お正月特別企画

極道の妻(予定)。

ひらひらワンピースの似合う、
「しまちゃん」の彼氏は、
正真正銘のジャパニーズ・ヤクザで、
ホニャララ会系のたらりら一家のサブリーダー。
来年、「塀の中」から出てきたら、
あたらしく一家を任されるんだそうです。
そして、ふたりは入籍をするんだそうです。
しまちゃんと、タケシさんの年の差、
なんと、27才。
見た目のギャップは無限大。
でも、
「じぶんには、この人しかいないから」
結婚するんだそうです。


本人のうしろ姿です。

ごく個人的な話題でナンなのですが、
来年、わたしのたいせつな友だちが結婚します。
ひらひらワンピースの似合う、
愛らしい顔立ちの彼女のお相手は、
なんと「極道」のひと

ただでさえ、障害の多い恋なのに、
いま、“諸事情”があって、
ふたりの間には高い「塀」が立っています。
塀の向こうと、こちらの世界。
高い塀が隔てる愛を、ふたりは、
いったいどんなふうに育んでいるのでしょう?

「極道」という世界に住むひとを、
もちろんよく知らないし、
“理解”することはできませんが、
ここに登場するタケシさんの、
しまちゃんへの愛情には、
とてもあたたかいものを感じるのでした。
聞いてみると、これがどうやら、
ちょっとした純愛物語のようなのです。

ふつうの会社員だった女性が、
極道のひとと出会って、
婚約にいたるまでのいきさつを、
ほがらか〜に話してくれたので、
みなさんにもおすそわけをさせてもらいますね。



極妻(予定)の女性
岩下しま(仮名) 30才
身長:157センチ
特技:色鉛筆でイラストを描くこと。
   ここに登場するイラストは、
   しまちゃんによるもの
   かならずしも本人に似ていないのは、
   まぁ言わずもがなってことで。
風貌:童顔。丸顔にぱっちりおめめ。
   冗談みたいに愛らしい顔立ち。
   ジーンズより、ひらひらワンピースが似合う。
   彼女をひと目見て、
   「極道」という回路に直結することは、
    ほぼ不可能。
オガワの会社員時代の同僚。


お相手の極道氏
北野タケシ(仮名) 57才
体格:大柄
模様:全身みごとな絵柄入り。
   それだけにふだん肌を
   露出しないので、モチ肌。
前科:大小さまざまあり(詳細は自粛)。
ホニャララ会系のたらりら一家の現役サブリーダー。
現在、諸事情により塀の中。
塀の外に出てきたら、
「事務所」を新規で立ち上げる。
2003年出所予定。

●正義感あふれるしまちゃん。


オガワ
今日はあらためて、
しまちゃんとタケシさんがつき合い始めてから、
婚約にいたるまでの話を聞きたいんだけど、
その前にまず、しまちゃんがどんなひとか
話しておきたいんだよね。

しま
どんなひとか?

オガワ
前にたしか、
警察から「感謝のきもち」
表されたことがあったよね。
極道を恋人にもちながら。

しま
あったねぇ。あはは。
駅で販売のバイトをしていたとき、
万引き犯を追いかけているひとを見かけたの。
それで、ただ見てるだけで、
なンにもしないやじ馬をかき分けていって、
じぶんの携帯で警察に通報したんだ。

オガワ
たしか、その数日前に、
しまちゃんも万引き犯をお捕まえになってて、
そのときも、
遠巻きに見てるひとはたくさんいるのに、
だれも手を貸してくれなかったって、
たいそうご立腹だったんだよね。

しま
なんでそんな口調なの?
まぁ、それはさておき…。
そうなのよ!
うら若き乙女が万引き犯追っかけてるんだよ。
手伝ってくれたっていいよねぇ。

オガワ
…うら若くなかったんじゃないの?
それで数日経ったある日、
しまちゃんちの留守番電話に
警察署からメッセージが入ってた、と。

しま
うん。
「○×警察署です。お渡ししたいものが
ありますので、おいでください」ってね。
わたしさぁ、
つき合っている相手が極道なだけに、
警察から電話がきて、
「タケシさんにまた何か!?」って、
一瞬パニックになったんだよね。

オガワ
万引き犯について通報したことは、
すっかり忘れてたわけね。

しま
うん。
で、なんのことかさっぱり見当がつかないまま、
「くれるもんは、
 もらいに行こう」

って思い直して、
その警察署に行ったんだ。

オガワ
行くんだよねぇ、あなたってひとは。
そしたら、コレをもらったと。


コレ。
しまちゃんが警察署でもらった
「協力御礼」のプレート。
ピーポくんTシャツを着る
コドモの自転車は、
Japanese Police」カスタム。


外箱。Presented by 警視庁地域部長(to 極妻)


