7月20日
あと2〜3軒

アルネの取材のため大橋歩さんが松本にいらした時、
いろいろなお店を訪ね、お蕎麦を食べ、
その後工房のテラスに座ってお話ししました。
大橋さんは、
「松本はとてもいい街で、
 また来たいと思っているけれど、
 他所から来た人が回るお店があと2〜3件あると、
 もっと楽しいかもね」
とおっしゃっていました。
そのことがとても印象に残っていて、
街の魅力を考える上でとても正確な指摘だろうな、
と思いました。

僕たちが旅する時は、
もちろん名所旧跡を訪ねることもありますが、
なによりその町の魅力的なお店を訪ねるのが楽しみです。
多少辺鄙なところにあったとしても、
自分が良さそうと思った店だったら、
それを乗り越えて出かけるでしょう。
団体ではなく、個人旅行を楽しむ方の多くの人が、
今はそうした旅の仕方をしているように思います。
だから一軒の素敵なお店の存在は、
町の魅力にとって、
益々大きな存在になっているように思うのです。

その話があった翌年、
松本にも新しいお店が増えてきました。
カフェやレストラン、ギャラリーなど。
僕が「10センチ」を開こうと思ったのは、
そうした新しい動きに加わり、
旅行者が後1〜2軒あれば、
という気持ちに応えたいと思ったからです。
もちろん毎日開けるわけでもないし、
面白い店と感じてもらえるかも心配ですが、
少なくとも古いタバコ屋の建物は素敵ですから、
それを楽しんでもらえれば、と思うのです。

僕はクラフトフェアや工芸の五月の企画運営に
ずっと参加してきましたが、
実を言えばそうしたイベントの日だけ
「工芸の町」というのでないほうが
いいと思っていました。
それより普段いつ来ても面白く、
楽しい町であったらいいと思います。
イベントは起爆剤。
その後イベントに頼らなくても
「工芸」は町にすっかり根付き、
「もの好き」の旅人がいつ訪れても
楽しめる町であったら、と思うのです。


▲市街地マップ──「工芸の五月」誌から

2010-10-11-MON

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