅伝は9位までが翌年、自動的に出場ができる
 シード権を獲得し
 10位以下は出場出来なかった大学と
 予選を戦って上位を獲らないと出場できないんです。
 だから、9位と10位では天と地の差なんですね。)

佐藤選手は失意のまま卒業し
残された選手たちは、シード権のない中で
大黒柱の抜けたチームを立て直す事になりました。

そんな早稲田の選手のホームページを見ていたんですね。
そして、
こんな内容の記述を読んだんです。

その頃、卒業した佐藤敦之選手の特集を
ニュースステーションでしていたんですね。
ちょうどその後ある、福岡国際マラソンの展望として。
選手たちはそのビデオを撮って、
部屋に集まって見たそうです。
(陸上選手は朝練があるから夜は早いのだ。)

その特集の内容は、こういうものでした。
佐藤選手は箱根駅伝を走る事ができなかった。
自分がエースとしての働きができなかったから、
早稲田はシード権が獲得できなかった。
それは全て、自分のせいだ。
その為に後輩たちに迷惑をかけてしまった。
でも、卒業した自分はもう箱根駅伝を走る事はできない。
だから、今度のマラソンで自分は頑張って、
後輩たちに勇気を与えるような走りをしたい。
そうやって、渡すことのできなかった襷を後輩に渡すのだ、
と。

これを見ながら、
早稲田の選手たちはみんな涙を流していたそうです。

ホームページの選手はこう言います。
早稲田の選手たちはシード権を逃したことを、
佐藤先輩のせいだなんて、誰一人として思っていない。
みんな、自分の力が及ばなかったからだと
自分の事を悔しく思っている。
それなのに、佐藤先輩は責任を一人で背負い、
自分たちを勇気づけるために必死で走ろうとしている。
早稲田の選手たちはこれを見ながら、
自分たちの方こそ佐藤先輩を勇気づけるような走りをして
先輩に襷を渡そう、と誓い合ったそうです。

早稲田の選手たちは、佐藤選手と練習や生活を共にし、
ずっと身近に見てきた訳ですね。
だから、
彼がどれだけ真摯に競技にかけてきたか、を
誰よりも知っているんです。
佐藤敦之選手は
本当にストイックに陸上競技にかけている選手だそうで、
あの瀬古利彦が
「私は現役時代『修行僧』と呼ばれたが、
 本当の『修行僧』は佐藤敦之だ。」

と脱帽するほどなんです。
早稲田の選手たちはだから、佐藤先輩を本当に尊敬していて
影響も受けていたそうです。
 
私はこの事を知っていたので、
早稲田大学には注目していました。
実際、早稲田の選手たちは大活躍で、
区間賞を4つも獲得し、大方の予想を覆して
3位に入ったのでした。
私はそれを見ながら、本当に感動していたんです。
ああ、早稲田の選手たちは本当に、
ホームページに書いていたような走りをしたんだなあって。

これはほんの一例なんです。
他にも思い入れがあるものっていっぱいあります。
確かに、過剰でしょう?
単なるファンで、インターネットで選手のホームページを
見ているだけなのに・・・
だけど、楽しいです。こんなふうに見るって・・・

今年も、個人的な思い入れはいっぱいあります。
だけど、一番願うのは、
一人一人の選手が精一杯、悔いの内容に走って欲しい
という事です。
今では私は、こんなふうに思い入れを持って
箱根駅伝を見ているんです。

目鷹さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「目鷹さんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ろう。

2003-01-02-THU

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