同封されているお手紙。

しま
万引き犯について通報したことが、
「警察の仕事を理解して、協力した」って
いうことになったらしくて、
そのお礼の品がコレだったんだよね。

オガワ
「お礼をしたいから、取りに来い」っていう
警察の態度はさておいたとしてもさ、
この絵柄のセンスと、
だまって受け取ってきた
しまちゃんにはかなわないね。

●おつき合いのきっかけは?


オガワ
しまちゃんと極道であるタケシさんが
つき合い始めたきっかけを話してもらえる?

しま
タケシさんは、わたしがアルバイトをしていた
ビデオ店のお客さんだったの。
店から数分の距離に彼らの事務所があって。

オガワ
そのときからタケシさんって、
見るからに、そこの事務所のひとだったんでしょ?
それなのに、どうやって話すようになったの?

しま
それがさぁ、
わたしぜんぜん「その筋」のひとだって
気づかなかったのよ。

オガワ
へ?

しま
その事務所って、ふつうの家のつくりでね、
なんかコワそうなひとが
たくさん同居してるなぁとは思ってたんだけど。

オガワ
コワそうなひとは、
たくさんで同居しないでしょうに。

しま
それでね(←ツッコミを無視)、
彼らはビデオの延滞料金を払わなくって、
店長も請求するなって言うの。
そんなのおかしいじゃない。

オガワ
出たね、正義感。
たとえ相手が極道でも。

しま
いやいや、だから知らなかったんだって。
3ヶ月くらい経ってから、店長が
「彼らはヤクザさんなんだよ」って言うの!
はやく言ってよ〜! ってさぁ。

オガワ
…気づけよ。

しま
話すようになったきっかけはねぇ
(↑ツッコミを無視)、
わたしがそうやって、
ふつうのひとと同じ態度で接したのが
うれしかったのか
ある日、タケシさん、意外なことに、
にこにこ笑いながら話しかけてきたんだよ。

オガワ
…あんた、おもしろかったんだよ。

しま
それでね(←ツッコミを無視)、わたし、
タケシさんみたいな冷たそうな顔のひとが
好きなタイプなの。ふふ。
それでいつのまにか仲良くなったんだ〜♪

オガワ
それがきっかけ?
で、しまちゃんみたいなひとの家に、
見るからに「極道」のひとが、
ちょくちょく遊びに来るようになったの?
はぁーー。

しま
気が合うってのは、こういうことなのよ。
なんてね。ははは。

オガワ
ははぁー。
じゃぁ、ずばり、タケシさんの魅力は?

しま
顔が好みでしょー、
それから、うちでうたた寝してて、
勝手に猫の霊におそわれてさ、
目を覚まして「なんで助けてくれないんだ!」
って、スネたりして、意外におもしろいのと…。

オガワ
あはは。
助けてあげなよ。

しま
それも2回もだよ。ふふふ。
あとね、ちゃんとやさしいことと、
ちゃんと
ほうっておいてくれる
ことかなぁ。

オガワ
…ちゃんと?

しま
やたらヤサシイひととか、
やたらいっしょにいたがるひとって、
苦手なんだよね。
ちゃんと、自立してるひとがいいの。

●しまちゃんとタケシさんとの約束


オガワ
ふたりはどんなふうに
「おつき合い」をしてたの?

しま
タケシさんの見た目が
なにしろ「その筋」のひと、丸出しだからね、
外でデートするわけにはいかないのよ。

オガワ
そりゃ、そうかもね。
肌を露出してなくたって
じゅうぶん目立つもんなぁ。
年の差カップルだしね。

しま
だから、たいがいわたしの家に来て、
テレビ見たり、昼寝したりして、
くつろいでたな。

オガワ
猫の霊におそわれながら。
タケシさんは「仕事」の話ってするの?

