7月30日
街の洋裁店

洋服を作っているYさんは
大学を卒業して東京で洋服を作り始めました。
でも街には大量な種類の洋服が並んでいるし、
いろんな店にいろんな好みをもったお客さんがいる。
はたして自分の洋服を買いたいと思う人が
どこにいるのだろうか、その焦点が絞れないまま、
東京時代は結構苦しかったと話してくれました。

その後、故郷の松本へ帰ってきて、
知人のお店でファッションショーを企画しました。
その時、Yさんは松本に暮らす
共通の興味を持った同世代のひとたちが、
周りに多くいることに気がつきました。
それで気持ちを強くして、
市内に自分の仕事場を持つことに決めました。
そこは駐車場の一角にある白い土壁の土蔵で、
一階は駐車場の管理事務所があり、その2階でした。
店を開くと、嬉しいことに
その同じ土地に暮らす仲間たちも訪ねて来てくれ、
そのうちの何人からは仕立ての依頼などもあって、
洋服を作ることも
少しずつできるようになっていきました。

洋服は、具体的に一人一人と話しをしながら、
その人にあったものを作ります。
そういう仕事の仕方で、
仕事が次第にかたちをなすようになっていったのです。
彼女たちは自分が作りたい服のことも良く理解してくれ、
また素敵に着こなしてもくれました。
世の中でも大量生産、大量消費が
少しうまくいかなくなっていました。
日本で作っても売れていかないから、
海外生産で安く売る、ということに変化し、
その一方で、
「少量でも本当に作りたいものを作ろう」とする人たちに
共感を持つ人も増えていました。

地方での暮らしは、目に見えるもの、
耳に聞こえてくるものが都会に比べ少なくなることで、
却って助かる、と感じることも多くあります。
競り合うことも少ないからその分、
自分のペースも保ちやすいし、
地域に暮らす、顔の見える人たちと
おしゃべりしながら仕事をしていくということも、
心を落ち着かせてくれます。

10センチもそんな風になったらと思います。


2010-10-13-WED

つぎへ
このコンテンツのトップへ
つぎへ