今年感心した本
(ビジネス書部門)

今年感心したビジネス書部門です。
ジェームス・コリンズ『ビジョナリーカンパニー2』と
争ったのですが、
こっちのほうが断然売れて無さそうなので、
コリンズ本は次点にさせてもらいました。
ごめんよ、ジョン。
あんたアメリカのバーじゃ、よくからかわれそうね。
「トム・コリンズ」は頼みにくいしね。
「ジョン・コリンズ」をオーダーしたら、
“共食い”とか言われるんだろうな。

さて、「こっち」とは何かと言いますと、
テリスとゴルダー著
『意思とビジョン マーケットリーダーの条件』
(東洋経済新聞社)です。
この二人組は、今までのマーケティングで定説とされていた
「市場カテゴリーを一番最初につくった企業が、
マーケットのリーダーになれてお得」という
パイオニア企業を持ち上げる法則を、
精緻なデータ検証でくつがえしました。
膨大なデータ処理で定説をくつがえすのは、
実は先のコリンズ本でも取られていた手法で、
これはパソコンの性能アップによるところが大きいんでしょうね。

では、何が企業を長期的トップの座に留まらせしむかというと、
「マスマーケットに注目するユニークなビジョン」、
そして、
その「ビジョンを実現するための不屈の意思がある」と言います。
「意思」は、
「持続力」「革新力」「資金充当」「資産レバレッジ」の
4つのファクターからなる、と結論づけます。
これ以上、解説すると
ミステリーのネタばらしをしてしまうことになるので、
このへんでやめておきます。
とてもスリリングな論の運びに
酔いしれていただけることを保証しますよ。

こういうアメリカ・ビジネス本ジャンルは、
よく事例が出てくるのですが、
その事例がわからなかったりして、
つまづきやすいものです。

そこで、「マスマーケットに注目するユニークなビジョン」を
日本の市場からひとつご紹介します。
日本発のグローバルブランド「SONY」も、
戦後のすぐの町工場から育っていった企業です。
その創業にあたっての言葉が、
井深大の手でしっかり残されています。
『東京通信興業株式会社設立趣意書』です。
これが、じんじんくるんですよ。
血湧き肉踊る名文です。
「真面目ナル技術者ノ技能ヲ最高度ニ発揮セシムベキ
 自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」
いいでしょ?
これを教えてくれた先輩(女子)は、
“仕事でささぐれだった気分になった時に読むと、
気持ちが洗われるのよ〜”とおっしゃってました。

イメージ映像

よくコーポレート・ブランディングにおいて、
企業のDNA検証ということをしますが、
このソニーの例は、良き遺伝質の好例だと思います。

現在のソニーのビジョンを語った声明文もありますが、
読み比べると、
企業のアイデンティティは変らず、
その良き質を現在や未来に向かって発現させていく意思が、
見事に語られていると思います。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/dream/

みなさんが仕事でへこたれそうになった時、
いつも心の栄養ドリンクとなる文章があったら、
ぜひ教えて下さい。

2002-12-30-MON

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