しま
あぁ、それは、わたしがさせなかった。
ふたりの間にはふたつだけ約束があってね、
ひとつ、
「仕事」の話をしないこと
ひとつ、
お金をおいていかないこと。

オガワ
ほほー、そうなんだ。
まぁ、たしかに、
しまちゃん、ずっと働いてるもんね。
それに、こう見えて、
あなたがしっかりモノなのを
わたしは知ってるから、
タケシさんから「お金もらってるんじゃないか」
なんて、思ったこともなかったわ。

しま
「こう見えて」って、どう見えてるのよ。

オガワ
ムニャムニャ…。
で、明日もまた、ひらひらのスカートをはいて、
バイト先の伝票の整理をしに行くわけね。

しま
そうよ。
働かざる者、食うべからず、よ。

オガワ
基本ね。

●「縁があれば、また会える」


オガワ
今回のタケシさんの「塀の中」生活は、
しまちゃんとつき合い始めてから
2度目なんだよね。

しま
そう。最初のときは、
急にタケシさんの姿が見えなくなったから
「他に女ができたのかな」と思って、
帰りを待とうなんていう発想は
まったくなかったの。

オガワ
それもたしか3年間だよね?

しま
うん。後から聞いたら、
拘留中の警察署から、
わたしに手紙を
出そうとしてくれてたらしいんだよね。
でもうろ覚えの住所が間違ってて、
届かなかったの。

オガワ
あぁ…、スレちがい。
で、3年後に出所してきてからも、
当たり前のように
しまちゃんちに来て、
くつろぐことが多くなって。

しま
うん。たのしかったんだけどね、
1年経たないうちに
またいなくなっちゃった

オガワ
また塀の中に…。

しま
そのときも結婚の約束をしていなかったの。
一度、うちにいるときに、
「結婚しようか」って言われたことが
あったんだけど、
なんとなく笑って流しちゃったんだ。

オガワ
そっか…。
でも、今度は塀の中に入る前に、
警察署から連絡が来たんだよね。

しま
そうそう。
警察からの電話が許されるなんて、
特別待遇なのかもしれないから、
言っていいのか分かんないんだけどね。ははは。
その電話のときは、さすがに
「わたしは、あなたを待つべき?」って、
感情的になって聞いちゃったんだ。

オガワ
ふんふん。
そしたら?

しま
その電話では答えてくれなかったけど、
後から届いた手紙に、
「いい人がいたら
 結婚しなさい。
 縁があれば、また会える」

って、
書いてあってね。
このフレーズで、
タケシさんていう人が、
どれだけじぶんに合っているか分かったんだ。

オガワ
あぁ。
「待ってろ」って言わずに、
「縁があれば」ってところね。
しまちゃんが、
干渉されたり、拘束されたりすることを
好まない性格だってことを
分かってたからこそ、書けたフレーズだと。

しま
うん。わたしはそう思ったの。
だから、待とうと思った。
ま、とはいえ、その間も、
「一般の男性」のチェックを
怠らなかったけど。あはは。

●このたび晴れて(?)、
 内妻になりました。



オガワ
で、また1年くらい音信不通に
なっちゃったんだよね。

しま
そう!
またしても住所を控えてなかったみたいでさ。
学習してよ、ねぇ?
でもまぁ、その間にわたし、
長いことうまくいってなかった両親と
絶縁状態になったもんで、
極道のひとと結婚する決心ができたんだよね。
で、それが今年の1月かな、
オガっち(註:オガワのこと)と
食事してるときに、
「今度、タケシさんが戻ってきたら、
 わたしから結婚しようって
 言うつもりなんだ」
って言ったんだよね。

オガワ
そうだった、そうだった!
わたしもさ、極道とつき合うなんて、
友だちとして止めるべきなのか? って
思ったこともあったんだけども、
この日のしまちゃんの顔見たら、
シヤワセになるんなら、いいんじゃん、
って思ったの、よく覚えてる。

しま
そんで、まさにその日、家に帰ったら!

オガワ
来てたんだよね、例のブツが!

しま
そう。
「内妻になりませんか通知」
1年ぶりに連絡が来たと思ったら、
差出人は刑務所なの。

オガワ
本人からじゃなかったのね。

しま
うん。
そういう決まりみたいで、
体裁の整ったちゃんとした
「文書」
だったの。
で、内容が、
「北野くんは、とても真面目に
 おつとめしてます。
 あなたは、内妻になる気持ちがありますか?」
というような文面だった。
お役所(?)ことばだから分かりづらくて、
さっき食事して別れたばっかりの
オガっちに電話して、
文面読み上げたんだよね。

オガワ
うん。「……であるからして」みたいな。

しま
そしたら、オガっち、
なんか感動してくれちゃってたよね。

オガワ
…言うな。
だってさ、
「じぶんから結婚しようって言う」って
聞いたその日の出来事だったじゃない。
それも、その話をしてたときは、
タケシさんと
連絡取れてなかったわけでしょ。

しま
うん。あの偶然はすごかったね。
思いが届いた〜って、
思ったもん。

オガワ
ほんとだよねぇ…。
で、この通知に返事を出して、
晴れて家族として
連絡を取れるようになったんだったね。

しま
そう!
いち家族として、
面会に行けるようになったし、
手紙のやりとりもできるようになったの。

オガワ
それでいまは、月に1回くらいの割合で
刑務所に面会に行ってるんだよね。

しま
うん。
ガラス越しの面会だから、
上半身しか見えないのに、
ちゃんと全身おしゃれして行ってるよ。
あ、面会といえばさぁ、
前に、タケシさんが拘留されている警察署に
行ったことがあったのね。

オガワ
うん。塀の中に入る前の段階でね。

しま
そう。
そしたらね、そこの刑事さんたち、
まるで転校生を見に来る
隣のクラスの生徒みたいに、
代わる代わる順番に、
わたしのこと見に来たんだよ。

オガワ
って、そのときも、あなたってひとは、
いつものひらひらワンピースで行ったんでしょ?

しま
そうよー。
いけない?

オガワ
いけなくはないよ。いいよ。かわいいよ。
でもさ、刑事さんたちにしたら
意外だったんだろうね。
極道、それもトップクラスと、
ひらひらワンピース。

しま
そうかもね〜。
でもさ、あんまりしつこいから
わたし、面倒くさくなってさ。

オガワ
出たな、本音が。

しま
泣きマネして、
その場をやりすごすことにしたの。
「しくしく…。こういうところに、
 あんまり来ないほうがいいんですかぁ…」
 って。
ふふふ。
そしたらね、
テレビで見るような刑事さんたちが
『そ、そ、そ、そんなことないよ』って、
あわてちゃってた。あはは。
ちょっと悪いことしたかな。

オガワ
…屈託がないよね、あんたって人は。

●いまは文通にて、
 愛をば、育んでおります。



オガワ
面会以外で連絡をとる方法はある?

しま
文通〜!
手紙を交換するようになって分かったんだけど、
タケシさん、わたしと連絡がつかない間、
なんとか、わたしの正しい住所を手に入れようと
努力してくれてたみたいなんだよね。

オガワ
ほ〜、うれしいか。えぇ?

しま
ふふふ。そりゃ、うれしいよぉ…。
いまはね、週に2〜4通くらいは書いてるよ。
ほとんど日記みたいにね、
その日にあったことを書いてるの。
ふつうのカップルが電話で話すような、
他愛のないことも多いかな。
でね、切手や便せんにも凝るようにしてるんだ。

オガワ
へぇ。
それについてのリアクションあるの?

しま
あるある!
タケシさんだけじゃなくて、
塀の中の人って、そういうの、
すごくたのしみにしてるんだって。
だからわたし、
ちょっとした切手マニアみたいに、
記念切手を買い込んでるんだよ。

オガワ
交換した手紙は何通くらい?

しま
1年経たないけども、
たぶん100通は超えたよ。

オガワ
すごっ。

しま
あ、わたしね、この間の面会で
タケシさんのこと、
ヘコましちゃった

オガワ
なに言ったの?

しま
タケシさんが出てきたら、
新しい事務所をつくるから
引っ越さなくちゃならないでしょ。

オガワ
うん。

しま
それでね、うっかり
「引っ越しが一段落したら、
 わたしも仕事探すね
って言っちゃったんだ。

オガワ
げ。
聞かないねぇ、
“ねえさん”がパートしてるなんてさ。

しま
しかも、
交通費が出るとこがいいな
とか言っちゃったんだよねぇ。

オガワ
わははは! ポイントは交通費ね。

しま
そしたら、タケシさん、
すごくかなしそうな顔してさ、
「もう、働かなくていいよ…」って。
あははは。

オガワ
アンタが笑うな。

しま
でね、「家にいて、何しましょう?」
って聞いちゃった。あっはっはっは。

オガワ
わははは。
って、アンタは笑うな。

しま
仕事しないなら、ワタクシ、
習い事でも始めるわ。胡弓をば。

オガワ
またそうやって、昨日今日、
耳にした単語を言ってるだけじゃん。
ま、もう少しの辛抱だね。

しま
うん! それまで事務の仕事たのしむよ!


(おしまい)
イラスト:しま

留守番番長オガワへの激励や感想などは、
メールの表題に「留守番番長オガワさま」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2002-12-29-SUN


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